Myゴルフダイジェスト

【私のマスターズ観戦記】#1「神聖な場所でパトロンに迎えられて」

ゴルフの最高峰の試合「マスターズ」。この夢の試合を観戦するためにオーガスタを訪れた4人のゴルファーに、オーガスタでの出会い、気づき、旅の思い出を聞いた。1人目は、2017年のマスターズを観戦した千葉祥子さんの観戦記。

PHOTO/ご本人提供、Tadashi Anezaki、Kiyoshi Iwai

「パトロンがファミリーのように温かかった」

千葉祥子さん(平均スコア88・ゴルフ歴20年)

2017年、S・ガルシアがメジャー初優勝を挙げたマスターズは、コースを彩る花もなく、大雨でパー3コンテストが史上初の中止となった異例の大会だった。

マスターズは同じコース開催で、それを毎年テレビで見ているから馴染みがある試合。いつか行きたいと思ってはいましたが、この年、いざ行こう! と決めはしたものの、行くのが大変だと知らなくて。結局ツアーに入りました。開催まで1カ月もない時期です。

コースに入った瞬間、涙が出るかと思いました。あの世界に足を踏み入れ、あの芝生の上に立っている自分というだけでもう、ハッピーで(笑)。神聖な場所に来た感じがしました。神社の鳥居をくぐると空気がガラッと変わりますよね、そういう感じです。

私は水曜日と初日(木曜日)に行きましたが、練習日は大雨で3ホールしか見られなかった。でも、雨のおかげで、偶然行っていた小中高の同級生とご飯を食べる時間ができたのはよかった。ほかにラッキーもあって、初日、ゴルフジャーナリストの舩越園子さんの解説付きで松山英樹くんに付いてハーフを歩いた。ツアーで夕食をご一緒する予定が、変更になってしまい代案でやってくれたんです。ホールや選手の説明はもちろん、「あそこにいるのはリッキー・ファウラーのフィアンセとお爺ちゃん」なんて面白かったです。あの年の松山くんは調子が悪かった。グリーンをダイレクトオーバーしたり、今の松山くんならピンにビシビシくるのかなあと思います。

コースは話には聞いていたけど、アップダウン、傾斜がきついので歩くのが結構大変で。でも、椅子を置いて自分の場所を確保できるシステムなんかすごいと思いました。そしてパトロンが“ファミリー”のようで。私は背が低いので、後ろのほうで見えないと思っていたら、「前に行け」とどんどん出してくれる。日本のツアー観戦ではありえないことがたくさんあって……すべてに愛を感じました。10番・パー4のティーイングエリアからの風景も好きですね。打ち下ろしで、なんだか雄大で。

最終日は、帰国後にテレビ観戦。1人だけサインをもらったのがジャスティン・ローズで、そのキャップを握り締めながら見たんです。その後で18番グリーンの写真を見たら私の後ろにガルシアが! プレーオフした2人と偶然関わっていたのはすごいですよね(笑)。

ローズとのプレーオフを制し勝利したガルシア。「練習日、私の写真の背後に写っていたのがガルシアで、たった1人サインをもらえたのがローズだったんです」。キャップにローズのサインと、アーニーズ・アーミーの缶バッジ。この年にしか手に入らない思い出が形で残っている。「時間もなく1人にしかサインをもらえなくて。私って結局、運がいいんですよ」

印象深いのは初日のスタートホール。パーマーが亡くなったばかりで、J・ニクラスとG・プレーヤーがティーオフして……感動的でした。

実は私の夢を書き綴るリストに、「次はマスターズの決勝に行き、松山くんが優勝するシーンを現地で見る」と書いていた。それが去年、衝撃的な優勝で。リアルではないけど、テレビで見たから、まあいいかなと今は思っています。

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月19日号より