Myゴルフダイジェスト

“ママプロ”とジュニアを応援! 初の試み「LaLa クイーンズカップ」をレポート

8月に岡山・後楽GCで行われた「LaLa クイーンズカップ」。“ママプロ”応援とジュニア育成を融合させた初の試みを追った

THANKS/後楽GC PHOTO/Masaaki Nishimoto

ママプロ2人とジュニア1人でのラウンド。久しぶりの試合だという北田瑠衣(左)と、娘のななみちゃんを連れて参加した佐藤靖子(右)。ジュニアは山本宏香さん(中)

>>大会の写真はこちら

プロには舞台を、
ジュニアには経験を。

試合当日の朝、レストランではこんな会話が飛び交っていた。「大きくなったねえ」「学校はどんな感じ?」。話題の中心はゴルフではなく、それぞれの子どものこと。今日ここには“ママプロ”しかいない。皆、母の顔になる。

1番(パー4・375Y)のティーイングエリア。第1組のスタートだ。コロナ禍でゴルフを始めた鈴木琉汰朗くん(小6)は、初めてのプロとのラウンドに緊張気味。しかし、同組の村田理恵が「緊張せんで大丈夫。それより私にゴルフを教えて」と場をなごませる。今大会は、ママプロ2人とジュニア1人でラウンドする。予選会を通過した小学男子と小中学女子、計19人。全員地元岡山のジュニアだ。ここでもプロは母の顔だ。

「レジェンズツアーとも違い、お子さんと一緒にできるのもいい。私にも同じ歳の子がいます」(平尾南生子)。「親目線ですよ。ジンくん? うちの子はシンやわ」(土肥功留美)。「何かわからんことあったら聞いてね。プロが2人もおるんやしね」(一ノ瀬優希)

プロ自身の子どもたちも応援に駆け付ける。佐藤靖子の長女、ななみちゃん(小3)は、「真っすぐ行けばいいけど……ママのボールはこう曲がるから」とフェードヒッターの母の球筋を見事に解説。福嶋晃子の長男、和樹くん(小3)は「ママ、腰、大丈夫かなあ」。その心配顔をよそに、持ち味の豪快ショットを披露する母。

そう、コースでクラブを握るとすぐプロの顔に切り替わるのだ。

大会の“首謀者”の一人でもある佐藤靖子は語る。

「春先からおもちゃ王国の髙谷社長と相談していたんです。出産してもいろいろ諦めるのではなく、こういうこともできるんだという道しるべができるといいなと」

現在、ママプロのLINEグループは100人を超えるという。

「本当はもっといると思います。今回私はプロをとりまとめました。初めてのことで心配なので、佐々木慶子プロ、甲田良美プロ、一ノ瀬優希プロと一緒に、距離やピン位置なども相談しながら。ゴルフの楽しさをジュニアから教えてもらい、ジュニアには私たちのゴルフを見てもらって、お互いにとってよいと思うんです」

佐藤をスポンサードするおもちゃ王国の髙谷昌宏氏によると、

「山陽新聞さんの子育てママを応援する会員組織『LaLa Okayama』で、弊社も事務局に入り一緒に企画を作ってきました。今年10周年を迎えるので何か事業をやりたいと。佐藤プロとは以前から、ママさんプロが戦う場が少ないので何か試合を作れればいいと話をしていて、思いが重なり、コースの生本社長に相談したら『ぜひやりましょう』となりました」。

大会実行委員長でもある生本尚久氏(みのる産業)によると、

「弊社は後楽GCだけでなく、県内4つの練習場を運営しています。ゴルフがメインの会社ではないですが、以前からジュニア育成にも力を入れています。15年前から18歳までのジュニアには練習場は300円で打ち放題なんですよ」。

「生本社長から、皆さん同じ歳くらいのお子さんをお持ちなので、一緒に回るといいのではと。このアイデアも大きかった。若いプロより子どもの気持ちはつかみやすいですし、実際プレーする姿を見ても、いい雰囲気です」(髙谷)

「今、特に女子プロは人気。ベースを作ってきたのは参加されている皆さんですから、おざなりにしてはダメだと思っています。まだまだ活躍できますしね」(生本)

「レジェンドツアーも素晴らしいですが、30代の女子プロは本当に結婚して出産していいのかという悩みをお持ちで。でも彼女たちもプロですから、戦って賞金を稼ぐという闘争心を出す場所が必要。レギュラーツアーは20代前半が多く、それ以外はステップ・アップ・ツアーにもなかなか出られない。産休制度なども変わってきてはいるけど、こういう大会があればいいなと。岡山で初めて開催というのも意味があります」(髙谷)

「若い女子プロの励みにもなりますしね。ジュニア育成にもつながるし、すごく意義のある大会になりました」(生本)

