【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.72「足し算のゴルフになっていませんか?」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO /Takanori Miki
オミクロン株、ほんまに迷惑な話ですな。僕ばっかりやのうて、みなさんもそうでしょうけど、気持ちが悪いから、知り合いと気軽にご飯食べに行ったりとか、すっかり減ってしまいました。
体のケアも、ユーチューブ見ながら10分間ヨガとか、ストレッチとか、そんなものしかできません。体は柔らかくしておかなあかんですから。
そんななかでも毎日ではないですけど、練習場にはよく行きます。
アプローチとか軽いのも入れて300球ぐらいです。不思議なもので、練習に行った翌日とかにラウンドすると、ゴルフの内容がパラパラになってしまうんです。
考えてみると、一生懸命やっきになって、親の仇みたいに球を打ってしまうから、おかしくなるんです。ニュートラルにゴルフができへんのです。スピードの変化を忘れてしまうわけです。
冬場のゴルフは、ものすごく条件が悪いものです。芝の厚みなんか夏場の3分の1ぐらいで、ペタペタです。芝の抵抗は少なくなるものの、あまりええコンディションではありません。そこに風とか寒さも加わります。コースによってはコーライグリーンならコチコチでツルツルです。
寒さで体の動きも悪いわけやから、ニュートラルのゴルフができなくて当たり前やのに、「練習したんやから、ええゴルフができる」と思い込んでしまうわけです。まあ若い人なら半袖でも平気かもしれんですけど、もう60歳過ぎですよ。冬場にそんなええゴルフができるわけはありません。
たとえばPWで120ヤードを飛ばす人やったら、寒い日に厚着しておれば110ヤードになります。せやのに冬という条件を忘れて130ヤードを目指してしまう。足し算しかできんのですね。これでスピード感が狂ってしまうわけです。
PWで120ヤードの人は、50ヤード、80ヤード、120ヤードと最低でも3段階の練習をしておいて、その速度の変化を感じ取れるようにするとええと思います。
10ヤード落として、20ヤード落としてと引き算のゴルフがなかなかできないのが問題です。
人が7Iを持っているところで、5Iぐらいを持ってポーンと打てたらええですね。
「冬場は現状維持ができて春を迎えられれば御の字と思わなあかんのです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年3月22日号より