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【わかったなんて言えません!】Vol.80 石坂友宏 #4「生きた球を打つ」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今回のゲストは前回に続き、若手の注目株・石坂友宏。プレースタイルが似ていると感じる2人だが、恩師にもどことなく共通点があるようで……。

TEXT/Yuzuru Hirayama PHOTO/Hiroaki Arihara

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/石坂友宏

1999年生まれ、神奈川県出身。19年プロ入り後、何度も優勝争いに絡み、昨季賞金ランク17位。今後の活躍が期待される若手。爽やかな笑顔も印象的

前回のお話はこちら

時松 そういえば、これまで石坂くんと2人でラウンドしたことはなかったね。試合ではあるけど。

石坂 試合だったので、あまりお話できませんでしたね。ですけど、自分とプレースタイルが似ている、と言ったらおこがましいですけど、やりやすかったというか、参考にさせていただくことが多かったなと。特に、パッティングの上手さは。

時松 石坂くん、パッティングが得意そうだよね。

石坂 アマチュア時代は自信があったんですけど、プロになってからは悩むことも増えました。昨年の日本シリーズJTカップのときに、引っかかるな、と感じて。それを修正するとプッシュが出だして……。時松さんは、パッティングで悩んだりされないですよね?

時松 考えすぎてプレーが遅くなるのもイヤだしね。高校1年生の頃、横尾要プロに、グリーンだけじゃなく、全体的にプレーが遅いと怒っていただいて。僕の場合、テークバックも遅いしね(笑)。プロのツアーに出始めた頃、同じ日大出身の原口鉄也プロにその顛末をお話ししたら、横尾プロのところへ行ってあらためて謝罪する機会を作ってくださって。もうそれ以降は、プレーファスト!(笑)

石坂 僕も先輩に怒られました。もっとルーティンを短くしろと。

時松 その後、横尾プロと回らせていただいたとき、早くしなきゃと思って、グリーンで横尾プロがマークする前に打っちゃって。今度は「待て待て、早すぎる」と。頭が地面につくくらいお辞儀をして謝りました(笑)。


石坂 確かに、長い時間考えても、あまりいいことがないのはこれまでの経験上わかってはいるんですよね。だからプロになってからは特に、時松さんのおっしゃるとおり、あまり考えすぎずに打つ、というのを実践しています。

時松 石坂くん、パッティングはイメージを重視するタイプ?

石坂 はい。ラインと距離感を、何度もイメージして、その通りに打つ、という感じです。パッティングの練習は、そのイメージ通りに打てるようにする反復練習をしています。

時松 だから、ルーティンにあまり時間をかけてしまうとよくない面もあるのかな。

石坂 後ろからラインを読んで、構えて、素振りをして、ボールを見て、すぐに打つ、ということを心がけています。余計なことをしないというか。結果的に、アマチュアのときより、打つのがかなり早くなりました。特に、ピンチだなと感じたときにこそ、シンプルに早く打つようになりました。迷うと怖さも出てきますし。

時松 パッティングも、コーチに幼い頃から教わってきたの?

石坂 小学4年生のときに、たまたま出会った鈴木隆コーチと、ずっと一緒にやらせていただいています。いま90歳を超えていらっしゃるんですけど、ご自宅のマンションに泊めていただいて、プチ合宿させてもらったりしています。時松さんのコーチもご高齢と聞きましたけど?

時松 篠塚武久先生は76歳。ほんと、今も教えていただけていて、ありがたいよね。

石坂 はい、よくプロになってコーチを代えようとは思わない? とか、倒れられてしまったらどうするの? とか聞かれるんですけど、新しいコーチにお願いしようとはまったく思わないです。

時松 うん、それも同じだね。

石坂 普段は、まったく何も助言はくれないんです。ただ、僕が不安になったり、迷いがあったりしたとき、鈴木コーチに後ろに立って見てもらい、ほんの一言をいただくんです。パッティングなら、「今日は向きが甘いね」とか。ショットなら、「トップが浅いね」とか。とにかくおっしゃるのが、「生きた球を打つんだよ」と。

時松 生きた球?

石坂 先生流に、元気にプレーしなさい、という励ましでもあると思います。先生から一言いただくと、不思議と不安や悩みが消えるというか。なので、僕は今まで一度も、イップスにも、スランプにも、陥ったことがないんです。すべて1日か2日で直ってしまうので。

時松 ゴルフって、いくら悩んでも答えが見つかるとは限らないしね。

石坂 そうですよね。今は失敗することもまた勉強になるかなという思いで、悩みすぎずにやっています。こうしたらいいんじゃないかといろんな方から言ってもらえることもあるんですけど、僕はまず自分で考えて、それでも駄目ならコーチに見ていただいて、というスタイルを変えるつもりはないですね。

自分でまず考えることです!

師匠・鈴木隆氏と。「考えすぎは迷いと恐れを生みますが、まず自分で考えて、ダメならコーチに助言をいただきます」(石坂)

週刊ゴルフダイジェスト2022年5月24日号より