ゴルファーのためのアンチエイジング<前編>クラチャン親子が語る「下半身」と「パット」の重要性
TEXT/Masato Ideshima PHOTO/Yasuo Masuda
ILLUST/Saekichi Kojima
ゴルフは歳を重ねても若い人たちと対等に戦えるスポーツ。だが、何もしなければ“ゴルファー寿命”は刻一刻と短くなってしまう。長くゴルフを楽しむため、40代、50代のうちに取り組んでおきたいことを紹介しよう。
「ラウンドはもちろん歩き
いつも先頭を歩いています」(寿男さん)
西東京エリアでちょっと名の知れた凄腕ゴルファーの親子がいる。久田寿男さん、謙さん親子だ。共にクラチャンホルダーであり、今なお切磋琢麿している。長年にわたりゴルフを楽しみ続けるための秘訣をまずは父・寿男さんに聞いた。
「最近はスコアメイクというよりは80歳、90歳になっても楽しくゴルフを続けるためにどうしたらいいかを重視しています。健康で楽しいゴルフを90歳くらいまではやりたいですね」
寿男さんは15年ほど前に大病し、その際に自身の体について改めて考えたのが大きなきっかけになったと振り返る。
「若いときはトレーニングが必要だけれども、歳を重ねて大切だと思うのはケアです。今は1週間に1回マッサージとリハビリを行っています。年齢のことを考えると、トレーニングというよりは現状維持が大切だと考えています。なかにはトレーニングをして筋肉隆々で、まだまだ飛ばしが大切という人もいますよね。それもひとつの方法とは思いますけど、年代に応じた整え方が大事かと。私の場合は体のケアと、あとは普段の食生活を大切にしていますね」
技術的なことに関しては、やはり小技を大事にしている。
「ドライバーで飛ばそうとしても息子には勝てませんから(笑)。今は200ヤードが基準。220ヤード飛べばそりゃあいいですが、200ヤードでも十分スコアを作れます。われわれくらいの年齢になったら、やはり小技で勝負です。グリーン周りとパットがそこそこうまければ、80~85くらいのスコアでは回ってこられます」
<寿男さんのゴルフ年表>
【20代】
20代後半でゴルフを始める。百貨店に務めていた頃でラウンドは月に1回程度。退社していろんな人の話を聞きながらゴルフをやるようになって徐々に80代前半のスコアが出るように。
【30代】
35歳のときに東京五日市CCのメンバーに。入会時のハンディは25。競技に出るようになるとすぐにHC12になり、シングルになりたいと思うように。練習を重ねてHC9になった。
【50代】
50歳を過ぎたころからドライバーの練習よりも小技を磨くように。結果、アプローチとパッティングの技術がアップ。2001年、57歳のときに初めてクラチャンを獲得。
【現在】
77歳の今は特にギアの進化に頼る部分も増えた。65歳ぐらいからバッグの中身の構成に変化が表れ、ウッド系がもともと好きだったこともあり多くなった。
「父親譲りなのか、ボクも
歩くのは速いですね」(謙さん)
今できることを行う精神は息子の謙さんにも受け継がれているようだ。
「40歳のときに経営者になって6年目になりますね。試合のあるときは(クラブ選手権や倶楽部対抗など)必然的にラウンドが増えますが、あまり増えすぎないようにコントロールしています。ゴルフは70歳、80歳になっても同じステージでできる点が素晴らしいスポーツです。30年後に父親と同じ年齢になった時にこんなに元気でいられるかはわからないですけれど、やっぱりゴルフをしていたいと思っています」
寿男さんも謙さんも過剰なトレーニングをすることはないが、ともに大事にしている体の部位がある。それは下半身だ。寿男さんはスキーで長年、足腰の強さを保持しているとのこと。
「スキーは20歳の頃から始めて、今も続けています。ゴルフは下半身が弱くなったらできないと思っています。スキーをすれば筋トレ要らずですからね(笑)。この歳になっても、階段は1段飛ばしです」
謙さんもストレッチなどを行い下半身強化は欠かさないという。
「ゴルフは下半身が重要なのはわかっているので、疲れを残さないためのケアはしています」
お二人のゴルフは基本歩き。しかもその歩く速さはゴルフ仲間の間でも評判とのこと。この下半身の強さがゴルフのアンチエイジングには欠かせない要因だ。
短い距離をひたすら練習
「自信をつけることが目的です」(寿男さん)
年齢とともに小技の重要性を感じ、その通りに技術力を上げることに務めてきた寿男さん。スコアのアンチエイジングを求めるなら間違いなくパッティングだと断言する。
「家の中でパットはよくやります。毎日やるわけじゃないですが目的は自信をつけること。だから短い距離を繰り返しやります。大事にしているのが出球。ボールの先10から20センチくらいのところに傷やゴミを見つけ、そこを通すことだけを考える。その先にカップがあると考えているので、そこさえ通せばあとは距離感だけというのが自論です」
スパットさえ通せばあとは距離感だけ
寿男さんが練習でもっとも大事にしているのが出球の方向。10センチから20センチ先にスパットを見つけて、そこをきっちり通す練習を繰り返している。地味な練習だがもっとも効果が高いという
寿男さんいわくパットが入らないときは良いストロークができていないときとのこと。大事なことはインパクトのスムーズさで、それを本番でできるように、練習でしっかり自信を植え付けている。高い技術力は自信というメンタルに支えられている。
【練習法】
グリップと右手首の間にボールを挟んで打つ
グリップと右手首の間にボールを1個挟んで、それを落とさないようにストローク。手首を使うことなく、腕の動きとヘッドの動きを同調させることができる
「“頭”でゴルフをするようになりました」(謙さん)
謙さんは寿男さんの影響でゴルフをはじめ、プロを目指す選択肢があったほどの腕前だったがゴルフで食べていくことの大変さと現実を目の当たりにする機会があり、諦める選択をした。一時期はゴルフから完全に離れていたが、そんな時間があったからこそ今はゴルフを心から楽しめているのだという。
「ある先輩から『年を取ってきたら、頭でゴルフをしろ』ってアドバイスを受けたことがあるんです。これは球を打って体で覚えるのではなく、体をどう動かすことでどんな球筋になるのかを頭で理解して打つということ。クラブという鉄の棒を振って、球をいっぱい打つと体を酷使してしまうので、40歳からは過剰な練習をしなくなりました。またマネジメントを重視するようにもなりましたね。コースに立ったときに、このホールはこう攻めたほうがいいから球筋はこれでというふうに頭でゴルフをするんです」
謙さんは本番で上手くプレーするために必要なことは、イメージと体の動きを一致させることだという。
「練習場での練習を減らしたら、クラブを振り回さなくなりました。するとゴルフがやさしくなって“丸く”なりました。前は練習場で10の力で振っていたとすると、コースではいい球を打ちたいという気持ちが強くなって出力が上がってしまい11くらいの力で振っていました。それが今は、9とか8で打てています。これはスウィングを小さくしたということではなく、力感が整っているということ。気張らずに自分でコントロールしながらやっていくことが、この先ゴルフを続けていくうえで大切なことだと感じています」
また、寿男さんと同じく下半身を大切に考えている謙さんも、特に足裏のケアを怠らない。これも間違いなくアンチエイジングに役立つことだ。
テニスボールを足裏で踏んでぐりぐりと転がす。足裏を柔らかくしておくことで歩くことはもちろんスウィングにも好影響を及ぼす
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