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長嶋茂雄×岡本綾子 夢の対談を再録!<前編>「ワザを追求していく姿勢は、自分で学んでいかなければ身につきません」

1997年の「週刊ゴルフダイジェスト」新年合併号では、長嶋茂雄さんと岡本綾子さんによる夢の対談が実現していた。96年、長嶋さんは読売巨人軍の監督として大逆転でリーグ優勝を飾り“メークドラマ”が流行語大賞に、一方の岡本さんはフジサンケイレディスで区切りとなる60勝目を挙げていた。その年明けに行われた対談の中身とは?

INTERVIEWER/Masayuki Matsumoto PHOTO/Minoru Imase

「自分のオリジナルを持ち得ない。迷うと誰かに頼る。
そのサイクルから逃れられない」 (長嶋)

――最近の若い選手について、どう思われますか?

長嶋 選手自体、時代の移り変わりとともに変わってきていますが、技術が進歩しているのに比べて、気質の面ではどうでしょうか。我々が現役だった時分と比較すると、どうもプロらしさという部分に、甘さとか薄さが出ているように感じられますね。

岡本 その意見には、わたしも納得しちゃいます。

長嶋 古い時代の人たちに言わせると「最近の若いプレーヤーはハングリー精神が足りない」ということになるのですが、今の選手だってハングリーだし、問題はそんなに単純じゃないですよ。これでいいんだというオリジナルを持ち得ない。迷うと誰かに頼る。このサイクルから逃れられないんです。「人が人をつくる」という言葉がありますが、確かに、指導法にも問題があるんです。でも、岡本さんのように、ワザというものを追求していく姿勢は、自分で学んでいかなければ身につきません。教えようったって、教えられるものじゃない。ボクも、若い人の中に入って、ガンガンやりたいけれど、今は無理強いして、選手たちがついてくる時代じゃないから、何とも歯がゆい気持ちがあります。

岡本 プロ野球界もそうでしょうけれど、ゴルフ界には、青木さんやジャンボさんみたいに、勝つことに対する集中力、精神力、プレッシャーの克服法といった部分での、いいお手本があります。だから、若い選手たちは、もっと先輩たちを、いい意味で利用しなくちゃいけませんね。

長嶋 イチローくんのように、素質やセンスを備えていて、しかも努力を努力とも思わずに、自分の才能を伸ばしていける選手もいるんです。ただ、それが、ごく稀にしか出ない。練習しろといえば、やりますよ。周りがレールを敷いてやれば、その上を走ることはできるんだが、わずかな選手以外はある程度いくと満足するというか、すぐに野球が終わった次のことを計画しちゃうんですよ。

――いま名前が出たイチロー選手は、高校時代、テレビで岡本さんのスウィングを見て、打撃開眼のヒントにしたそうなんです。

長嶋 えっ、本当に?

――パワーではなく、スウィングで打つ。コンパクトなトップから、大きなフォローを取るバッティングフォームを考えたというのです。

長嶋 ああ、そう。フォローを大きくね。我々に言わせれば、あの振り子打法というのは、変則というか、実にアメリカ的なスウィングですよ。あのフォームで、彼は3年連続バッティングチャンピオン(首位打者)なんですからね。しかも、恐ろしいことに、まだ23歳という若さ。ですから、我々としても、前向きに考えて、個性ある選手を育てていこうと思っているんです。

岡本 わたしも他のスポーツを観戦するのが好きで、よくテレビで見ますが、たとえばバレーボールでも、あのジャンプ力があったら、自分のスウィングにどんな影響があるかしらとか、ヒントを探しているようなところがあります。イチローさんのフォームに、わたしのスウィングがどれだけお役に立ったかわかりませんが、わたし自身、ソフトボールの経験があったからこそ、自分のスウィング作りができたんだと思っています。

長嶋 それはまったくそのとおりでしょうね。ジャンボにしても、高校野球から西鉄に入団したという経験があったから101勝ですか? あれだけの成績を残せるプレーヤーになったんです。岡本さんとジャンボの強さは共通していますよ。我々はバットマンですから、ピッチャー心理はわかりませんが、繊細さがないとピッチャーはできないんでしょう? そういうものもミックスされて、岡本さんのあの美しいスウィングが作り上げられたんです。

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週刊ゴルフダイジェスト1997年1月7・14日合併号の記事を再録