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【小祝さくら ゴルフときどきタン塩】Vol.2「ただただ、木になりたい」

国内女子ツアーを牽引する女子プロのひとり、小祝さくら。ほんわかした雰囲気を持ちつつも「連続出場」歴代4位の記録を持ち、24歳ながらすでにツアー8勝の実力者。そんな小祝の素顔や、ほっこりとした日常を追っていく――。

THANKS/札幌リージェントGC PHOTO/Satoru Abe、Hiroaki Arihara ILLUST/Saho Ogirima

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小祝さくらは以前、「私は木になりたい」と言ったことがある。

今でもそう思っているのだろうか?

「はい、そうですね。木がいいです」とはにかむさくら。

「木はすごいラクだと思うんです。ラクと言うと木に申し訳ないんですけど、でも何もしなくていいですよね……まあ、木は木で大変なのかもしれないんですけれど。まだ木になったことがないので、本当のところはちょっとわからないんですけれど」

勝負の世界で生きる小祝。やっぱり、日々つらいことが多いのだろうか。

「そういうわけではないんです。ただただ、木になりたい。もし、なれるなら、けっこう太めの木がいいですね。細いと台風が来たら折れたりして、耐えるのが大変じゃないですか。だから安定感がありそうな、幹の太い、何が来ても折れなさそうな木がいいですね」

小祝のプレーを見ていると、ときどき“木”に見えることがある。何があっても動じず、ブレない、しなやかでおだやかな。

さくらが木になったら、「何もしなくてラクだなあ」と思っているか聞いてみたい

今シーズンが始まる直前、目標を聞いたとき、「謙虚、です」と答えたさくら。

勝負の世界で「謙虚さ」は邪魔にならないのか。

「ならないですよ」ときっぱり。

「アマチュアのときからずっとそういう感じでやってきたので、あまり変わらないんです。確かに、勝とうという気持ちが足りないということになるかもしれませんし、もっと勝とうという気持ちでやったほうがいいとアドバイスをいただくこともあったので、少しそういう気持ちを持とうと思ってはいるんです。でも、それと謙虚とは別ですよね」

小祝がおだやかに見えるのは芯の部分に「謙虚」があるからだろう。

試合では「ギャラリーの方に、別に私なんか見に来ている人はいないから。みんな(原)英莉花ちゃんとかを見に来ていると思う」と本気で考えている。

何勝も挙げトッププロとなっても、「調子に乗っている」「なんだか生意気になったな」と周りが感じる言動はしない。

小祝さくらは「謙虚の木」なのだ。

だから試合中も「起きたことはしょうがない」と考えることができる。

先週のスタンレーレディスホンダ。真冬のような寒さ、雨、風。サスペンデッドで2日目に29ホールを回ることになった。心身ともにつらい状況。

こういうとき、小祝は強い。自然に状況を受け入れ、自分を貫くことができる。

終わってみれば54ホールをノーボギーで回り、今シーズン2勝目、通算8勝目を挙げた。

小祝さくらは、残りの試合も「謙虚の木」となり、ひたすら自分のゴルフを磨いていく。

「ここ最近は、すごく上手くいかないことがあっても、また頑張ればいいかなとポジティブにとらえられるようになりました」

こいわい・さくら。1998年北海道生まれ。ニトリ所属。8歳でゴルフを始め、17年のプロテストで合格。19年初優勝、昨季は5勝を挙げ最後まで賞金女王を争う。「黄金世代」を引っ張る存在だ。「私、おっとりしているように見られるんですけど、そうでもないんですよ」

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月1日号より