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【さとうの目】Vol.266 若手躍進とパワーゲーム化「PGAツアー21-22シーズン総括」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週はPGAツアーの21-22シーズンを振り返る。

PHOTO/Blue Sky Photos

最終戦のツアー選手権は選手会長のローリー・マキロイの逆転優勝で終わり、PGAツアーの21-22シーズンも幕を閉じました。これはPGAに限らず欧州ツアーにも日本ツアーにも言えることですが、今シーズンの特徴は若手が躍進し、よりゴルフがパワーゲームの様相を強めたことでしょう。

昨シーズンは20年からのコロナ禍の影響で、下部ツアーからの昇格のないルーキー不在のシーズンでした。全米プロのフィル・ミケルソンの史上最年長優勝をはじめ、セルヒオ・ガルシア、スチュワート・シンクらベテラン勢の優勝、また初優勝にしてもジェイソン・コクラック、カルロス・オルティス、チャド・レイミーら中堅どころの実力者の活躍が目立ちました。

しかし一転して今シーズンは27人のルーキーが登場。8月のレギュラー最終戦のウィンダム選手権で20歳で初優勝を果たしたキム・ジュヒョンが加わり、実に18人が125位内でシード権を獲得しました。

また、4大メジャーの優勝者がいずれも20代であったことは史上初の出来事。さらにツアー選手権に進出した選手の平均年齢は、これまた史上最年少を更新しています。ルーキー豊作、若手台頭のシーズンだったと総括することができるでしょう。


時代の流れを反映して、今シーズンのPGAのドライバーの平均飛距離は299.8ヤード。300ヤード超の選手が、実に99人もいます。ちなみに20世紀最後の00年、平均飛距離で300ヤード超の選手はジョン・デーリーただひとり。あれから20数年の歳月を経て、21世紀は確実に300ヤードが普通の時代になりました。

20代の若手の台頭はタイガー・ウッズの活躍とも無縁ではありません。タイガーが初めてマスターズを制し、4勝を挙げ、初の賞金王に輝いたのが97年です。その後、ゴルフ界は全盛期を迎えたタイガーとともに発展を続けました。この時期にゴルフと出合った子どもたちが今の20代の選手たちで、ジュニアの競技人口が増え続けるなか、勝ち上がってきた選手たちでもあるわけです。

さらに言えば社会を取り巻く環境も変わりました。IT技術の発展によるトラックマンに代表される機器の普及でゴルフの数値化が進み、またSNSの発達はスウィングはもとよりフィジカル、メンタル、マネジメントに至るまで、一流選手のゴルフに関するあらゆる情報を入手しやすくなりました。そうした変動のなかにゴルフ界はあるのです。

さて、改めて最終戦について。70ホール目でシェフラーとの6打差をひっくり返したマキロイが年間王者に輝きましたが、そのマキロイは、家族総出で応援にきたシェフラー一家と熱いハグ。それを受けて優勝者を祝福するシェフラーも、見事なグッドルーザーでした。こうした友情、仲間意識をカマラダリー(CAMARADARY)と呼びます。今シーズンの話題をさらった新リーグ(LIVゴルフ)にはないPGAツアーの美しい光景ではないか、ということを付け加えたいと思います。

“カマラダリー”ツアー。引っ張るマキロイ!

「マキロイはSNSでこの逆転劇を『トップに立てたのが70ホール目というのはよいタイミングだったね。他のあるツアーなら52ホール目ということなんだろうけど……』とつぶやいたそう。こうして思ったことをパッとストレートに言ってしまうところがマキロイらしいですね」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月20日号より