Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • ギア
  • ストロングロフト時代のウェッジ選び #1 石川遼は5本態勢。アマチュアもウェッジを増やすべき?

ストロングロフト時代のウェッジ選び #1 石川遼は5本態勢。アマチュアもウェッジを増やすべき?

アイアンのストロングロフト化がさらに進み、プロモデルでさえロフトが立ちつつある昨今、ウェッジセッティングをどう組み立てていけば良いのか。いまどきのアイアン事情をベースに考えた!

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Tadashi Anezaki、Tomoya Nomura、Blue Sky Photos

今シーズン後半戦、石川遼はアイアンセットのPWを抜いて43度の単品ウェッジを投入

解説/竹本直哉

1976年生まれ。ツアー参戦経験を生かし、東京・東大井でスウィング、クラブ両面をケアする「ゴルフクラフト ユーワールド」を主宰

プロのウェッジは4本以上が主流に?

2022年シーズンの日本男子ツアー後半戦で、石川遼が9番アイアンの代わりに「43度」のウェッジをキャディバッグに入れていたことが話題となった。

石川のアイアンは8番までで、その下に43、48、52、56、60度の5本のウェッジというクラブセッティング。米ツアーでも、PWをアイアンではなく単品ウェッジの46度や48度としている選手は増えており、プロのウェッジセッティングに「4~5本」という新時代が訪れている雰囲気がある。

石川遼はアイアンセットのPWを抜いて43度の単品ウェッジを投入

2022シーズン後半戦、石川遼のアイアンセットは5~8番の4本のみで、9番アイアンの代わりに43度、PWの代わりに48度の単品ウェッジを入れ、さらに52、56、60度まで入れるという“ウェッジ五刀流”セッティングでツアーを戦った

アマチュアにおいても、アイアンのストロングロフト化が顕著になった10~15年前から「52度と58度の2本ではPWの下をカバーしきれない」という声が出てきており、いまではPWの下にウェッジ3本というセッティングを組むゴルファーも珍しくない。

しかし、それらはあくまでアイアンセットのPWの下を埋める手段であって、PWや9番アイアンの代わりに単品ウェッジを足すというのはここ最近になって見られるようになった新しい動きだ。

こういった風潮について、かつてはツアープロとして活躍し、いまは東京・品川区で「ゴルフクラフト ユーワールド」という工房兼レッスンスタジオを主宰している竹本直哉プロに聞いてみた。

「アイアンがストロングロフト化しているだけでなく、“やさしく”なっていることが原因でしょう。慣性モーメントが大きくなってミスヒットに強いという機能が、アベレージゴルファー向けの飛び系アイアンだけでなく、中上級者モデルにも付与されるようになってきている。その結果、球が上がりやすく、曲がりにくくなった反面、コントロール性が低下し、球を曲げたり抑えたりといったコントロールがしにくくなってきているんです。このような“やさしさ”は、ミドルアイアン以上の番手ではプロにとっても有益な場合は多いので、そういった高機能な中・上級者向けアイアンを使っているプロのなかに、ショートアイアンをウェッジで代用する選手が出てきたのだと思います」(竹本)

つまり9番アイアンやPWを単品ウェッジにするのは、その番手で1ヤード単位の打ち分けや弾道の高低やフック・スライスの操作、スピンコントロールなど「アプローチ的」な操作を行うため。逆に言えば、そういったコントロールをしないフルショット専用の「アイアン的」な番手に関しては、単品ウェッジを選ぶメリットはほとんどないと竹本プロは言う。

「フルショット主体で使うのであれば、単品ウェッジはおすすめしません。むしろアイアンセットのPWやAWのほうがやさしい。アマチュアゴルファーの多くは、PWやその下のAW相当のクラブもほぼフルショットにしか使わないという人は多いはず。それならば、飛び系アイアンを使っていてPWの下の本数を増やすとしても、単品ウェッジではなくアイアンセットのウェッジを増やすほうが合理的だと思います」

「アイアンセット」のウェッジが増加中

●「A」のロフトが多様化

PWが43~46度でもその下に50度前後の「A」をラインナップしてカバーするモデルが増えている。

●「P」の下に「48」があるセットも

タイトリスト「T200」は、従来のPWを「P43」とし、その下に「48」というロフト表記の番手を追加している。

●AとSの間に48度の「AS」があるモデルも

PWが37度と超ストロングロフトだが、その下にAW(42度)、AS(48度)、SW(55度)がラインナップされている

●ピンは「W」の下が「U」

ピン「i230」は45度の「W」の下に50度の「U」を用意し、ここまでをアイアンセットというコンセプトで設計している

竹本プロの言葉を裏付けるように、最近のアイアンにはPWの下の番手がセットとして充実しているモデルが増えている。

たとえばピンは前モデルの「i210」も最新の「i230」も、PW相当のロフト45度の「W」の下に50度の「U」という番手がラインナップされているし、ダンロップ「スリクソンZX MkⅡ」もPWの下に50度前後の「A」の設定がある。

これらを見ても、従来のPWまでがアイアンセットという考え方はすでに過去のものとなりつつあり、最低でもPWの次の番手までをアイアンセットとして考えるのが妥当と言えるだろう。そしてそれを踏まえ、ウェッジを増やすにしても単品なのかセットなのか、どんなクラブが最適なのかをきちんと考えるべきだということだ。

単品ウェッジのメリット
「飛びすぎない」からプロから好まれる
「プロにとっての『ウェッジ』は、スピンコントロールが重要。短い距離でスピンを入れるにはヘッド速度を上げつつ『飛ばさない』ワザが必要。単品ウェッジなら芯を微妙に外すことでこれができますが、アイアンは飛んでしまうんです」(竹本)

単品とセットを比べてみた
「やさしいのはAW、単品ウェッジはスピンが増えやすい」

同じロフト48度の単品ウェッジとアイアンセットの「A」を比較してみると、後者のほうがヘッドが大きく低重心。また単品の「48」は重心が高いぶんスピンが増えやすいがマッスルバック構造で芯は狭いのに対して、セットの「A」はキャビティ構造で周辺に重量配分されており慣性モーメントが大きくミスヒットに強い。操作性やスピン性能は前者が高いが、決まった距離を安定して打つには後者のほうが圧倒的にやさしい

では、我々アマチュアは
どんなウェッジセッティングが理想?

月刊ゴルフダイジェスト2023年2月号より