Myゴルフダイジェスト

【さとうの目】Vol.247「メンタルが成長」香妻陣一朗「和製ポール・ケーシー」桂川有人

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週は、国内男子開幕戦で優勝争いを演じた2人の選手に注目。

PHOTO/Tadashi Anezaki

国内開幕戦の東建カップは、今年の日本ツアーの展開を象徴するような大会となりました。というのもトップ10フィニッシュした選手は合計15人。うち13人が日本人で、全員が20代、しかも8人は25歳以下というフレッシュな大会となりました。世界的な潮流として、今ワールドランクの上位を20代が占めています。その流れは確実に日本にも表れているようです。

それを象徴する選手のひとりが、プレーオフで惜しくも香妻(陣一朗)に敗れた桂川(有人)です。プロ宣言した20年、コロナ禍で開催された特別QTで9位に食い込み、狭き門から21年の出場権を得ました。21年に石川遼チャレンジで下部のアベマツアー初優勝を果たすと、今年2月のSMBCシンガポールオープンでも2位に入り、全英の出場権を獲得しています。桂川選手については、同組で回ったことのある小林正則の証言が、そのゴルフを見事に表現しています。

「まるでポール・ケーシーみたいだ」

身長は167㎝と日本人でも小柄なほうですが、軸が太く、力感がなく強振しないのに、すべてのエネルギーをボールに伝え力強く飛ばします。スウィングは安定していて、再現性が高く、なかでもパーオン率の高さは際立っています。

ボクの印象も「外国人選手っぽいな」です。来日した外国人選手が、慣れない日本のコースで上位にくるのは、例外なくパーオン率が高いからで、ショートサイドに外してボギーにすることはまずありません。エネルギー効率の高いショットの精度に加え、グリーンを広く上手く使える選手。世界に羽ばたくことができる選手のひとりであることは間違いありません。

さて、その桂川を振り切ったのが27歳の香妻選手です。20年の三井住友VISA太平洋マスターズ以来の2勝目。昨年、2位が3回で、当人は「もう優勝できないのでは?」と思った時期もあったそうですが、ボクから見れば着実に力をつけ、確実に上位に入って優勝争いのできる選手に成長したと映っていました。

彼はゴルフそのものよりも、メンタル面での成長に目を見張ります。初優勝までは、優勝争いをしていても最終日に崩れてしまっており、それは本人も認めていて、「絶対に勝つんだ」という強い気持ちで臨むことをテーマにしてきたようです。

東建でも16番でボギーを叩き桂川と2打差となった時点で、流れ的に「香妻の優勝はないな」と多くのファンは感じたことでしょう。しかし、そこから連続バーディ。そしてプレーオフでは7mをねじ込み「シャー!」という大声とともに、あのガッツポーズです。2打差をつけられた17番のティーショットでは、イライラした様子も弱気な表情も見せず、普段と変わりなく振った姿が印象的でした。時折ブレるショットが課題でしょうが、この2年で強くなった気持ちで、これからも名勝負を作ってくれる選手であることは間違いありません。今年の国内男子ツアーも楽しみですね。

強いメンタルvs精度の高いショット

「寄せとパッティングの技術、そして強い気持ちで優勝を手繰り寄せた香妻(左)。これに対し桂川(右)は、精度の高いショットでの高いパーオン率でバーディを重ねました」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月26日号より