【名手の名言】ジャック・ニクラス「心のコントロールとは激情を抑えることではなく激情を自分に起こさせない能力」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は“帝王”ことジャック・ニクラスの含蓄のある言葉を2つご紹介!
心をコントロールすること
それは激情を抑えることではない
激情を自分に起こさせない能力をいうのである
ジャック・ニクラス
メジャータイトル18勝の記録を保持していて、20世紀最高のアスリートと謳われたニクラス。現役時代は「帝王」という冠詞が必ずついた。
そのニクラスは、シニアツアーに移る頃から、スピーチなどで語る言葉は思索的というか、哲学的になってきた。
表題の言葉もその中に入るものだろう。達観を感じさせる。自己を客体化させ、第三者的に自己を見つめうる人にしか理解できないのかもしれない。
ニクラスは現役時代、集中力の人であった。パットラインを読んでいるときに帽子が風で飛んでいったのを、パットが終わってから気づくということもあった。それだけ集中していたのである。
そのプレーに集中する力で、不安や悔悟という感情を忘れさせたのではないか。つまり深く集中できることこそ激情を起こさせない能力といえるのかもしれない。
私は、打ちたいボールの軌跡を
イメージせずに打ったことは
一度もない
ジャック・ニクラス
帝王ニクラスは、現在のパワーゴルフの祖といっていい。しかし、パワーだけで帝王の座についたのではない。類稀なショットの精緻性がなければ、ゴルフも含めたオールスポーツの20世紀最高のアスリートと呼ばれるわけがないのだ。
ニクラスのそんな技術の元が集中力であり、イメージ力であったのだと思う。
「まずボールをどこに落としたいか、イメージする。次にボールが思い定めたところへ飛んでいくところ、地面に落ちるところを思い描く。最後にそのボールを打てるスウィングをしているところを想像する」
と帝王。
ところは80年代始め、マスターズの行われるオーガスタナショナルGCの練習場。当時の専属キャディ、アンジェロはボールの落下地点に、カゴを持って立つ。
アンジェロはいくぶんおどけた様子で、ニクラスが放つボールをワンバウンドで拾うわけだ。それ自体も絵になったが、驚いたのはドライバーショットで、アンジェロは立ったまま、手を左右に動かすくらいだったということだ。
ドライバーショットで約1メートルの誤差で打っていける正確性。何もトリックショットをやったわけではなく、練習の仕上げで、マイボールの回収のため行ったのだが、図らずもこの時、帝王は冒頭の言葉通りのことをやっていたのだろうと思う。 帝王の矜持を見せつけられた瞬間だった。
■ジャック・ニクラス(1940年~)
米オハイオ州生まれ。10歳でゴルフを覚え、12歳から5年連続で州ジュニア選手権に優勝し、神童と呼ばれる。その後全米アマを2度制し、61年にプロ入りした。その翌年、全米オープンに優勝するが、当時のヒーロー、アーノルド・パーマーを破っての勝利と太めの体格のためか、敵役となる。その後巨漢からスリムへ、GIカットから長髪へイメージチェンジを果たし、帝王と呼ばれるようになる。ツアー73勝。なかでもメジャー18勝の記録は未だ破られず、メジャーでの2位も19回と圧倒的。グランドスラマーであり、殿堂入りも果たした、20世紀最高のゴルファーである。
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