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【世界基準を追いかけろ!】Vol.110 日本男子の上位にフェードヒッターが多い理由

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回のテーマは、男子ツアーの選手たちの球筋について。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 日本の女子ツアーではドローを打つ選手が多いということですが、男子ツアーではどんな感じですか。

黒宮 日本は男子もドローが多いですよね。

X 中島啓太もフェードといわれますが、けっこうドローを打つ回数が多いみたいですね。

目澤 確かにそれは思い当たります。以前、中島君のドライバーのデータを見させてもらったことがあるんですが、出球は右にしか行ってなかったですからね。

X 上体が傾きやすくて、左の出球を目指しているのが、結果的に右になっちゃうんだと思います。

黒宮 彼はスウィング変わりましたよね。以前よりちょっとこじんまりしてきた感があります。

X 明らかに変わってはいますよね。


黒宮 狭いコースでやる場合は、クラブをさばいた打ち方で良いとは思います。でもあれだけ左をワイドに使える選手はいないので、それを手放すのは少しもったいない気がします。

GD ほかに男子でフェードヒッターはどういった選手ですか。

X 岩﨑亜久竜、桂川有人。

GD そう考えると中島啓太も含めて、上位に来る選手はフェード系が多いように思うのですが。

黒宮 日本ツアーでやる以上は、フェアウェイに止めるゲームになってくるので、その場合はフェードという選択にもなるんじゃないですかね。最近は前に行かなきゃいけない飛距離ゲームになっているとはいえ、試合をする会場のスケールは変わってないわけですから。

GD フェアウェイ幅の狭さの関係ですよね。

X 稲森佑貴(※1)が強いということが象徴的ですよね。パナソニックオープンで出だしの1、2番ホールのティーショットで、彼がフェアウェイを外した時に、「え、稲森プロでも外すことあるんだ」って驚くくらいフェアウェイキープ率は高いですからね。

黒宮 以前、チャレンジツアー(下部ツアーの旧名)で梅山知宏のキャディをしている時に、当時、無名だった稲森のプレーを見たんです。「これはいずれレギュラーツアーで上位に来るだろうな」と感じました。要するにコースが変わってくるので、その場合はフェードても、スコアがあまり変わらないということ。もちろんパッティングも上手かったから。そうしたら、やはり上位に上がってきましたよね。

GD 稲森は限りなくストレートに近い球を打ちますよね。実際には、ドローもフェードも二つの球筋を状況に応じて打ち分けられるのが有利ですかね。

黒宮 大西魁斗(※2)などはどちらでも打てますよね。しかもアドレスでもどっちの球を打つのか分からない感じがします。普通にニュートラルに構えてちょっとボールポジションを変えて、切り返しの入るタイミングで球を打ち分けています。彼は飛ばそうと思えばもっと距離が出そうですけど、あえてそれをやっていない感じがします。勝つために両方打てるスウィングを選んでいる感じですね。

(※1)2015年度から6季連続でフェアウェイキープ率1位を継続中。今シーズンもFor The Players By The Players終了時に77.609%で1位を堅守。2018年、2020年の日本オープンを制覇している。(※2)9歳で渡米し13歳でIMGアカデミーに入る。南カリフォルニア大学時代にはオールアメリカンに選ばれる。21年にプロ転向し、日本でツアーに参戦中。今季フジサンケイクラシックで初優勝を遂げた

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月8日号より