Myゴルフダイジェスト

【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.765「良いスウィングが結果的に強い選手を作っていく」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


以前のタイガー・ウッズのような真似したくなるスウィングの選手は、今の若い選手のなかにはいない気がします。いまはマキロイが真似したい最後の選手でしょうか。なぜこのようなことになっているのでしょう?(匿名希望・47歳・HC1) 


それぞれの時代を代表してゴルフ界を彩ってきたプロのスウィングは、誰もがお手本にして真似したくなるスウィングだったと言っていいのかもしれません。

一時代を築いたプレーヤーはカリスマであり、お手本にされました。

強いものに憧れ、そのスウィングを真似る。

とはいえ、強い選手のなかにも「個性的なスウィング」で知られるプロも少なくありませんでした。

複雑で微妙な動きからなるゴルフスウィングは、ある種、感覚的なものであるため仕方がない部分はあります。

しかし、スポーツの現場に科学の目が向けられ、トレーニングやスキル開発法に科学的セオリーが導入されるようになりゴルファーもアスリートだと認識されるようになりました。

以来、そこまで目立った変則スウィングは姿を消していったように思います。

そうした科学的な合理的スウィング理論が当たり前になった現在、「真似したくなるようなスウィングをする若い選手があまり見当たらない」というのは少しピンとこないかも。


それは、もしかするといまの若い選手たちの多くが筋骨隆々で真似したくてもしようがないように思えるならある意味、うなずけますよね。

飛距離を求めるあまり、上半身、とくに胸筋を大きくするとスウィングの邪魔になってしまうし、体全体の柔軟性のバランスやリズムを欠き、繊細な動きがやりづらくなる恐れがありますからね。

証拠はないですが、わたしは筋トレのやりすぎはイップスになりやすいのではないかと思っています。

理想のスウィングとはどのようなものなのか。

ゴルフスウィングは常に進化してきたと考えていますが、その進化とはボールの回転をいかにうまくコントロールするかを求めるためのものだったのではないかと、わたしは思っています。

ボールを安定して打つために必要な体の動きを研究して模索し、クラブやボールなど道具が進歩するのに伴って、インパクトでのヘッドやフェースの向きを細かく考察できるようになり、スウィングとその効率を考えるようになった。

そのなかでボールの回転を自在に操るためスウィングは進化してきたのだと思うのです。

わたしが一番言いたいのは、いいスウィングが強いプレーヤーを生むということです。

初めにスウィングありきなのです。

いまでも確かに若い選手のなかには独特なスウィングに見えるプレーヤーもいます。

たとえばインパクトからフォローにかけて、前傾した上体が沈み込み顔は完全に横を向いているような打ち方。

数年前までのリディア・コー選手やポーラ・クリーマー選手などもこのようなスウィングをしていました。

幼くしてゴルフを始め大人と同じように飛ばそうと柔らかい体を最大限に使ってクラブを振るフォームがその源泉でしょう。

ただ普通は体の成長に伴ってこのカタチは改善されていくものです。

スウィングの成長、ゴルフの考え方の成熟とスウィングの進化などゴルファーには自分にとって何が理想のスウィングなのかを試行錯誤する過程があって当然だとわたしは思います。

いいスウィングを真似るのは、とてもいいことです。

ただし、お手本とするスウィングがあなたのゴルフや体格などに適しているかどうか、きちんとチェックしてみることもお忘れなきよう。

よくスポーツの世界では「心・技・体」といわれます。

ですが、わたしの場合、ゴルフを学ぶうえでの原則は「技・心・体」が、頭のなかにある順番です。

まずは、誰が見てもシンプルでリズム&テンポの整った良いスウィングを身に付けること。

そして練習のなかで自然に育みメンタルを鍛える。

最後に肉体の強化という順序です。

「いまの若い選手には、スウィングを真似されるほど憧れる選手になれるようがんばってほしいですね!」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日号より

アヤコさんの著書『本番に強くなる!アヤコ流』好評発売中!