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【渋野日向子プレス/再録⑨】激動のルーキーシーズンを象徴する最終ホール。最終戦「LPGAツアー選手権リコーカップ」

渋野日向子プロのプレーに、みんなのゴルフダイジェストのプロゴルファー・中村修が密着取材した、週刊ゴルフダイジェストの連載企画「しぶこプレス」を再録。第9回は2019年シーズン最終戦をレポート。三つ巴の賞金女王争いはサンデーバックナインまで目が離せない展開に!

今回は「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」。泣いても笑ってもすべてが決まるツアー最終戦です。

賞金女王の可能性はあっても、考えないで頑張る

渋野日向子選手は、最終戦を残した状態で賞金ランキング3位。自身が優勝し、鈴木愛、シン・ジエ選手が2位タイ以下、もしくは自身が単独2位で鈴木選手が10位以下、シン選手が3位以下なら賞金女王の可能性が残されていました。

しかし「賞金女王のことは考えません。応援してくれた人や支えてくれた多くの人に1年間の成長した姿を見せられるように頑張ります」とコメントした通り、結果としての女王よりも、目の前の試合での優勝を目指すというスタンスで試合に臨みました。

初日の宮崎カントリークラブは最高気温14度ほど。

朝には雨も混じる厳しいコンディションでしたが、渋野選手はトップのテレサ・ルー選手とは3打差、2アンダーの2位タイとまずまずと言っていい滑り出し。

賞金女王を争う鈴木選手がイーブンパーの10位タイ、シン選手が3オーバーの26位タイと出遅れ気味の2人を一歩リードする形となりました。

この日は、4パットのボギーが1つ、イーグルとバーディが1つずつという展開でしたが、苦しいところをパーでしのぐ「大人のゴルフ」という印象。

決して調子が良くないなかでもスコアメークができており、成長を感じました。

2日目は前半からショットが乱れます。グリーンを狙ったショットが右に出る場面が多く、4番ホールでは2打目をシャンク。ボギーが先行してしまいます。

「どのパットより気持ちが入った」という最終日18番のバーディパット

しかし、6番ホールでバーディを奪ったあたりから少しずつ持ち直してきて、13番、14番で連続バーディ。結局3バーディ・1ボギーでスコアを2つ伸ばし、首位と3打差の3位タイでプレーを終えました。

結果自体はまずまずでしたが、やはりショットは好調とは言えません。プレー後には斎藤大介トレーナーと、ゴムを使って体のバランスを整えるトレーニングを行い、明日に備えていました。

3日目の渋野選手は、5番でボギーが先行しますが、6、7番の連続バーディでバウンスバック。16番まで5バーディ・2ボギーと同組のイ・ボミ選手とスコアを伸ばし合う展開でした。

一時は首位に立つ場面もありましたが、17、18番で連続ボギーを叩いてしまい。失速しながらのフィニッシュ。トップと2打差の単独3位で3日目を終えました。

この日は13番のボギーも含め、いままでにないような大曲りがでました。「13番のティショットから感じが悪くなり、そこからかな。17番は力んで左に飛んだので情けない」と渋野選手。

青木翔コーチと調整、最終日の18ホールに備える

しかし翌日の不安をできる限り取り除くべく、ホールアウト後には青木翔コーチと調整に取り組みました。

そして迎えた最終日。本人は「女王は考えない」と言いますが、鈴木選手が12位タイ、シン選手が17位タイと、逆転の賞金女王も十分に可能性のある展開です。

しかし渋野選手は、前日の入念な練習にもかかわらず調子が上がりません。1、2番こそバーディチャンスにつけますがそれを決めきれず、バーディが取れない展開。

ショットがいいところに乗らないし、乗ってもバーディパットが入らず、いかにも噛み合わないゴルフで、11番まですべてパーが続きます。

「応援してくれる人、サポートしてもらった人のため、頑張ります」

最終日に「68」と維持を見せて賞金女王を獲得した鈴木愛選手

苦しい中でもボギーを打たない粘りは、アプローチも含めた成長の証拠ではありますが、この土壇場でバーディが獲れないのは、さすがにストレスが溜まります。

そんな渋野選手を尻目に、最終組のぺ・ソンウ選手がどんどんスコアを伸ばし、首位に立ちます。鈴木選手も中盤でバーディを重ね、5位前後まで浮上してきました。

渋野選手は、12番パー3でティショットをベタピンにつけて、この日最初のバーディを奪うと、続く13番でも連続バーディ。ところがやっとエンジンに火がついた矢先、15番パー4で2打目をグリーンオーバーしてしまいボギー。

勢いに乗りかけたところに水を差す、痛恨のボギーでした。

渋野選手は15番を終えて6アンダー。この間にぺ・ソンウ選手は10アンダーまで伸ばしておりこれで事実上「万事休す」となってしまいました。

それでも渋野選手は「どのパットよりも気持ちが入った」という最終18番のバーディパットを沈め、7アンダーの2位タイでフィニッシュ。

最終ホールでバーディを決めてスマイル復活

最終日には宝塚ポーズも披露

彼女自身「最後にバーディが獲れたので悔いはないです」と語ったように、この1年の彼女のプレーを象徴する、見事な魅せるバーディだったと思います。

優勝にも賞金女王にも届きませんでしたが、明らかに調子がよくないにもかかわらず、32人の実力者しか出場できないリコーカップでしっかりと優勝争いができたということは、渋野選手のゴルフ力が上がった証拠と言っていいでしょう。

賞金女王争いには敗れたものの、シン・ジエ選手はツアー史上初の平均ストローク60台の偉業達成

今シーズンは、スコアメークのためのマネジメントをほとんどせずにひたすらピンを狙うゴルフでこれですから、彼女のポテンシャルは計り知れません。

長かった激動のシーズンを終えた渋野選手。本当にお疲れ様でした。

週刊GDより

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