Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【2025デフリンピック】ゴルフ競技に日本勢5人が出場!「我々の挑戦、ゴルフへの想いを受け取ってほしい」

【2025デフリンピック】ゴルフ競技に日本勢5人が出場!「我々の挑戦、ゴルフへの想いを受け取ってほしい」

耳が聞こえない、聞こえにくいアスリートの国際大会「デフリンピック」が日本で初めて開催された。ゴルフ競技は3ラウンド54ホールの個人戦と1ラウンド18ホールの男女混合チーム戦が行われた。静かな舞台での熱い戦いをお届けする。

PHOTO/Tsukasa Kobayashi、日本デフゴルフ協会

日本代表選手 左から前島博之、中島梨栄、辻結名、袖山哲朗、渕暢之。総監督は日大ゴルフ部出身の野尻房男、女子監督はプロゴルファーの新井麻衣

音のない世界で
集中力が研ぎ澄まされる

日本チームの結果は、個人戦で8位以内の入賞に前島博之(7位)と辻結名(7位タイ)が入った。渕暢之は20位、袖山哲朗は23位タイ、中島梨栄が15位。チーム戦では前島・辻チームが8位に入賞した。

今回のデフリンピックで、デフゴルフの世界には、静寂から生まれる集中力と鋭敏な感覚、そしてコミュニケーションの多様性があると感じさせられた。

強風のなか、楽しみながら全力を尽くす

舞台は、首都東京にあるゴルフ場、若洲ゴルフリンクス。東京湾に位置する海沿いのコース特有の風と、時間ごと硬く速くなるグリーンとの闘いともなった

ルールは基本、R&AとUSGAにより制定されたものに従う。ミックスチーム戦競技は、18ホールのフォアサムストロークプレー方式(ペアは各ホールで交互に1球ずつ打つことで、1サイドとしてプレー)で行われた

「インパクトで音が聞こえないぶん、判断は視覚と手の感覚で行います。これは聞こえる人より優れているかなと思います」(中島)

「聞こえないことで平衡感覚に少しズレがあり、少し右が下がっていることなどに気づかない部分もあります。その辺はしっかり意識し考えながらプレーします」(前島)

選手やキャディは、手話はもちろん全身を使ってコミュニケーションを取る。手話表現は各国違うので、静かな緑のコースのあちこちで花がパッと咲くように感じるのだ。

渕暢之・中島梨栄チームは9位タイ。終始、身振り手振りでコミュニケーションを取りながら、楽しそうにラウンドしていた

拍手も手話で。“多様性”の花が咲く
「ナイスプレー」も「がんばれ」も。両手を顔の横で「きらきら(ひらひら)」と動かす手話での「拍手」が会場の至るところで見られた

野尻総監督は選手たちを称えながら、4年後のデフリンピックに向け、ボールを止める技術と経験値を積み上げる必要性を口にする。そして、「これをきっかけにもっとデフゴルフが広がっていくことを願います」

選手たちも皆、4年後の“リベンジ”を誓い、デフゴルフの発展を願い、ゴルフの魅力を口にした。

「ゴルフは人生の一つです。年を取っても長く続けることができるスポーツということが最大の魅力。私自身もこれからもゴルフを最大限楽しんでいきたい」(前島)

「いろんな国の人と関わることができていい経験になりました。英語ももっと勉強したいですし、手話も覚えたい。もっといろいろな国にも行きたいですね」(辻)

「家内と楽しくプレーすることが僕のゴルフの原点。その延長線上で競技に出て自分を磨いています。ゴルフは人間性を高めてくれるスポーツ。ゴルフ、大好きです。倒れるまでやると思います」(渕)

「どんな環境でも、自分のペースで挑戦を続ければ夢はつながります。ゴルフを通じて、努力する楽しさを知ってほしいです」(中島)

「誰一人も取り残さないこと。ゴルフ界は今バラバラです。JGA、PGAなどと僕たちがもっと協力して日本のゴルフ界を盛り上げたい。健常者も障害者も――片麻痺の方も切断された方も知的障害のある方も一つにまとまったらいいですね」(袖山)

ゴルフという“世界共通言語”を使った音のない世界からの発信――これからもゴルフを通じて受け止めていきたい。

先生は超飛ばし屋
前島博之(37)

鳥取県立ろう学校の教え子・同僚たちが修学旅行と合わせて観戦に。300Yのドライバーショットがさく裂した。「とっても力になりました。おかげで、ショットが真っすぐ飛んでとてもよかったです」

プロを目指す日大生
辻結名(19)

叔父でプロゴルファーの小林伸太郎がキャディを務めた。得意のアプローチは「キャリーで7歩、9歩、11歩とティーを置きそこに落とす練習」で鍛える。「課題はパットと1Wの飛距離です」

最年長ムードメーカー
渕暢之(49)

兵庫県姫路市役所に勤める。「耳が聞こえないことは個性です。この年になっても、こういう国際大会に出られる。私の年齢に近い人たちにも『僕にもできる』と思ってもらえれば嬉しいです」

歴4年のアスリート
中島梨栄(41)

デフフットサルの日本代表選手だった。ゴルフ歴はまだ4年。「ゴルフの魅力は自然の中で集中できること。経験の浅い私でも努力を重ねることで実力を発揮できると子どもたちにも伝えたいですね」

“三足のわらじ”を履く
袖山哲朗(37)

会社員でデフゴルフ協会の事務局長でもある。本大会は「苦しかった、プレッシャーもあった」と結果を悔やんだが、「日本のデフゴルフ界が発展するために、チームも自分ももっと頑張っていきたい」

手話ボランティアの方々も大活躍。袖山の妻で世界デフゴルフ連盟事務局メンバーでもある由美さん(左)も、10の言語(手話含む)を操り会場で奔走していた

表彰台でのメダル授与、国歌斉唱が行われた。個人優勝は男女とも欧州ツアーで活躍するプロ。ドイツのアレン・ジョンとインドのディクシャ・ダガール。チーム戦優勝はカナダチーム(ラッセル・ボウイ、エリカ・ドーン・リバード)

週刊ゴルフダイジェスト2025年12月16日号より

こちらもチェック!