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【ゴルフ野性塾】Vol.1796「一日300球の日々が続く」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

野性塾大濠公園
の18人衆、

眼の持つ力が強まって来た。
上瞼の大きさが変って来たと思う。
眼線、下を向けば上瞼の領域は広がる。
眼線、上を向けば上瞼の領域、狭まる。
私はジュニア塾生に教えた。
人様の話を聞く時、話してくれる人の眼を見て聞け。
眼線を外すな。
だが眼を見て聞くのが苦手ならばその人の眉間を見て聞け。
眉間とは右眼と左眼の間であり、第三の眼がそこに在ると思え。
人間はお化けじゃない。
三つ目の人間なんていやしないからな。
だが、右眼と左眼の間の眉間はゴルフの眼だ。
その第三の目で球を眺めれば打ち急ぎも焦り打ちも不安打ちもないのだ。

眉間にある第三の目で球を打て。


コースラウンド時、やってはいけないのは不安打ちだ。
不安抱えて打てばスウィングの型は乱れるし、ヘッド軌道も乱れる。
眉間の目で打て。
不安打ちをせぬ方法は眉間打ち一点のみ。
私から教わった事、忘れてもいいが、眉間の目で打てとの教えだけは忘れるな、と教えた。
眉間の目で人の世、眺めれば下を向く眼線は少なくなる。
それで姿勢が変る。
背筋と首筋が伸びる。
物事には手順の間違いが存在すると思う。
手順前後は大きな誤ちを生む。
その事、人の世の歴史が教えている。

18人衆に眉間の目の話したのは今年の8月上旬だったと記憶するが、上瞼の広さ小さくなって来た様じゃある。
「目の力が変って来たな。何か意識している事あるのか?」
私を待たせる連中ではなかった。
約束の時間より10分早く集うて私を待つ18人だった。
そして、一番最初に年長の者が私のカフェラッテを注文し、受け取り、私のテーブルの前に置き、それからそれぞれの者が個別の受取りをしてテーブルに着き、私の眼を見て週に一度の30分の私の話が始まる。
週に一度が難しい時は二週に一度。
これ迄、三週連続の休みはなかった。

「眉間の目です。私達には衝撃的な教えでした。私達が知り得る事の出来ぬプロの世界を教えて貰いましたが恐怖を覚えました。練習場、眉間の目で球を打ちましたが、球の頭を打つばかりのミスの連続でした。そして一つの事が分りました。手打ちだと球の頭打ち、体の回転で打つと球は真っ直ぐに飛んだのです。自分のスウィングの悪さを知るに最適の教えでした。その時はスウィングが壊されると思いましたが、今は感謝しています。坂田プロの言葉は強い。ただただ、その事を思い知らされるばかりです」

「人の世で楽しく生きるのは難しい事だ。恐怖を持つ人は多い。でもな、下は向くな。上瞼が眼を隠す様だと相手に異和を覚えさせる。修行、鍛錬、誠実な生き様とは上瞼に表れると思うぞ。整形は駄目だ。上瞼を切って目を大きく見せる整形に目の力を強くする力はない。異和を感じさせるだけだ。己の目の力は己の生き様で作り行くもの。相手の眉間を見て人の世、生き行けば世間の広さ知る事出来ると思うぞ。私は眉間の目で球を打って来た。左眼で見れば首筋と左脇を痛める。右眼で見れば右腰、右脇を痛める。プロゴルファーでツアー生活長寿の者は眉間の目で球を打っている。眉間には縦皺も横皺も生れるが、眉間の目には縦も横もない。最後は無在るだけと思う。無心、無欲、不安無しの無だ」
「精神論、唯心論ですか?」
「違う。実在論と思って貰いたい。信じるは力なりだ。私は一時間で300球打つ。75歳の男の300球だ。10分で50球、20分で100球。一時間20分で400球、一時間半で450球打つ。この暑さ、夜の8時過ぎても気温は30度。飛距離への欲だけで打ったんじゃ体が保たない。75歳は爺様だからな。しかし、リズムで打ちゃ450球は打てる」

本稿を読んでくれる方は多い。
私は西新ゴルフセンター1階打席4番か5番で球打つが、私の練習を眺めに来る人が増えて来た。
そして、彼等は一様に同じ所感を持っていると聞く。

「速い。あの速さで打てるんだったら1時間20分で400球打てるのも当然だ。だが、体力がよく保つものだ。一日二日の練習じゃない。毎日の練習だ。根気も要る。執着も要るし、目標も要ると思うが、どこから来る執着なんだろう」

目礼交わしてスレ違う人が増えた。
一言の挨拶して来る人も増えた。
だが、話し掛けて来る人はいない。
多分、私に拒否の態度あるのではと思うが自分では分らない事だ。
これ迄のジュニア塾生、進化論塾生、大手前大学ゴルフ部員への指導の日々、教えながら学ぶ事は多かったし、気付く事も多かった。
巡り行くは輪廻。
輪廻の中で人は己を知ると思う。

昨日8月30日。
九州オートサービス社長の河辺公良とコースラウンドした。
コースはセブンミリオンCC。
河辺は43歳。
我が家の長男雅樹より3歳年下のゴルフ仲間である。
雅樹の身長は185センチ。河辺は180センチあるか。
私は1センチ縮んで176センチ。
河辺には60ヤード置いて行かれ、雅樹には80ヤード置いて行かれた。
愉快じゃない。

「お前、助平か?」
「ハイ。キャバクラ専門の助平です」
「付き合ってくれる女性、何人いる?」
「5人います」
「美人か?」
「美人です」

言葉少ない男なれど、質問への答えは適確だった。
下半身に節操なき男は地頭良き男と私の父は教えた。
地頭とは生れながらの頭の良し悪しを言うが、私の地頭、然して良いとは思えない。
雅樹は助平だ。
ただ、女性の好みは異なる。
雅樹はブス好みで私は美人好みである。
河辺もブス好みと見た。

「お前達がいて俺がいて世の中、上手く回っている。ま、女房にバレん様に頑張れや。後期高齢者になったらその幸せ遠のくが、それ迄は助平に生きて行け」
「親父、枯れたか?」
「枯れた。今はお前達の幸せ、祈るばかりだ」

雅樹は67で回っていた。
河辺と私は同じスコア。
70台後半でも80台前半でも回れん様になって来た。
ドライバー飛距離200ヤードじゃどうにもなりません。
これから先、雅樹と河辺とラウンドする機会増すと思う。
昨日のラウンド後、雅樹は私を赤坂へ送った後、別府へ向った。仕事である。
河辺も会社に戻った。

現在時8月31日、午前5時3分。
書き上げました。
これよりファックス送稿。
窓の外、黒い雲漂う明けの空。
救急車のサイレンが聞える。
体調良好です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月19日号より

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