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【世界基準を追いかけろ!】Vol.114 松山、畑岡、稲見…共通点は“孤独”を厭わぬ強さ

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回のテーマは、トッププロに共通するある共通点について。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 最近コーチとして新たに気づいたことは、何かありましたか。

黒宮 今年に入って、松山英樹、畑岡奈紗、稲見萌寧ら日米で活躍するトップ選手とコーチとして接する機会があったのですが、この3人に共通していることは「孤独」だと思いました。普通は孤独に陥ることを人は嫌がるものじゃないですか。でもこの3人は、孤独な状態をむしろ自ら選んでいるように思います。

GD 孤独の状態が作れないと、上のレベルでは戦えないということですか。

黒宮 そうです。プロゴルファーの場合は、一人で黙々と自分が決めたことをこなせないと上には行けないと思います。実際、僕がプロゴルファーを諦めたのも、自分は一人で黙々とやれないなと感じていたからですから。

GD 孤独は人を強靭にすると言いますからね。

目澤 孤独になるには環境が一番大事ですよね。僕自身、コーチを目指すときに、英語を覚えるためにアメリカに行って孤独に身を置きました。行く場所もボストンにしましたが、ボストンなら日本人も少ないから、英語の環境に没入できると思って決めたんです。

GD 孤独になるということは時間を有意義に使えるということですから、何かを習得するには孤独な状態が有効なわけですね。自ら孤独に入り込むのに必要なものは何ですか。

目澤 自分がどうなりたいかという目標設定じゃないですか。皆の中で楽をしていては、その目標に到達はできないので孤独を選ぶわけですよ。子供が勉強するのもある種の孤独な時間なわけで、でも自ら孤独を選ぶ子供は少ないですから、そこは親のしつけが大事だということですよね。

X 可愛い子には旅をさせろと言いますからね。旅するというのは、日常から抜け出て孤独になることですよね。

目澤 海外に独りでいると、本当に孤独を感じますからね。

黒宮 英樹も奈紗も、向こうに目標があるから向こうにいるのでしょうけど、奈紗は成績が落ちても日本には戻らないと言っています。

X 目澤さんが言った、目標設定と孤独な環境に身を置くことの相関関係ですよね。

GD 多くの日本人選手はシードを取れず、だいたい1年くらいで帰ってきますが、松山や畑岡のように、海外で長く活躍する選手のメンタルってとてつもなく強いってことですか。

目澤 ありえないぐらい強いです。

X アメリカで戦っている小平智も、インスタを見ていると最近はメンタル的な発言をするようになってきていますよね。

目澤 ああいうのを書くということは、そのステージに来ているということですよね。

GD 松山と畑岡の気持ちの強さはどう養われたのでしょう。

X 早い段階で孤独な環境や状況に身を置いたということですよね。松山などは、都会の学校じゃなく高知の明徳義塾を選んだ時点で、ある種の孤独に身を置いたということが言えるわけですから。

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年12月6日号より