【2022メジャー最速予想】#4「全英オープン」番狂わせが少ないセントアンドリュース。本命はラーム。松山も期待大
若手からベテランまで、役者が揃い、今年も熱戦が予想される男子の海外メジャー。そこでPGAツアー事情に詳しい、佐藤信人、杉澤伸章、内藤雄士、進藤大典の4人がどこよりも早くメジャーの戦いを予想。最後はセントアンドリュースが舞台の全英オープン!
TEXT/Kenji Oba
全英オープン 2022
セントアンドリュース・オールドコース/7月14日(木)~17日(日)
前回は2015年に開催されザック・ジョンソンが優勝。本来のローテーションであれば5年後(2020年)の開催だったが、全英オープン150回目に合わせて21年に変更。さらにコロナの影響で22年に延期となった。1873年の初開催以来、今回で30回目
――最後は全英オープンです。また締めくくりとして、松山選手を含めメジャーで日本人が勝つ条件を教えてもらえればと思います。
内藤 毎年欧州ツアーを開催しているコースなので、欧州勢が有利だろうし、勝ってほしい選手という意味も込めてローリー・マキロイ、トミー・フリートウッドらの欧州勢に期待したいよね。実力的にはジョン・ラームが本命でしょうか?
佐藤 でも、全英になるとセントアンドリュースで欧州勢が勝ったのは、90年のニック・ファルドが最後で、以来5大会、31年間、勝っていません。僕も00年にプレーしましたが、全英開催コースのなかでは天候が荒れにくく、コースも広く、比較的やさしいとされてます。
内藤 言われてみると確かにそうですね。コブに当たってどこに転がるかわからないといったアンフェアが少なく、番狂わせのないコースです。
進藤 スコアが出るコースなので、勢いのある若手が有利だと思います。ベテランはときに経験が邪魔をすることがありますから。
杉澤 僕はザンダー・シャウフェレ。18年のカーヌスティでも優勝争いをしていてリンクスとの相性もよさそう。もうひとりは風のなかでのボールコントロールが上手いジョーダン・スピースの復活を期待します。
内藤 スピースには大賛成。あの玄人受けするスウィングは、見ていてカッコいい。それとマキロイにも勝ってほしいし、フリートウッドのメジャー初勝利も見てみたい。ルイ・ウエストハイゼンは10年の全英で勝っているけど、その後メジャーでは2位が6回。去年は全米プロと全米オープンが2位で、全英が3位。全英に限らず、メジャーのどれかで勝たせてあげたいよね。
杉澤 それって予想じゃなくて、願望じゃないですか(笑)。
内藤 予想となると一番可能性が高いのは、やはりラームなのかな。
佐藤 意外と思われるかもしれないけど僕は松山選手を挙げます。
進藤 どうしてですか? 英樹は「全英だけは勝てる気がしない、リンクスは嫌い」と言っています(笑)。
佐藤 確かにそうなんだろうけど、内藤さんが言うようにセントアンドリュースは番狂わせの少ないコース。全英のなかで松山選手が勝てる可能性が一番高いコースだと思うんです。それに将来を見据えたら松山選手は十分にグランドスラムが狙える選手。最後に苦手な全英を残すのはプレッシャーがかかる展開になってしまいます。セントアンドリュースでの大会は5年後、10年後を待たないといけなくなる。だからこそ今回はぜひとも優勝を狙いにいってほしい。もちろん願望も入るけど。
――ほとんど選手の名前が出揃ったところで、メジャーで勝つための条件を教えてください。
杉澤 内藤さんを前に言うのもおこがましいんですが、僕はセカンドショットの距離感、とりわけアドレナリンが出たときの距離感だと思います。とくにメジャーで、まして優勝争いとなればなおさらで、アドレナリンが出て普段より飛びすぎることが起きますよね。
佐藤 ええ。自分でも驚くほど飛んでしまうことがあります。
杉澤 実は以前、マスターズでこんなシーンを目撃しました。それは15番のパー5、残り180ヤードの2打目を打つ前の選手とキャディのやりとりです。普段であれば7Iの距離で、練習ラウンドでは8Iで手前の池につかまったそうです。ところが試合になって、7Iを手渡すキャディに対し、選手は8Iを要求して譲りません。2ヤードでも短ければ、池につかまる状況です。しかし選手が8Iで打ったボールはベタピンでした。後にこの選手はマスターズのチャンピオンになるんですが、この距離感こそがメジャーで勝つ絶対条件ではないでしょうか?
進藤 それって18年の英樹と僕じゃないですか! そのやりとり、「ほらみろ」って言われたのが、しっかりマイクに拾われ、日本でも生中継されていました(笑)。
杉澤 一度、飛んでしまうと次のショットに不安が生まれ、それが調整できずにショットからアプローチまで乱れてしまうのが、勝てない選手のパターンです。
内藤 実はその距離感というのは、振れてきちゃったときのスピン量をコントロールする技術なんです。もっとわかりやすく言えば“ふけ球”“逃げ球”を打つ技術。これがタイガーは抜群に上手いんです。具体的にはインパクトでフェースをシャットに入れず、ややスティープにカット気味に打つ技術ですね。
杉澤 松山選手が優勝したマスターズ最終日の18番は、ふけて右のバンカーに入れましたが、縦の距離は合ってました。
内藤 あの状況で左は完全にアウト。ZOZOの18番も似たような状況でしたが、右に“逃げ球”を打つ技術が高いんです。
進藤 今の話を聞いて思い出したのが、英樹のデビュー当時。そんなに振ったら壊れると多くの人から言われました。しかし英樹は合わせるのではなく、振り切ることで体のなかに距離感を作っていったということでしょうね。
杉澤 とかく日本の選手が海外に出ると、飛距離や筋力アップに目がいきがち。でも振り切っても飛ばない、距離感の出せる“ふけ球”“逃げ球”の技術の習得は、これから世界を目指す日本人には新しい視点のような気がします。
内藤 地上戦の多い全英であっても、ボールを止めるスピンコントロールの技術は必要です。なにより自分のなかにアドレナリンが出たときの距離感があれば、自信をもって堂々と戦えますからね。
佐藤信人
高校卒業後米国に渡り、ネバタ州立大ゴルフ部で活躍。帰国後プロテストを受験して合格。02年日本ツアー選手権などメジャー3勝、通算9勝。18年からJGTOの広報理事を務める
杉澤伸章
横田真一の専属キャディとしてキャリアをスタートさせ、02年から丸山茂樹の専属キャディとして渡米。現在は若手育成やゴルフ人口増加のために講演会やテレビ解説など多方面で活躍中
内藤雄士
日本大学ゴルフ部在籍中に米国ゴルフ留学し、最新ゴルフ理論を学ぶ。丸山茂樹のコーチとして海外も経験。現在も多くのプロをサポートしながら、ツアー中継の解説などメディアでも活躍
進藤大典
東北福祉大学では宮里優作や岩田寛と同期。宮里、谷原秀人の専属キャディとして活躍した後、13年からは松山英樹の専属キャディとして国内外を転戦。現在はメディアでも活躍する
週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より