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安田祐香、古江彩佳を輩出した滝川第二。“プラチナ”を育む秘密に迫った

GDライブラリ
2020.02.22

PHOTO/Masaaki Nishimoto

2019年、アマチュアでツアー優勝してプロ転向を果たした古江彩佳、オーガスタ女子アマで3位に入りプロテストを合格した安田祐香。“プラチナ世代”を代表する2人はともに兵庫県の「滝川第二高校ゴルフ部」出身。現在も梶谷翼、橋本美月ら有力選手が数多く在籍する「滝二」ゴルフ部。その強さの秘密に迫った。

「希望に起き 努力に生き 感謝に眠る」
この部訓に“滝二”の強さが集約

部訓その1「希望に起き」
~自由は強い。自由だから考える~

「こんにちは!」。正門をくぐると、背後から聞こえる元気な挨拶。滝川第二(通称“滝二”)ゴルフ部の伝統らしい。「先輩を見て自然と身につくみたいです」と優しそうな笑顔で話をしてくれるのは、ゴルフ部監督の角谷真吾氏(53)である。

教師生活31年、“滝二”ゴルフ部歴18年。国語の先生で、現在は入試担当、広報室長でもある。ズバリ、強さの秘密を聞くと、

「今、チーム全体にいいリズムができています。安田、古江という憧れの先輩たちがいて、仲間には日本女子アマランク1位の梶谷翼や、先日米ジュニアオレンジボウルで優勝した橋本美月らがいて、ホンマにスゴい選手をいつも肌で感じられる。情報交換もできるし、この子が頑張っとるんやから私も、となる。安田と古江も切磋琢磨し合っていましたが、それはずっと続いてますよ」

古江彩佳にも強さの秘密を聞くと

「(ゴルフ部は)自由! 自由なぶん、サボることもできるけど自分に責任がすべてくる。やったぶん結果は返ってくることを学んだ」と、「自由」というキーワードが何度も出てきた。実は角谷氏、以前の学校で12年間、バレーボール部の監督だったが「勝つことだけにこだわって練習も指導も厳しかった。でも勝てなかった」という。

「“滝二”でも最初は怖かったはず。でも、才能ある子もいるのに団体戦で勝てない。ふと、僕が勝つことにガツガツしすぎとるんちゃうかな、と思った。スコアがいくつでも『お前ら頑張っとるわ』と言うと、逆に安心して頑張れる。負けても『向こうが上や。悔しい気持ちは持ち帰って、また次な』と言うと、次の日結果が出る(笑)」

古江のプロ転向会見時の角谷監督。「先生はアレコレ言わないし、自由にさせてもらいました」(古江)「自由だからこそ、考えるクセが身につくんです」(角谷)

2017、18年、ゴルフ部の女子が団体で連覇。結果から“自由になる”と強くなれる。

「もっと拘束してほしいと言われることもあるけど、ゴルフって自分の考えで自分でやらんとあかん。たとえば野球はサインで全部管理されてるけど、ゴルフは試合でそうしたらアウト。それに判断力も大事。うちの子は判断が早いんです。ぽんぽんと歯切れの良いゴルフをします。安田や古江も悩まんでしょう。もちろん、何か悩んだら相談はしろと言ってはいます」

ミーティングは頻繁に行い、「部訓」は常に伝えるという監督。

「目標を持つという希望、そして努力し結果が出たら最後は感謝しなさいと。春合宿で、最初に昨年の反省と今年の目標を出してもらう。不思議と皆、叶うんですわ」 

主要大会だけでなく、小さな試合なども使い、皆にチャンスを与えている。

「何かしら経験をすると、子どもたちの雰囲気が変わってくる。1人のシンデレラストーリーだけでなく、皆にいろんなストーリーを作ってほしいんです」

部訓その2「努力に生き」
~よい環境はみんなでつくる~

古江はじめ、多くの部員が“滝二”のいいところとして挙げたのは「練習環境が整っている」こと。

「カリキュラムを言うと、うちにはゴルフ部の子たちが入るC(クラブ)コースがある。硬式野球部、サッカー部、陸上競技部、卓球部、剣道部、ゴルフ部、吹奏楽部、7つの部活強化が目的で、土曜日や6時間目を使ってクラブ活動に取り組めます。以前は、メンタルトレーニングや栄養学などゴルフに関係する学習もしていましたが、今はラウンドに絞っている。子どもが一番伸びるのは、やはりラウンドです」という角谷監督。

「毎日のようにラウンドできると、スコアが気にならず、テーマを決めて回れる。たとえば、パーオンさせずに花道に落とし、そこから寄せてパーを獲ることを徹底する。やってみてどこがダメだったか分析すると、やっぱり寄せの練習せなあかんなあ、となるんです」

月火木金の5時間目が終わって、近くの大神戸GCや六甲国際GC(パブリック)でハーフラウンド。六甲国際ではアカデミーの練習場を使わせてもらったり、土日はキャディのアルバイトをした後、本コースを回らせてもらったり。

