【名手の名言】杉原輝雄「一度気を抜いたゴルフをすると、それが癖となっていざというときに悪さをする」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は約50年にわたって現役を貫いた日本プロゴルフ界のドン、杉原輝雄の言葉を2つご紹介!
一度気を抜いたゴルフをすると
それが癖となって
いざというときに悪さをしてしまう
杉原輝雄
トーナメントで下位にいると、順位がちょっと上がっても賞金はそれほど変わらない。すると、「まあいいや」と気の抜けたショットをしがちになる。
しかし、杉原はそれだけは絶対にしなかった。一度でもいい加減なショットをしてしまうと、緩んだ体が“楽”なことを覚えてしまって、癖になり、次の試合でもその癖が出てしまうというのだ。
杉原がこんな考えに至ったのは、時の強豪グラハム・マーシュのラウンドを見たのがきっかけだった。
下位で一緒にラウンドしていたが、最終ホールで最後のパットをそれこそ真剣に読んで入れた。杉原は「そんなもん、入れたって順位変わらんがな、早うせい……」と思っていた。
そして次の週。マーシュは優勝してしまうのだ。杉原はその最後のパットが“効いた”としか思えなかったという。どんな場面でも気を抜かないゴルフの大切さを、まざまざと思い知らされたのだった。
一生懸命にならな損。
あきらめたらあかん
杉原輝雄
生涯現役を貫いた杉原輝雄。永久シードを獲得していたため、「中日クラウンズ」は、第1回大会から2010年の第51回大会まで、51年連続出場を達成した。
この50年の間に大きな病を2度も経験し、1998年には前立腺ガンを患っているにも関わらず、この偉業である。
表題の言葉は、この偉業の感想を問われてのものだ。
「たとえボールが林に入っても、ゴルフはそこからや。あきらめたら何もならん。ガンかてそうや。なったものはしょうがない。そこから一生懸命ならな、自分が損するだけやないか」
と淡々と語るのだ。
この“損”という表現が何とも杉原らしい。元々、自分はマイナスからの出発だった。ドライバーの飛距離は若いときでも220ヤードしかなかった。このマイナスをプラスに変えるための努力は自分のためのこと。決して他人のためではない。だから、努力しなければ自分に損という哲学なのだ。
「どんなことを言っても試合がなければ連続出場もありません。大事なことは試合があるということですよ」
スポンサーへの感謝も忘れない。この大局観。体は小柄なのに、心はとてつもなくでかい。
■杉原 輝雄(1937~2011)
すぎはら・てるお。大阪府生まれ。茨木CCに就職し、夜間高校に通いながら研修生としてゴルフを覚える。小柄で飛距離が伸びず苦労したが、両腕の五角形を保ったまま手首を使わない独特の打法で、正確無比な技術を手に入れていく。レギュラーツアー54勝、海外(香港オープン)1勝、シニア6勝、ゴールドシニア2勝を挙げている。永久シードも獲得。1997年に前立腺がんと診断されたが、現役にこだわり手術はせず、ツアーには積極的に出場。2010年4月29日、中日クラウンズに出場し、同一大会連続出場の世界新記録を樹立。
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