「こういうイベントを開催していただき、皆すごく楽しんだと思います。ジュニアの子と回れたのもよかった。すごく上手かった。プロも間近で真剣なプレーを見せられる。お互い普段味わえない感覚を得られたはずです」(北田)

頑張るママプロに選択肢を作りたい

ラウンドを覗くと、プレーは真剣そのもの、しかしインターバルでは、親子のように寄り添って歩き、おしゃべりする光景があった。参加者は皆、「すごく楽しかった」と口をそろえる。

マレーシア在住で、夏休み帰国中に参戦した山本姉妹は、「プロは筋肉がすごいと思いました!」(宏香さん・中1)。「話しかけてくれて、途中から緊張もとけました」(宏美さん・中3)と、プロへの道を探り始めたようす。

福嶋&佐々木組で回った松浦秀くん(小6)は、「緊張感が違います。めっちゃ飛びますし、すごい。グリーンの読み方とか教えてもらいました。楽しかったです」。試合後、福嶋に家でやるべき練習を聞き、「私はお父さんも野球選手だから、とにかくバットを振ってましたよ」と答えてもらっていた。

ママプロたちも、「自分が若いときはどうだったかなあって考えながら楽しみました」(土肥)。「自分の子とも、こんなふうに一緒に回りたいなあと思いながらプレーしました」(一ノ瀬)。「ジュニアと試合で回ったことがないので最初は心配してたんです。どこまで話しかけていいかなんて。でも、息子と同じ男の子でしたし楽しかったです」(福嶋)。「他の2人が飛ぶからずっとセカンドオナー。私も飛ぶほうなのに。でも面白い取り組みです。子どもに慣れている人たちだから、お祭り的なイベントだとしても、ゴルフに対しては真剣にできるんです」(佐々木)

「練習もトレーニングもできていないけど、いいプレーをしたいし、積極的にバーディを取りにいこうと、前半はピンを狙ってダメでした。でも後半はかみ合った。同組の佐藤さんは、ミスがないし、すごくいいプレーでした」(北田)。「瑠衣ちゃんのように優雅に振りたいと……私はすぐ急ぐから。でも瑠衣ちゃんはさすが、後半5バーディ。こういう選手が戦える環境はやはり必要です」(佐藤)。

福嶋晃子の260Yショットは健在!

今回、キッズルーム(託児所)、スナッグゴルフのスペースを準備。大会スタッフもいたが、年上が年下の面倒を見たり、子どもたち同士でも楽しく過ごしたようだ。

「託児所がすごく楽しかったみたいで、娘が『またこんな楽しいことあったらええのに』と手紙をくれたんです」(村田)。仙台から参加した佐藤のぞみは、「こういう準備は大切です。QTの会場などにもあれば連れていきたいなと思います。挑戦したいと思っているからこそです」。2児のママ、甲田良美も「2人とも連れてきて、子どもも楽しそう。ゴルフ場のお風呂が大きいのも楽しいみたい。皆ママなのでお互い見ていられるんです。ツアーでもママプロが復帰できるよう託児所を作りたい。私たちが現役のときには叶わないかもしれないけど、若い選手が今後、出産して復帰できる環境を選べたらいいです」。

ママプロだって、もっと挑戦したいからこそ、努力もする。

「子ども中心になるので練習時間も減るし、体力も落ちるし……でも両立で大事なのは気持ちです。同じ環境のプロ同志のアドバイスは心強いものですよ」(生島)。「維持は筋トレで。週2はトレーナーをつけて。1日でも長くゴルフをしたいので」(土肥)。「家事・育児をしながら、技術・体力を落としたらあかんと格闘し続けています。でも子どもがこんなに可愛いと思わなかった。ゴルフもどっちもしたいから、ストレスにはなりません」(村田)。「ママ友とテニスをしていたので飛距離は落とさずキープできたと思う。育児が楽しくて。両立のためには、子どもと一緒に楽しむこと。子どもに育ててもらっている感じです」(福嶋)。「皆同じだと思いますが、家のことを終わらせて移動したり。でも、10人という大家族の協力あってこそです」(北田)。「主人と母にお世話になっています。体力も衰えないようにするため、トレーニングやケアなど体面にはお金をかけます」(佐藤)。「時間が限られているので短期集中できるか。どちらの両親も協力的。子育ては全然苦になりません。最近しゃべり始めた娘に、主人(谷口拓也)は、『将来女子プロだ!』と言ってます」(一ノ瀬)

さて、プロ部門で優勝し、賞金70万円を獲得したのは佐藤靖子。

「私、コンペの幹事と同じで、勝ってはダメでしたか(笑)。もちろんツアーに出られるうちは出たい。刺激をもらえます。でも、この大会もスポンサーさんがいてくれる限り続けたいですし、多くの企業に興味を持っていただき、いろいろな地域でできたらいいですね」

“主催者”優勝の佐藤靖子

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月20日号より