Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【球を打たずに上手くなる!】<後編>首振り、眼球、腕ぐるぐる…「機能神経学トレーニング」の驚き効果!

【球を打たずに上手くなる!】<後編>首振り、眼球、腕ぐるぐる…「機能神経学トレーニング」の驚き効果!

昨季の年間女王・佐久間朱莉が取り入れ、パフォーマンスを向上させたという機能神経学はゴルファーにとってどのようなメリットがあるのか。具体的な実践方法を聞いた。

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Tadashi Anezaki MODEL/Miyu Kamegawa(GOLULU)

>>前編はこちら

解説/竹内康弘

神経学トレーナーで、元浦和レッズコーチ。スポーツパフォーマンスの専門知識を深め修士号取得。 日本、ドイツで15年以上、1000人以上の指導経験があり、ドイツユースチームの監督も務めた。 機能神経学とコーディネーショントレーニングを融合したトレーニングを提供

機能神経学トレーニングの
具体的な方法とは?

目を閉じた状態で片足立ちをすると、多くの人は10秒と立っていられない。これは何が原因だろうか。足の筋力か、あるいはバランス感覚か。

「機能神経学的には、これは『小脳』からの信号の乱れと考えます。小脳というのは、後頭部の下のほうにあって、運動の緻密な調整や平衡感覚などを担っています。そして、小脳が正しく命令を出すために大事なのが体の感覚器官で、とくに目からの情報(視覚)は、全体の65%を占めるとされるほど重要です。暗闇の中で全力疾走するのが困難なことからもわかるように、私たちは目からの情報と脳の『前庭』によるバランス機能、それに手や足などにある感覚器(固有受容体)からの情報を統合して運動を行っています。つまり、運動が下手というのは、これらの連携がよくないからと考えられるわけです」と、竹内氏。

今回、モデルとして機能神経学トレーニングを体験してもらった亀川美羽さん(ゴルル)の場合、閉眼での片足立ちが苦手で、とくに右足はわずか2、3秒でバランスを崩してしまっていた。そこで、右足の楔状骨(けつじょうこつ)を10回程度さすったり、その部分を伸ばしたりする刺激を行ったところ、バランスを崩すまでの秒数が明らかに長くなった。

「これは末端の感覚器を刺激することで、感覚器からの情報がきちんと脳に届くようにして、脳が体の位置を正しく把握できるようになった結果、関節の安定性が向上したということです」(竹内) 


楔状骨を10回さする

目を閉じて片足立ちし、よりふらつく側の足の特定の部位(上図の部分)をさする。するとその刺激が小脳に伝達され、小脳が足の位置、安定を感じ取る機能が高まる

さすった部分を6回伸ばす

次につま先の爪側を地面に押し付ける形で、体重をかけて上下させ、先ほどさすった部分を伸ばす。その後、再度、片足立ちをすると、バランスが改善していることがわかる

また、続けて眼球の動きを使ったトレーニング(動眼神経刺激)を行うと、立位での体前屈、後方伸展のいずれも、当初より大きく動くようになった。

「動眼神経を動かすことで小脳を刺激することができます。屈曲、伸展のどちらの運動にも優位な効果が見られますが、とくに屈曲を刺激することがわかっています」(竹内)。

バランスを鍛えるというと、「バランスボール」によるトレーニングがすぐに頭に浮かぶが、それで向上するのが実は「体幹を固める」能力(つまり筋力)かもしれない。機能神経学では、スムーズな神経伝達による「全身の協調性」を高めることがより重要なのだ。

まずは5つのテストで自分の体の現状を知ろう

機能神経学的なトレーニングをする前に、自分の体の可動域やバランスを把握しておくことが大事。トレーニング後に同じテストをして、改善が見られるかどうかチェックする。その際の内的感覚の変化にも留意すること

ゴルフに必要な可動域が広がる!
機能神経学トレーニング

眼球トレーニング
体を曲げやすくなり距離感が養える

①棒を奥~手前に動かして棒に書かれた文字を目で追う(3往復)

文字の書かれた棒(なければ鉛筆でも可)を近づけたり遠ざけたりして「寄り目」と通常視を交互に繰り返す。

②棒を上下に動かして首を固定したまま文字を目で追う(3往復)

棒を上下させ目だけで追うと、視覚から小脳に刺激が伝わる

目をつぶって首を振る
「前庭」に刺激が伝わりバランス感覚が養える

①目をつぶって鼻を上下に動かす(3往復)
②目をつぶって鼻を左右に動かす(3往復)

平衡感覚をつかさどるのが「前庭」と呼ばれる部位(三半規管と耳石器で構成)。目を閉じて鼻を左右・上下に動かすと前庭に刺激が伝わり、バランス感覚の向上が期待できる

片目でボールキャッチ
「両眼視」の能力を高め距離感を判断しやすくする

文字が書かれたボールを投げてもらい利き目を隠してキャッチ。取る瞬間に見えた文字を言う(10回)

