【キミこそ王子だ】Vol.256 稲見萌寧と同じ“稼げるグリップ”で中国地区を席巻する女子高生
雑巾王子こと武市悦宏プロが、全国の有望なジュニアゴルファーのもとを訪れ、大人ゴルファーにも役に立つゴルフのヒントを探る当連載。今回の王女候補は広島県出身、如水館高等学校2年の安保寿美さん。小学生時代から中国地区で名をはせる彼女の特徴は「美グリップ」。それがスウィングにどんなメリットをもたらすのか。武市が詳しく解説する。
今回の王女候補
安保 寿美(あぼ ことみ)さん
●主な戦歴/2021 中国女子アマチュア選手権 2位タイ ●ベストスコア/66(後楽GC) ●練習/2~3時間300球(毎日) ●トレーニング/体幹トレーニング(毎日1時間)
広島県出身の寿美さんがゴルフを始めたのは5歳のとき。広島といえば、名選手が多いことで有名だが、そのうちのひとりが谷原秀人プロ。彼は後輩を育てるべく、毎年「谷原秀人ジュニアクラシック」という大会を主催している。安保さんは5歳のとき、それを観戦し「カッコイイ!」と衝撃を受けたのだとか。
「谷原プロがカッコよかった?」
「もちろん谷原プロもカッコよかったですが、自分と同じような年の子が、真剣にプレーしている姿がカッコよかったです。それで、やってみたいと思いました」
以後、地道に努力を重ね、中国地区では名の知れた選手へと成長した。
「ボクは職業柄ジュニアの試合結果をよくチェックするんだけど、安保さんって名前よく上位で見かけるわ」
「そんなことないです。苗字がめずらしいから目立つだけです(笑)」とはにかむ寿美さん。
しかし、スウィングを見ると、それが謙遜であることがわかった。
「うん! いいスウィングだね」と感心する武市。
武市は多くのアマチュアやジュニア選手のスウィングをチェックする際、まっ先に注目するのがグリップ。それは、よくいわれることではあるが、身体との唯一の接点だから。
「ボクが理想とするのは、やっぱりスクエア。メリットは、ドロー、フェード、いろんな球を打ちやすいこと。そして、不調に陥ったときも、元に戻しやすいことって、当たり前なんだけど意外と少ない……。特に、女子ジュニアゴルファーの場合は、どうしても力がないから極端なフックグリップが多いよね」
その点、寿美さんのグリップはキレイなグリップだと武市はいう。
「誰かに教わったの?」
「最初に教わったプロに、武市プロと同じ理由で、スクエアがいいといわれました」
「そうなんだ。意見が合いますね(笑)。ボクは『グリップがキレイなら、スウィングもシンプルになる』という持論がある。寿美さんのスウィングも、シンプルでいいよね。グリップエンドが常におへそを向いたまま、脚力を使ってスウィングする。腕はそれにつられて動いているだけ。いわゆる“デンデン太鼓”みたいな感じ。ローテーションは考えず、そのまま打てば自然とクラブが体の回転に伴って振れるので、つかまったドローに。これ以上、何も語ることがないくらいすばらしい」
「ありがとうございます」
「稲見萌寧プロを高校1年のとき、このコーナーで取材したことがあるんだけど、最初に会ったとき彼女はフックグリップだった。でも、次に会ったときはスクエアになっていたんだ。そのとき彼女がボクに言ったのが『稼げるグリップにするためにスクエアにしました!』ってセリフ」
「そうなんですか? じゃ、私もガンガン勝ってオリンピックに出たいです」
「いいね~。がんばって」
美グリップの持ち主の将来が楽しみだ。
週刊ゴルフダイジェスト2021年9月7日号より