【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.768「トップの選手ほど、誠実に地味な継続をしているはずです」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
「五十の手習い」でゴルフを始め、1年で100を切るという目標は何とか達成できました。岡本さんはゴルフや人生において、どのように目標を掲げる姿勢で取り組んでこられたのでしょうか。(匿名希望・51歳・ベストスコア97)
1年弱で100切りを達成できたとすればそれはとても立派です。
熱心で継続的な練習期間があり、たくさんのボールを打ったことだろうと思います。
「誰でもできる100切り必勝法」という記事もよく目にしますが、練習もせずに手軽に腕を上げる特効薬は当然ありません。
手間と時間をかける我慢強さこそが、上達には欠かせない要素といって間違いなく、そこで重要になってくるのが目標を持つということです。
誰だって上手くなりたく、多少の犠牲を払う覚悟もあるが、ただやみくもに練習をがんばれといわれ、
打ち込みやランニングを毎日やれと命じられても実行するのは難しい。
終わりのない苦行を無限に続けるのは無理でしょう。
でも、一定の区切りがあるとすればどうでしょうか。
限りなく続くように見える山道でも、五合目や六合目と書いた石が立っていたら、がんばろうという気持ちになる。
目標を持つことには、それと同じ効果があると思います。
最初の目標は、はるか遠くを目指すものではなく、実現可能で身近なところに設定したほうがいいでしょうね。
動きだしはゆっくりと徐々に始めて、少しずつでも目標を達成することを持続していくことが重要です。
ランニングを始めるなら、フルマラソンの距離を設定するのではなく、まずはジョギング程度の速さで気軽にこなせる2キロコースを設定する。
そこから3キロ、5キロと長くしたり、走るスピードも上げていく。
大切なのは、とにかく持続すること。
最初は1週間なら1週間、サボらずに続ける。
1週間続いたら2週目、3週目もうまくいく。
そうすることで距離は同じでも走る内容が変わってくるのが自分で分かるはずです。
1日100球のボールを打つと決めたら、何が何でも3カ月打ち続ける。
すると、自分でも驚くほどショットの手応えや感触、内容はガラリと変わってきます。
練習効果を高めようと、初めから1日500球打とうなどとはしないほうがいいと思います。
負荷の高い練習量を毎日こなすことで疲労による学習効果の低下を招くより、比較的軽い負荷を長い期
間、持続的にかけたほうが効率がいいのでは。
何よりバテてしまっては続けられません。
この段階でお勧めしたいのは、計画を立て目標設定をして練習を実行した初日、練習を終えたときの状態や結果、打った時の感触や自分が感じたことなどをできるだけ詳しくメモしておくことです。
記録に残すことで、1週間後、1カ月後、3カ月たった時の感触や感想、現実の結果と比較して変化を確かめることができます。
そして、その内容をもとに自問自答し次の目標設定の材料にすることができます。
目標はゴールではないということ。
その都度設定する目標は、今の自分が目指していくターゲットではありますが、最終到達点ではないのです。
そう考えると、自分を成長させていくための進路行程表みたいなものかもしれませんね。
目標を立てて練習することに慣れてくると、ノルマ達成までかかる時間が長くなることでイライラしたり焦ったり、真面目に練習しているのに、どうして効果が出ないのかと不安になったり、ときには自暴自棄になるケースも出てきます。
自分一人で練習計画を立てて取り組んでいる場合は、そういうジレンマに陥ることもあるかもしれません。
その場合、目標の立て方に問題があることも考えられるため、普段の練習を見ていてくれるコーチや間の意見を参考にするのもいいでしょうね。
その意味でも目標をどう設定するかは非常に重要です。
また、成長のスピードには個人差があるので自分の足元を見失わず自分の進む道に自信を持つことです。
練習の成果は一足飛びには身に付きません。
地道にコツコツしかありません。
ちなみに、現役時代に小さなカメを4匹、金、銀、銅、鉄ちゃんと呼んで飼っていました。
私は兎年ですが、ゴルフはやっぱり亀ですね(笑)。
「今日一日を大切に努力できない人は、明日を語る資格はないと思っています」(photo by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年6月13日号より
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