Myゴルフダイジェスト

【さとうの目】Vol.261 ニクラスからタイガー、タイガーからマキロイ…聖地で受け継つがれるバトン

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は全英オープンを大いに盛り上げてくれたひとり、ローリー・マキロイ。

PHOTO/Tadashi Anezaki

ローリー・マキロイのボールには「22」という数字が印字されています。エリカ夫人と結婚したのが4月22日。それで22という番号を調べたら、ハイリスク、ハイリターンといった意味があり、自分のゲームにぴったりじゃないかということで使用し始めたそうです。

今年は2022年。しかもマキロイは6月にカナディアンオープンで21勝目を挙げました。そして全英では3日目を終えて単独トップに立ち、22勝目はここで……と、嫌でも期待がかかります。しかし“マキロイ推し”のボクとしては、口に出してしまうと夢が消えてしまいそうで、全英オープンの開催中、あえてSNSでもテレビの解説でも「22」の話はしなかったんです。これファン心理ですよね。

結果はご存じのように、最終日を64で回ったキャメロン・スミスが通算20アンダーで逆転優勝。10番から4連続バーディを含む8バーディを奪う圧巻のゴルフでした。通算20アンダーは、00年にタイガー・ウッズが記録した19アンダーを更新するセントアンドリュースでの大会コースレコード。最終日は29パットで、ほぼノーミスの見事な優勝です。


今回はボクに限らずメディア、そしてファンも圧倒的にマキロイの応援が多かったようです。そもそも人気がありますし、8年間メジャー優勝から遠ざかっている。それ以上に、今のゴルフ界を取り巻く諸事情を、マキロイがひとり背負っていると感じるからです。

マキロイはPGAツアーの選手会長として、新リーグLIVゴルフに批判的な発言を繰り返してきました。LIVの第1戦の詳細が公式発表されたのがメモリアルオープンの週。「ニクラスの試合で発表するなんて」と嫌悪感を露わにしました。そしてLIVの開幕戦は、カナディアンオープンの週とぶつかります。その試合で21勝目を挙げ、優勝インタビューでは着席するなり「One more than Norman!」(ノーマンをひとつ超えた!)と言って、その後の質疑応答でも「新リーグのリーダー(G・ノーマン)と勝利数が並んでいたのは知っていたので、それを超えるのがモチベーションだった」と言っていました。

世代のバトンタッチを匂わせるのかどうかはわかりませんが、R&Aの計らいは粋です。“聖地”は1番と18番は隣り合わせ。00年、ジャック・ニクラスのセントアンドリュースでの全英オープンは最後だと言われており、大会の2日目、18番グリーンに上がってくるニクラスと入れ替わりに、1番をスタートしていったのがタイガーでした。そして今回、18番を歩きながら涙を見せたタイガー。そのときすぐ横の練習グリーンにいたのが松山英樹、1番のティーイングエリア付近にいたのがジャスティン・トーマス、そして1番のフェアウェイで、タイガーと目で合図を交わしたのがマキロイでした。

今年の全英オープンでは残念ながら優勝は逃しましたが、この悔しさを超越するドラマは、来年の春、マスターズでのキャリアグランドスラムの達成になるとボクは信じています。

「最終日、マキロイのFWキープ率は100%。4日間でバンカーに入れたのは1回だけ。完璧なセオリー通りの戦いをしたマキロイが負けたというより、ロングパットをことごとく寄せ、ミドルパットをことごとく入れたスミスが勝った大会と言えます」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月9日号より