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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.745「プロとしての心構えの違いはオフに表れます」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


今年は3人のルーキーが初優勝して、そのうち2人が2回優勝。年間女王には実質プロ2年目の山下美夢有選手が輝きました。女子プロゴルフ界の世代交代の勢いを、岡本プロはどう思いますか。(匿名希望)


毎年TV中継の解説を担当させていただいている大王製紙エリエールレディスオープン。

シーズン大詰めに開催されるとあって、いつもは賞金女王争いに加え、シード権争いが話題に上がるのですが、今年はメルセデスランキング年間1位の座がすでに決定していたため、今回はシードだけに集中していて話しやすかった気がします。

終わってみれば初シードは11人。

そのうち、ルーキー優勝の岩井千怜選手、川﨑春花選手、尾関彩美悠選手に加えて佐藤心結選手、佐久間朱莉選手、後藤未有選手、岩井明愛選手、阿部未悠選手、小倉彩愛選手の合計9人が昨年度のプロテスト合格者で占められました。

初シード権獲得者数は、例年ひとケタでしたが、2018年度から10人、翌年11人、2020-21年度は11人、さらに13人と続き、今回の2023年度も二桁を数えました。

LPGAが促すツアーの若返りや世代交代は、上手く回転しているといっていいでしょう。

2000年代前半は32.5~32.1歳で推移してきたシード選手の平均年齢は、2006年に初めて29.5歳と30代を切りました。

その後も低年齢化が進み、2020-21年シーズンには史上最年少の26.3歳となり今回は26.6歳となっています。

一方、今年でシード権を失った選手たちのなかで特筆されるのは、「20シーズン連続」で途切れることになった李知姫選手のシード連続保持のツアー記録です。

2002年の初シードから、一度もランク外に落ちることなくシード権を維持してこられたのは、確かな技術と勝負強さだけでなく、ケガや病気をしないという頑丈な身体ときめ細かいコンディショニングを欠かさなかったところにあるはず。

ベテランのたゆまぬ姿勢には頭が下がります。


また、以前にもお話ししたことがありますが、最近の若い選手の目まぐるしい台頭は、彗星のように登場した選手も、瞬く間に姿を消してしまったりすることにもなりかねない。

一昔前は、初優勝できれば10年ほどは名前を覚えてもらえていたのに、今そんな悠長さはありません。

今の競争の激しさでは、シード選手の賞味期限は長くて5年、うっかりすると3年で期限切れを迎えそうです。

若い選手が次々に登場するゴルフシーンは、シーズンオフの女子プロ人気バブル現象をも引き起こしています。

この時期になるとイベントなどへの出場依頼が殺到します。

しかし、誘われるままにすべてプロアマイベントなどに出ていると、オフの間にやっておかなければならないトレーニングなど計画的なプログラムが組みづらくなります。

体のケアやスウィングの修正などに充てるべき時間を削ってしまったら本末転倒。若い選手をサポートしているスタッフは、そのことを気遣ってあげてほしいと思います。

毎年この時期は、シード権の当落線上のせめぎ合いで選手たちのいろいろな表情を目にしてきました。

ランキング50位以内に入るか入らないか。来シーズン前半の出場はとりあえず約束されている55位以内から外れるかどうか、微妙な位置にいるプレーヤーたちは一喜一憂するはず……。

と、過去形でお話ししたのは、当落ギリギリにいる選手も、若い選手が多くなったことで、その表情が一昔前とは変わってきたと感じるからです。かつてはシード入りするかどうかに、それこそ人生が変わるほどの悲壮感と明暗を感じさせました。

でもいまは?

今どきの若い子たちは、切り替えが早いしシードがダメならQT、と次へ臨んでいく前向きさが目立ちます。

これはどちらが精神的に強いというより世代によるメンタルの質の違いなのでしょうか。

でも──涼しい顔で切り替える選手は、ゴルフの内容も何だかあっさりしているような気もして、そこのところが少しだけ気になるのはわたしだけでしょうか……!?

「ほんとうの実力をつければ、人気は一過性のモノにはなりません」
(PHOTO/AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2022年12月13日号より

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