【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.85「ダメだと言われていることをやってみる」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Yasuo Masuda
僕なんかは、当たりが悪いときは、次はこうやってみよう、次はああやってみようと毎回違うことをやるんです。そういうことをしたいんですよね。そして2回くらいやったら、これはダメやとわかります。
毎回同じことをやって慣らすことはしない。それより、探すのが好きです。球なんて、もともと当たらんもんやと思うてたら気が楽ですよ。
前のホールでティーショットを失敗して、セカンドをダフって、サードのアプローチもダフる。次に構えたとき、ここでもダフると思うのは普通です。過去が未来を決めてるみたいなところがあるからです。でもまったくわからんのですよ、先は。ひょっとしたらすごい球が出るかもわからない。だから、フラットな気持ちでやったほうが「当たったやん!」となる。そっちのほうが思考回路としてはいいと思います。
過去のように未来はならない。でもなったらなったでいいじゃないですか。そうやって思えたらね、面白くなってきます。
この前、何かの本で読んだんですけど、顕在意識と潜在意識があって、頭のなかで活字で考えているのは顕在意識なんです。そして、イメージが潜在意識です。だいたい、イメージだけでゴルフができたら一番ええんですよ。自分が出していることやからね。考えては出してない。見て勝手に出てくるもの。プロでもイメージができないことがあるけど、それは顕在意識が潜在意識を抑えてしまっているんです。
だからね、たとえば一度、世間ではダメだということやってみたらええんです。たとえばわざとスウェイさせるとか。それで当たったらどうするねんと思います。
僕はそういうのがすごく好きで、やったらいかんこと、頭をズラすとか、体を回さないとか、世間が勧めることとまったく逆のことをいっぱいやります。それでも当たる。頭の“活字”は関係ないことがわかるやないですか。それでもう大きな進歩です。頭から変な顕在意識を排除できるから。
レッスンは怖いですよ、平均的にこれがいいと言ってるだけです。だから僕、レッスンなんか簡単にできへんって、最近すごく思ってます。
「皆もう、思い込んどるからね。世間が絶対NGというのをやってみるのが面白いんです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年6月21日号より