目にも「効き目」があり、無意識にそちらでものを見るクセがついている。反対の目で見る訓練で距離感の把握力が上がり、バスケットボールではシュートが成功する確率が上がるという

飛距離を伸ばしたい人は
“モーターコントロール”を高めよう

全身の「協調性を高める」というのはどういうことかというと、感覚器からの刺激が正しく脳に伝わり、脳のほうでは体の位置を正しく把握し、脳から適切な司令が出て、それが正しく末端まで届く状態ということ。これは「モーターコントロール」(運動制御)と呼ばれる能力。つまり、脳や神経が筋肉や関節と適切に連動して、目的の動作を微調整しながら行う能力ということ。

「モーターコントロールを鍛えるには、普段なら無意識にやっている動きを意識的に行う必要があります。たとえば、手の指を1本1本、それぞれ順番にくるくる回してみる。そうすると、苦手な指(つまり神経伝達がうまくいっていない指)はゆっくりきれいな円を描くことができずに、動きをスキップしてしまうのがわかると思います。あるいは、腕を真っすぐ伸ばして、拳で何かの周りをぐるぐるさせる。できるだけきれいな円を描こうとするほど、小脳に対する連結負荷が高まるので、より効果があります。そうして、肩なら肩、手首なら手首がいろいろな角度で動く能力をあらかじめ獲得しておくことがとても重要なのです」と、竹内氏。 

ドライバーの飛距離を伸ばしたいという場合、一般的には「筋力アップ」はどうしても必要な要素と考えがちだが、筋力不足によって飛距離が出ないのではなく、モーターコントロールがうまく働いていないために、筋力という「エネルギー」を効率よく出力に変換できずに飛距離が出ない人のほうが多いはずだ。そうでなければ、女子プロが男性アマチュアより飛ばすケースが多いことの説明がつかない。

「飛距離が出ない人はおそらく、動きのなかに何かブレーキになる要素を持っています。それを取り除いてあげるためにも、モーターコントロールを上げるということが、筋トレよりも確実に飛距離アップにつながる近道だと思います」(竹内)

モーターコントロール
筋肉の出力20%アップで飛距離が伸びる

腕を伸ばして拳を作りひじを曲げずに対象物の周りで円を描く(内回り・外回り×3周)

ひじを伸ばすことで拳を回す動作がやや難しくなる。動作が難しいほど、小脳との連絡負荷が高まり、それが神経伝達を向上する

スウィングプレーン上でクラブで対象物の周りに円を描く(内回り・外回り×3周)

ヘッドを使って同じように円を描くことで、このトレーニングのゴルフとの親和性が高まる。きれいな円を描こうとするほど効果が高い

単純な“反復練習”より
変動性があるほうが効果が高い

ロシアの運動生理学者、ニコライ・ベルンシュタインは、著書「デクステリティ」(“dexterity”は「器用さ」の意)の中で、「熟練者は同じ動作を繰り返すのではなく、毎回異なる身体の使い方(微調整)をして同じ成果(結果)を導き出す」とし、それを「反復なき反復」と定義した。そもそも筋肉はゴムのようなもので、それが腱で骨に接続しているわけだから、毎回同じ動きを生み出すことは不可能に近い。 

例えば、朝一番のティーショットと、疲労がピークに達した最終ホールのスウィングでは、筋肉の柔軟性も神経の反応速度も全く異なる。もし「不変のフォーム」に固執すれば、身体の変調に対応できずミスを招くだけだ。

「動作学習は『差』の中に学びがあると言えます。ある運動を1回目と2回目で何かを変えて行うことで、その差を脳が感じ取ろうとするわけですね。動きの違いによって、筋肉の出力だとか神経発火(神経細胞間の電気信号の受け渡し)の度合いが変わるので、何%かでもそれを感じながら練習したいわけです。そこで、練習では動きに常に変動性を持たせる『ディファレンシャルラーニング』の手法が有効です。ゴルフならたとえば、スタンス幅を1球ごとに変えてみるとかでもいいと思います。よく何かを変えると『当たらなくなる』という人がいますが、その場合は『変数』が大きすぎるということなので、スタンスを広げすぎたのであれば、次は少しだけ戻すという感じで調整しながらやるといいと思います」(竹内)

「差の中の学び」により想定外の事態に対しても無意識に体がアジャストし、結果を出す「生きた技術」へと昇華されるのだ。

「ディファレンシャルラーニング」の例
●ボールとの距離を変える
●クラブの番手を変える
●ボールの高さを変える
●スタンスを変える
●スウィングスピードを変える
●グリップする位置を変える
●足場を変える(台を置くなど)

週刊ゴルフダイジェスト2026年2月24日号より