【世界基準を追いかけろ!】Vol.102 芝の状況が目まぐるしく変わる米ツアー。パッティングコーチの重要度が増している理由
目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は、試合中のパッティングコーチの重要度が増している理由について話してもらった。
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
GD PGAツアーでは、試合中のパッティングコーチの重要性が高いというお話ですが。
目澤 パッティングコーチのデビッド・オーが、今年からジャスティン・ローズのコーチとしてツアーに帯同するようになって、彼と話をしたんですが、グリーンが試合ごとに違う状況なのに、ローズが3日ぐらいでタッチを合わせてくるというんです。PGAツアーの上位選手は、グリーン上のアジャスト能力が高いと言っていましたね。
X 対応力が高いわけですね。
目澤 上り下りといった傾斜に対しての対応はもちろん、芝の性質とその対応も良く理解をしていると思います。ポアナとベントとバミューダの基本的な違いは当然わかったうえで、その芝の刈り方によって、例えばスティンプメーターで12フィート出るバミューダでも、14フィートの下りになる瞬間もありますし、逆に7〜8フィートの上りになる瞬間もある。その辺のスピードコントロールを上手くアジャストしてくると彼は言っていました。
X 芝の種類とか刈り方や散水によっては、毎試合、毎日、異なったグリーンに対応をしなければいけないわけですからね。
目澤 開催コースの地域差が激しいPGAツアーでは、ショットよりもパッティングコーチのほうが仕事になると思います。
GD フィル・ケニオンは、いつもトーナメントの最終日までいますものね。
目澤 フィルが見ているマシュー・フィッツパトリックの話を聞いたら、試合の2日目のラウンド後に話し合って3日目からラインの読み方を変えたと言っていましたね。スピードは生き物ですから日によって変わるので、パッティングのイメージの出し方やスピードの面も含めて、ものすごくコアな話し合いを試合中は毎日しているわけですよ。あと一方で、前回幹人が言ったように、風や天候の影響を受けないために、家やホテルでストローク練習をすることも大事ですよね。
黒宮 試合中にコーチがやることは、ショットに関してはある程度でいいんですよ。
X スウィングをすぐに直すことはできないですからね。
黒宮 でもパッティングは、その日のパターの状況を見て、その日にやるドリルを出したりする。ですからパッティングコーチは試合中の役割は大きいんですよね。今回の全英女子オープンはほんとグリーン上にいることが多かったですね。日本に帰る前に、グリーンのラインがわかるパーフェクトパットなどの器具を畑岡プロにも渡して、僕が帯同できない時でも自分でタッチを確認できるようにしておきました。
GD パッティングコーチの必要性はそこまで高まっていると。
目澤 僕らの学生の頃は、デーブ・ストックトンの、左手一本でハンドファーストに構えて、手首の角度を変えずに打ってヘッドを低く長く出すドリルをクラブメーカーの担当の人に教えてもらってやっていましたから、今とは格段の違いですね。
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導
X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通
週刊ゴルフダイジェスト2022年9月13日号より