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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.789「会えば必ずあいさつをする、それがイ・ボミ選手です」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


今年のマスターズGCレディースはイ・ボミ選手のラストマッチとなったことで注目されました。岡本さんはどのようにご覧になっていましたでしょうか。(匿名希望・HC5) 


マスターズGCレディースは、今年で20回目の開催となりました。

2003年にスタートしたこの大会は2013年には4日間競技になり、賞金総額も徐々に増額されメジャー競技に勝るとも劣らないトーナメントへ成長してきました。

このトーナメントのホストプロとしてプレーしてきたのが韓国出身のイ・ボミ選手です。

1988年に韓国で生まれたボミさんは、12歳でゴルフを始め建国大在学中の2007年にKLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)に入会。

韓国ツアーで賞金女王となり2011年に日本のツアーに初参戦しました。

翌年には日本ツアー初優勝を飾り年間3勝を挙げ賞金ランク3位となり、日本のファンが増えるキッカケになる年になりました。

日本ツアーを主戦場にした彼女は順調に勝ち星を増やし続け、2015年は年間7勝、史上初の賞金2億円突破で賞金女王を獲得。

翌年も5勝を挙げ平均ストローク1位など各タイトルを独占し、2年連続で賞金女王となり名実ともに頂点に上り詰めました。


JLPGAツアーは2000年代初めまでバブル崩壊後の低迷から抜け出せず、試合数も年々減少していました。

その時期に登場したのが宮里藍選手でした。

東北高校3年だった宮里さんが2003年にアマチュア優勝しプロ宣言。

翌年、ツアー開幕戦でプロ初Vを飾るとシーズン5勝を挙げて、日本の女子プロツアーブームの火付け役になりましたが、2006年から米ツアーでプレーすることになりました。

その後の日本女子ツアーは、トップが毎年代わるなか、現れたのがイ・ボミ選手でした。

強さはもちろん笑顔もあって、日本女子ツアーの象徴的存在になったともいえます。

イ・ボミ選手が活躍するのと呼応するかのようにツアーも増えていき、今年度の賞金総額はバブル期を上回る44億9000万円に達しました。

この女子プロゴルフツアーの人気は、今現在、毎週のように次々現れる若い選手たちの活躍に支えられているのは確かですが、彼女たちの多くが、強くて可愛いイ・ボミ選手のプレーに憧れていたことも事実でしょう。

女子プロゴルフ人気の功労者といっても過言ではないと思います。

ボミさんの最大の魅力は、プレーヤーとしての優秀さのみならず、ファンやスポンサーを大切に思うという、プロとして当たり前ではあるかもしれませんが、その大切な部分を常に考えていることにある気がします。

ちなみにですが、思えばプロゴルファーの引退セレモニーって、わたしの記憶に残っているのは、大迫たつ子さんが1994年に引退を表明したときのことかしら。

あれは確か、熊本のコースだったと思うのですが、試合が終わった後だったかな。

大迫さんに樋口久子さん、涂阿玉さんとわたしの4人で3ホールをエキシビションでプレーして、最後に大迫さんに花束贈呈したのを覚えています。

ちなみに私のキャディを務めてくれたのが水前寺清子さんで、実はプレーが終わるまでキャディに変装し続けて、プレーが終わった直後にタネ明かしをするというサプライズをしたのですが、みんな大笑いして楽しんでくれました(笑)。

相撲や野球選手の引退式は見慣れていますがプロゴルファーは珍しいと思います。

現役時代どんなに偉大で広く愛されたキャラクターだったとしても、最後のセレモニーを仲間やファンがみんなして送り出してくれることはなかなかありませんからね。

今回、マスターズGCでボミさんのホールアウトの光景を眺めていて、そんなことを思い出しちゃいました。

まして、彼女の場合は外国籍の選手。

誰もが引退を惜しんでくれるようなプレーヤーが、いま、この人気絶頂にも見えるツアーの中にどれだけいるのだろうと、な~んとなく気になってしまいます。

「見た目以上に、実力があったからこそイ・ボミ選手は支持されたと思います」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2023年11月14日号より

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