「ラウンドは無料にしてもらっています。頑張ってお願いしました(笑)。アルバイト代は本人が試合の遠征費に使ったりしています」

コース以外にも「東北福祉大学のミニチュア」(角谷)という、校内練習場・トレーニングルーム、近所の特約練習場(高塚ゴルフセンター)が用意されている。

「5つの班に分けて、日によってABC班はラウンド、D班は練習場とトレーニング、E班は校内でアプローチ練習と外周ランなど。週に3回はラウンドできます」

練習メニューも「自由」だ。全員が同じ練習をすることはない。以前は監督が考え伝えていたというが、

「結局、頭で考えて動くことが一番大事です。これが努力につながる。『試合に出たら自分で何が足らんか、何が大事かわかったやろう』と聞くと『はい、わかりました』と。飛距離が足りなければ、走って体を作って練習する。朝練は任意ですが、皆、学校の外周を走ったり校内練習場でアプローチしたりしていますよ」

「自由」でありつつ、しかし部をまとめ、部員たちを導くために必要なことがあると角谷監督。

「それはやはり『チーム力』なんです。僕は団体戦を重視しています。中学まで1人でやってきた子も多いけれど、ここに来たら“滝二”というチームになる。最初は仲の良し悪しもあるし信頼関係もない。でもそういう状態だと団体戦に勝てないのがわかります。チーム力がつくと愛校心になる。すると学校行事も楽しく、学校が大好きになる。だんだん勉強もするようになるし、ゴルフの練習も頑張れるし、結果につながる。自信もついてきます。最終的には滝川第二高校のゴルフ部でよかった、と自慢できるようになるんです」

準備されたよい環境を、皆でさらによいものに作り上げていく。居心地がよいと、楽しくなる。そして頑張れる。それが結果になり、個人とチームの底上げになる。

「個人の祝賀会も行いますけど、団体優勝したときの祝賀会はとくに派手にやりますわ。結婚式をするようなお洒落な場所で(笑)」

部訓その3「感謝に眠る」
~支えてくれる方々のパワーも取り込む~

角谷監督は、教育にもゴルフはとても有用だと語る。

「よく皆に言うのは、大人の社会に足を踏み入れてるのはお前らだけやと。ほかの競技は、高校生が試合をしているという暖かい目で見られるけど、君らの舞台は一般の人もいるコースや練習場、一挙手一投足を皆に見られてる。大人レベルで行動をせなあかんと言っています。実際、Cコースの先生に、ゴルフ部はしっかりしていて心遣いが素晴らしいと言ってもらえます。もちろん、高校生活はしっかり楽しんでほしいですよ」

その教えどおり、“滝二ゴルフ部”を見ていると、皆でゴルフを楽しんでいるのが伝わってくる。

「今の子はドライなところがあるけれど、いつも何とか喜ばせたいと思っています。だから『全国大会では何したい?』と聞いたりするんです。ゴルフとは関係ないことです。水鉄砲したことも(笑)。生徒同士でも誕生日のサプライズをしたりしていますよ。でもね、こういうことができるから安田や古江をはじめ、オンオフの切り替えをしっかりできる。楽しむときはめっちゃ楽しんで盛り上げて、僕らもノリノリで。試合になったら切り替える。あまり笑うなと。このメリハリはすごく大事です」

安田や古江のメンタルの強さは、このへんにあるのかもしれない。

「それに、飄々としてるでしょう。僕らが結果などで追い詰めたりしないのもいいんやと思います。成績が出ない子は親の顔色をずっと見てる。そういうときは親御さんと話をして『僕に預けてください』と言います。うちの部の規約は、一切口出ししないことなんです」

角谷監督は、遠方から入学する生徒のために、下宿も紹介するという。

秋定喜代子さんの大きな家に下宿中の岡田主将と野木萌名さん(高1)。自家製の食材が食卓に並び健康を支えてくれる。「家族みたいなもの。毎日楽しいです」

「校内に男子寮はありますが、女子はないので。近くの農家の方に4人預かってもらってもいます。それに、大学やプロコーチともつながりをしっかり作るようにしています。親御さんはやっぱり期待しますしね。その子に合うんやないかと思う人を紹介します。中島(敏雅)アカデミー、青木(翔)コーチ、坂田塾などです」

周りも巻き込んで、楽しんで、パワーにする。だからこそ、最後には感謝の気持ちが大事だと角谷監督。

「ゴルフ場や練習場、応援してくださる方々への感謝の気持ちは、私も生徒も常に感じています」

「部訓」を胸に、今夏行われる全国高校選手権(緑の甲子園)団体戦で、男子は初優勝、女子は2年ぶり3回目の優勝を狙っている。

練習場でもコースでも、必ず皆でそろって挨拶する

週刊GD2020年2月25日号より