【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.96「イップスとのつき合い方」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
実は今、プロ入りしてから最大の“絶不調”になりまして。ショットイップスです。春先に首を痛めたというきっかけもあったんです。それが2~3カ月続き、今はちょっと脱出できた感じなんやけど、「こんなんあるんや!」いうくらいひどいことになってました。
歳がいってくるとパフォーマンスが落ちてくるんはもちろんで、それはもうとっくに自覚はあるんです。でも今は、スウィングするいうこと自体ができにくくなってきた。これは驚きでした。
初めて感じたのは4月の終わりくらいのことです。首も痛めておったから整体に行ったけど治らない。要するに「老化」です。年齢を重ねると体が言うこときかんし、感覚も脳も鈍りますからね。その老化が顕著に表れた“第1回目”が来たんですわ。
今は最悪の状態からは2割くらいよくなり、この前も試合で「70」「68」というスコアが出せた。これは大きい。
プロですから賞金がかかっておるほど精神的なプレッシャーからイップスを生じる。そんななかでよいスコアで回れたんは、少なからず自信につながりました。
初めて言いますが、パターに関しては1997年くらいからちょっとおかしくなっておって、2000年頃にはもう、思い切りイップスになっていたんです。それでどうしようか思っとったときに、テレビのバラエティ番組で催眠術師が芸能人に催眠をかけて、毒針を持ったサソリを恐れもせずに、可愛いと撫でるのを見て、「コレや!」思うてね。その催眠術の先生の弟子の人が関西にいるというのでそこに行ったんです。
1回で確か1万8000円でした。それで、「イップスを何とかしてください」とお願いすると、「あなたが思ういちばん幸せな状態を思い浮かべてください」と言われ、バンビがおって小川のせせらぎがあってホワァ~みたいな光景を浮かべたら、「ハイ、これであなたはパターが大好きになりました」と言われました。
そうして翌週の試合のグリーン上の最初のパットで、ブルブルッとなりました。まあ、イップスはそうそう簡単には治りませんね。
簡単には治らずとも“あがく”。イップスも老化も同じです
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年9月20日号より