【さとうの目】Vol.233 中島啓太「世界の舞台を見つめる世界最強アマ」
鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は22年にマスターズに挑戦する最強アマ中島啓太。
PHOTO/Shinji Osawa
21年に活躍した選手として挙げたいのがアマチュアの中島啓太選手。11月にドバイで開かれたアジアパシフィックアマで優勝、22年のマスターズの出場権を獲得しました。これは10年と11年の松山(英樹)くん、18年の金谷(拓実)くんに次ぐ快挙です。世界アマチュアランク1位で迎えた8月の全米アマではコロナ禍、天候不良などで満足な練ランができず、また強風にも見舞われ予選落ち。ですから、アジアアマで初めて中島くんを見た世界のファンは多いのではないでしょうか。
彼は、21年の初めから「今年の目標はアジアパシフィックアマで勝つこと」と公言、自分でハードルを上げてきました。9月にパナソニックで史上5人目のアマ優勝を果たしたときも、優勝は嬉しいとしながら「目標はアジアアマで、そこにピークを持っていきたい」と語っていました。世界ランク1位の自覚を持って勝ち切る有言実行の姿勢には脱帽ですし、谷口徹プロや片山晋呉プロのような“強さ”を感じます。
勝ち方も強かった。プレーオフ2ホール目での勝利でしたが、相撲でたとえるときっちり「寄り切り」で勝った感じです。見事な英語での優勝スピーチにも驚かされました。彼が高校3年のとき、ある試合で進路について尋ねたことがあります。彼の答えは、アメリカの大学にも興味があるが英語が不安なので日本の大学に進む、というものでした。あれから3年、どのような勉強をしたかはわかりませんが、流暢な英語を操っています。彼の見据えている先がわかりますよね。
21年の欧州ツアーで年間王者に輝いたのはコリン・モリカワでした。モリカワはスピーチで涙を浮かべ「今年、大好きな祖父が亡くなった。誰だっていつまで大切な人といられるかはわからない。だから皆さん、今の時間を大切にしてほしい」と語りました。これを聞いて中島くんは、「素晴らしいロールモデル」とSNSで発信。ロールモデルとは、模範とでも訳したらいいでしょうか。普通なら、モリカワのゴルフに対して「アイアンが上手い」などと言うのでしょうが、それだけでなく、人柄や言動といった人間性までもロールモデルだと中島くんは言っているのだと思います。こういった姿勢も、エンジェルスの大谷翔平選手に通じるような、新時代のスポーツヒーロー像を感じます。
また、中島くんにはよい意味で几帳面さを感じます。スウィングだけでなく、ラウンドの前と後にするお辞儀や歩く姿などの所作、メディアに対する丁寧な受け答え、すべてにおいてすでに高いプロ意識を感じます。
22年、あのカッコいいスウィングと精度の高いショットに、目の肥えたギャラリーの視線が集まるでしょう。マスターズ、全米オープン、そして全英オープンのメジャー3大会でのローアマを期待したいですね。前人未到の偉業を成し遂げる実力は十分あると信じています。そして中島くん自身がロールモデルとして、新時代のゴルフ界を牽引してくれることを期待しています。
穴がないゴルフ!
「PGAツアーでも、パワーも遜色なく、ショットの精度やアプローチ、パッティングの技術は十分に通用しそう。21年の春先にはややインサイドバックに引くスウィングチェンジの試みも見られましたが、元に戻した秋には、スウィングが進化し、磨きがかかった印象があります」
佐藤信人
さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中
週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より