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【さとうの目】Vol.243 谷原秀人「ガンガン変化して進化する新選手会長」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は今年から選手会長に就任した谷原秀人。

PHOTO/Hiroaki Arihara

ああなりたいな、と思う選手のひとりが、今シーズンJGTOの選手会長に就任した谷原(秀人)選手です。その戦績もさることながらボクが憧れるのは、彼のクヨクヨしない性格にあります。和製ダスティン・ジョンソン。ミスをしても打った瞬間に忘れられる能力は、この2人が世界で1、2位を争うのではないかと思います。ミスに対する諦めはいいのですが、試合そのものは諦めないのも2人に共通するプレースタイルです。

谷原は昨年、三井住友VISA太平洋マスターズ、最終戦の日本シリーズで2勝、国内ツアー通算16勝目を達成しました。43歳にして衰えを見せないのも、そうしたプレースタイルの賜物でしょう。

もうひとつボクが憧れるのが、パッティングのセンスです。パチンとよいインパクト音がして、しっかり強く打っている感じがしますが、タッチはあくまでジャスト。カップにちょうどよく届く感じで打ってくるのが特徴です。あのタッチはセンスだけでなく努力の賜物でもあるでしょう。


それにしてもあれほど大胆に、絶えずスウィング改造できるのは、そうしたメンタルの強さ、アプローチを含むショートゲームの安定感が常にあるからでしょう。練習場ではドライバーの課題に、ストイックに取り組んでいる姿が見受けられます。これは万人にマネのできるものではありません。スウィングを変化させると今まで使っていなかった部分に負担がかかり故障につながる可能性もありますし、1つを変化させると全体のバランスが変わるので他のことも変化させる必要が出たりします。結果が伴わないとやっていることに対する疑いも生じます。それでも選手は少しでもよくなる可能性があれば、数ミリの変化のために膨大な練習量を費やし、全体的なバランスを見ながら慎重かつ大胆にスウィング改造を行っていくのです。

さて、その谷原が今年からJGTOの選手会長になりました。ここ数年、若手のポストとなっていただけに、ベテランの谷原に決まったと聞いたときは、少し意外な印象を受けました。しかし彼は、選手からの信頼も厚く、男子ゴルフ界をなんとかしたいという思いも強い選手です。実はこれまで海外のいい点、日本ツアーに不足している点など、貴重な意見をくれる選手のひとりでした。副会長となった(小田)孔明、中西(直人)も、同じタイプ。ボクも理事としてすでに何度かリモート会議をしましたが、「意見のある選手の声を吸い上げることのできる組織」になったように思います。

スウィングというのは強く何かを意識しても見た目にはなかなか変わらないもの。見た目にわかるくらいの変化をガンガン投じながらも結果を出して進化を続ける。スウィング改造と同様に、新選手会長としても男子ゴルフ界にいろいろなことを投じながら若手を引っ張っていく存在になるでしょう。

「デビュー当時はクラブが少しアウトに上がり、フェードを打っていた印象。特にロングゲームに関して、地面反力、シャットフェース、シャローイング……と、常に最先端のスウィング理論を取り入れてきた谷原のスウィングは、当時から比べれば大きく変化しています」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月29日号より