【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.87「ゴルフはエンターテインメントか」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki
この前、若いキャディさんに「ゴルフはエンターテインメントですか?」と質問されたんです。
なかなかいい質問やと思いました。僕は「エンターテイナーがいたら、エンターテインメントになるんですよ。エンターテイナーがいるかいないかの話です」と答えました。
まあ、タイガー・ウッズとか、ああいうエンターテイナーがいるからこそ、エンターテインメントになっておるわけです。ゴルフをしてる人から見れば、帝王と呼ばれるジャック・ニクラスとか、その前はベン・ホーガンとかがいたわけです。
その時代その時代で、エンターテイナーがいた。だからお客さんが何万人も来て、あんなに声をかけて、追いかけていきます。それは「魅了してる」ってことですから。人を惹きつける力っていうのがあると、エンターテインメントになっていきます。でもプロゴルファーっていうのは、それを目指さないとダメですよね。
アイドル的な要素でもエンターテインメントはできますけど、アイドル的なものっていうよりも、やっぱりゴルフで魅了しないとダメですよ。
劇場でやってるわけやないんやから、ゴルフコースでやってるんですから。ゴルフコースで、人を魅了するゴルフができるような人がいれば、エンターテインメントに十分なる。
ミュージシャンが飲み屋で演奏しておっても、一人のお客さんが「ああ、ええなあ」と思ってくれたら、それでエンターテインメントになるわけです。人を酔わせられる曲を演奏できたら。
プロゴルファーもアスリートや言う人もいます。そういう人はゴルフの歴史を勉強してほしい(笑)。そりゃアスリートで体鍛えて、陸上選手のようにやるっていうのもいいけどね。また違う面もあるわけです。懐にウイスキー入れて、グワーッと飲みながらやってるオッちゃんもおったんやから。そりゃアスリートと、正反対の方向でしょう(笑)。
今の女子プロなんかは人気あるけど、人のプレーはあまり見てないですよね。人のことは人、自分のことは自分で。台本を見ながら演技しておるみたいな感じのところがある。そういうのは、僕から見たら、「エンターテイナーなんかな~?」と、クエスチョンマークが出ておるところです。
「人を魅了するゴルフができるプロがおるからエンターテインメントになるんです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年7月12日号より