「準備に始まりはなく、終わりもない」セントアンドリュースのグリーンキーパーたる誇り
ゴルフ発祥の地セントアンドリュースオールドコースが舞台となる今年の全英オープン。オールド・トム・モリス以来、9代目にあたるヘッドグリーンキーパー、ゴードン・マッキー氏が、コースを維持し守るための努力を米ゴルフダイジェストに語った。
「これ以上の仕事はありません。地球上に私ほど誇り高い人間はいないでしょう」とマッキー氏。その視線の先には、14世紀に羊飼いたちが棒で小石を打って野うさぎの巣穴に入れる遊びに興じたころの風景が見えているかのよう。
1873年に全英オープンが初めてセントアンドリュースで開催されてから今年で30回目。「メジャーの準備は決して始まりません。そして終わらない。1870年代からグリーンキーパーチームは次の全英オープンの準備をしてきたのです」。
「今日我々はオールド・トムが行っていたのと同じことを現代的な方法で行っています。歴史を維持し、それを変えないために」
全英オープンが開催されるオールドコースには112個あるバンカーのすべてに呼び名があり、1個たりとも勝手に動かすことはできない。しかしR&Aと協議し、砂の厚みを変えることはできる。今回の全英では、「砂を少し薄くしたので、バンカーをいかに攻略するかが鍵になるかもしれません」。
昨今は環境に配慮し、水や肥料、燃料の削減に取り組んでいる。「芝刈り機の充電は、太陽光発電。水も雨水をタンクに溜めて循環させています」。今回ソーラーパネルとバイオ燃料発電機で敷地内すべての電力をまかなっている。コースを囲む砂丘の侵食を防ぐため、近隣の一般家庭から使用済みのクリスマスツリーを回収して加工。それを砂浜に埋めて海岸線を守る努力もしている。「オールド・トムも背中を叩いて“よくやっているな”と言ってくれると思います」。
誇り高きグリーンキーパーの仕事に終わりはない。
週刊ゴルフダイジェスト2022年7月26日号より