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【世界基準を追いかけろ!】Vol.108 ドローとフェード、各ツアーの主流は?

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は海外ツアーで主流になりつつあるフェードについて、日本の男女ツアーでの傾向を交えて2人に話してもらった。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD ツアーではフェードが主流といいますが、実態はどうなんですか。

黒宮 女子プロは8割方ドローですけれどね。

GD それはなぜですか。

黒宮 やはり身長があるわけではないので、自然とそうなるんじゃないですかね。

目澤 実際、フェードを打つのって難しいですよね。

黒宮 体力的にも難しいと思うんですよね。身長が低いとどうしても軌道がフラットになりがちで、その状態でフェードを打つために最下点の先でヒットさせるとなると、だいぶ体幹の力が必要になります。体が右に傾きやすいですから、頭も揺れやすくなるし、負担が大きくなると思います。

X フェードはそれだけ体幹が強くないと厳しいわけですかね。

目澤 体が相当に強くないとできないですからね。

黒宮 そう考えると、女子の場合、シーズンで年間戦うことを考えると、ドローのほうが効率が良いような気がしますね。

GD 女子はジュニア時代から、ドローを打つ傾向にあるわけですか。


黒宮 小さい頃からハードスペックのクラブを選びがちなので、そうなると右を向いてフェースを左に向けて振るというスタイルでゴルフを覚えてしまうんでしょうね。小さい時からアンダースペックのクラブを持たせて、インパクト効率を上げていくということをやるといいんですけどね。

目澤 道具の進化もあると思います。スプーンの性能が上がっているので、昔より引っかけのミスが出にくくなりドローが打ちやすくなっています。ドライバーはフェードで、ドローが必要なホールはスプーンで打つというのもできるようになっていますね。

黒宮 スウィングを変えずに、ギア効果(※1)を利用してドローを打つという選手もいますよね。堀川未来夢選手のように、スタートホールは緊張するからドライバーのトウ側に当てて無難にドローを打つ選手もいます。

目澤 以前、山下美夢有選手のクラブを見せてもらったんですけど、打痕がフェースの芯より少し先に付いていました。スウィングが悪くなるとダウンブローがきつくなってアウトイン軌道がきつくなるので、練習ではかち上げる感じで打つことで、うまく軌道を調整してピッタリのところを毎週探しているみたいです。自分のスウィングの特性を理解していて、それで自ずと打点位置もそこに集まってくるわけです。彼女の強さの理由も分かりますよね。

X 女子ツアーでフェードを打っている人は誰ですか。

黒宮 イ・ミニョン、稲見萌寧、河本結、原英莉花ですかね。

目澤 渡邉彩香、有村智恵も。

X 米ツアーの女子もドローが多いんですか。

目澤 洋芝でやっているから、フェードが多い感じがします。リディア・コーもフェードに変えて良くなったって言っていましたよね。ネリー・コルダはドライバーがドローでアイアンがフェードです。ダニエル・カンとかもフェードですね。

(※1)クラブフェースのトウ側で打ったボールはフック回転の弾道になりやすく、ヒール側でヒットするとスライス回転の弾道になりやすい

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月25日号より