【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.68「世界一の連携プレー」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO / Masaaki Nishimoto
ツアープロというぐらいなので旅は僕らにとって日常です。国内では滅多にありませんけど、海外ではトラブルもようあります。そのひとつが荷物のロストです。
ポルトガルに欧州シニアのQTを受けに行ったとき、キャディバッグは出てきたもののスーツケースが行方不明で2、3日ほど着の身着のままということもありました。
日本でもロストではないですが手違いのトラブルがありました。2015年、千葉の麻倉GCで2日間のチャリティ大会があったときのこと。大会前日のプロアマが終わった際に、僕のキャディバッグが参加しておったアマチュアの人のバッグと一緒に送り返されてしまったのです。
晩飯のときに、「なんや、オクちゃんのとそっくりのキャディバッグがトラックに積まれてたいみたいだよ」と教えてくれたプロがおりました。
しばらくして支配人から「大変申し訳ありません。手違いで奥田プロの往復便を送り返してしまいました」と電話がありました。
「どうしましょう」と言うので、「チャリティやし、ツアーやないから貸しクラブでええですよ」と言ったのです。
自宅から通っている加瀬(秀樹)さんに電話して「長尺パターのスペアがあったら、明日の朝持って来て」とお願いしました。
夜の11時近くに、バッグが住之江(大阪)の配送センターにあることが判明しました。せやけど朝8時にならんと開かんとのこと。
それが、なんとスタート40分前にバッグが戻ってきたのです。
支配人が夜通し東名を車で走らせて、住之江に向かいました。たまたま支配人の妹さんが大阪に住んでおって、宅配業者さんと協力して午前3時半から配送センターで僕のバッグを捜してくれておったのです。そこからまた車を走らせたのでは間に合わへんので車を妹さんに預けて、支配人は伊丹空港午前7時10分発の飛行機に乗って運んでくれはったのです。
羽田で麻倉GCのスタッフが待ち受けていて、9時半ごろに僕の手元にクラブが戻って来ました。
朝から事情は聞いておりましたけど、スタッフの連携プレーにはびっくりさせられました。
レギュラーのシード選手もぎょうさん出ているなかで、初日は5位タイと上々の滑り出しです。
2日目はバック9に2つあるパー5で2イーグル。逆転で優勝できました。
優勝スピーチは、「麻倉のスタッフは世界一です」と締めくくりました。
真心に感謝です!
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年2月15日号より