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【インタビュー】選手会長・谷原秀人<前編>「ただ上手くなりたいという気持ちだけ」スウィング改造を止めない理由

今年から日本ゴルフツアー機構(JGTO)選手会会長を務める谷原秀人。昨年は5年ぶりの勝利を挙げツアー通算16勝としたトッププロでもある。不屈の43歳に、戦い続ける自分のゴルフについて、名実ともに引っ張ることになったツアーについてじっくり聞いた。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Tadashi Anezaki

谷原秀人
たにはらひでと。1978年広島生まれ。瀬戸内高、東北福祉大を卒業後、01年プロ入り。05年米ツアーに、17〜19年は欧州ツアーに参戦。20-21シーズンから日本を主戦場にしている。日本ツアー通算16勝

自分がこうなりたいという動きに
どれだけ近づけるか

谷原秀人が振り返る20-21シーズンは、「まあまあでした。2勝できたので最終的にはよかったと思います。それまでずっとスウィング改造に取り組みながら、10月の『ISPS HANDA』くらいからそのスウィングがようやく固まってきた感じでした。そこからはあまり不安はなかったですね」。

確かにISPS以降、5位タイ、7位タイ、優勝(三井住友VISA太平洋マスターズ)、20位タイ、欠場、優勝(日本シリーズJTカップ)の好成績だ。

谷原は、常にスウィング改造に取り組み続けてきた。

19年からは吉田直樹コーチのもと、考え方も含めて変えてきたという。グリップからアドレスの位置までいじったそうだ。

「グリップは基本フックに。そのほうがつかまるので。当たらない、当たりが悪いというのは常にありましたが、力の伝え方を自分でもしっかり理解しながら、こういう動かし方なのかと自分で思考錯誤し上手くつないでいく感じです。取り組み方も何パターンかあるので、時間とともに変えていく。今やっているのはこれだけど、できたら次はこれだよねと、本当に少しずつ動かしていく。距離は落とさないよう、常に動画を見ながらクラブの動きを確認して。自分がこうなりたいという動きにどれだけ近づけるかです。どれだけいいスウィングをしても、気持ち悪く振っていると全然ダメですからね。たとえば皆さんも、素振りでは綺麗に振れるはず。ボールも見てないし、どこに飛ばそうとかも考えてないからいい動きができる。でも、実際にボールを見るとなかなか……それでも、素振りで気持ちいい部分は自分に合った動きだと思うので重要だと思います」

不惑を超えてのスウィング改造、大事な感覚は失われないのか。

「感覚が消える部分もありますよ。それに、こう動かして打ったらこういう球が出るという感覚も、自分のなかではありますけど、それと真逆の球が出ることもある。でも、その感覚を頭に入れながら、ここまでやるとこういう球か、というように感覚とスウィングの感じを照らし合わせていくんです」

流行りは追わない
目指すのは“再現性の高さ”

フェースローテーションを抑えたり、シャローイングの動きを取り入れたり、いわゆる流行りのスウィングは意識しているのか。

「しょせん流行りです。意図的にクラブを寝かせるように頑張ってもその人の感覚に合う合わないがある。基本的に日本人は、前腕のほうが長く、肩からひじにかけてが短い人が多い。すると右ひじを前に入れてシャローにする動きはしづらい。欧米人は逆に肩からひじの長さがあるのでやりやすい動きです。そういう根本的な仕組みも知っておかないと。皆がタイガーやローリーにはなれません(笑)。背の高さも体も違う。僕だって手本にするところはありますけど……結局、目指すのは再現性の高さです」

自分に合わないスウィングをしても気持ち悪いだけだと谷原。「クラブの動かし方や、自分のクセ、そのへんを直すのは難しいんです。でも、徐々に上手く打てるようになった感じです」。感覚と照らしながら少しずつ変えていくのだ

今もスウィング改造し続ける理由は年齢的なことか、飛ばしたいかとか聞くと、「年齢ではない。本当に、ただ、上手くなりたいという気持ちだけです。飛距離は大きく改善されたと自分でも思ってない。でも、僕らプロでも毎回調子がいいわけではないですが、調子をなるべく維持できるような、毎回感覚がズレすぎないスウィングに、前よりはなってきています」。

この変化を恐れない強い気持ちこそが、谷原が進化できる秘密だ。

「まあ結構やりきるタイプなので。一度始めたら元には戻れませんからね。昨年は上手くいって結果が出ただけで、それがなかったら『別に』という感じですよ。成功したかどうかを決めるのは自分じゃない、他人が評価すること。でも、その評価がないと、やっていくのも難しくなるんですけど」

谷原のプロとしての矜持だ。

>>後編へつづく

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月12日号より