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【キミこそ王子だ】Vol.104 杉浦悠太「鳥かごで磨いた“気持ちのいい”スウィング」

雑巾王子こと武市悦宏プロが、全国の有望なジュニアゴルファーのもとを訪れ、大人ゴルファーにも役に立つゴルフのヒントを探る当連載。今回の王子候補は、愛知県高浜中学3年、杉浦悠太くんだ。雪のなか元気にショットする杉浦くんの雄姿をご覧あれ。

今回の王子候補

杉浦 悠太くん

すぎうら・ゆうた ●主な戦歴/2016 日本ジュニアゴルフ選手権 12歳〜14歳の部 8位タイ ●ベストスコア/66(サンコー72CC) ●練習/毎日3時間 ●トレーニング/1日おきに3キロのランニング


4歳からゴルフを始めた杉浦くん。小学校6年までは並行して野球もやっていたのだが、中学からはゴルフ1本に絞った。

「どうしてゴルフを選んだの?」

「野球は冬、寒いので」

意外な理由だった。

「ゴルフも冬は寒いよね?」

「野球の方が寒いですよ」

たしかに、ゴルフの服装はある程度自由なので目いっぱい厚着することも可能だ。素材も昔に比べて格段に良くなっている。一方、野球は寒くても、ユニフォームの上にせいぜいジャンパーを羽織るくらい。それも、打席や守備に就くときは脱がなければいけない。杉浦くんの言うとおり冬は野球のほうが寒い。


それはともかく、彼のゴルフ事情は恵まれている。庭にお父さん特製の鳥かごの打ちっぱなしがあり、毎日そこで練習を重ねる。大きな練習場で球を打つのはたまに。

「鳥かご練習がメインのゴルファーは、あんまり変なスウィングの人はいない」

理由を武市にたずねると、

「球筋が見えないから、結果に一喜一憂することがない。スウィングに集中し、とにかく自分が振りやすいように振ることが身につく。ポンポン打つからリズムもよくなる」という答えが返ってきた。

杉浦くんの得意クラブはアイアン。ティショットが曲がらないので、パーオン率が高いことを武器としている。そのスウィングにはある特徴があった。

それは、ワッグルと実際のスウィングとでクラブの軌道が異なっていること。ワッグルは手首を固め、ノーコックを意識するが、実際のスウィングはコックを使う。

「スウィング軌道が違うのは気にしてませんでした。ただワッグルをしてからショットする方が気持ちよく振れるので」とのこと。

「やっぱり鳥かご派は、気持ちよく振ることを重視するんだよね」。予見が当たる。

でも、それだとなぜパーオン率が高いかがわからないので、もう少し掘り下げて説明してもらった。

「アイアンが曲がらないスウィングをしている人は、ダウンブローでボールを上からしっかりととらえられている。ややロフトが立ちながら、そしてライ角に狂いなくインパクトができるからコントロール性がよくパーオン率が高くなるといえる。ただ、ヘッドを上から入れすぎると、バックスピン量が増えすぎ吹き上がることもある。それを防ぐには、入射角がきつくなりすぎないようにコントロールする必要がある。そこでカギとなるのが、彼のワッグル。杉浦くんはノーコックで入射角を浅くするイメージを持てば、実際打つときに入射角が深く入りすぎる事はないと本能で感じているはず」

彼のワッグルは単なる動作ではなく、適度な入射角を保つための重要な要素だったのだ。それを頭でなく、本能で感じ取った杉浦くん。

「鳥かご練習はつまらない、という人も多いけど、実は気持ちよく振るというゴルフで一番大切な感性を磨くにはもってこいなんだ」

武市は彼の将来性を確信した。

週刊ゴルフダイジェスト2017年2月7日号より