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【さとうの目】Vol.230 久常涼「有言実行、天真爛漫。プレーもキャラも魅力的な19歳」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は19歳ながら初シードを獲得した新星・久常涼。

PHOTO/Arakishin

日本男子ツアーもシーズンが終わりましたが、今後が楽しみだな、本物が出てきたなと感じさせてくれたのが、まだ19歳の久常涼選手です。6月のアベマTVツアーのジャパンクリエイトでプロ初優勝を果たすと、9月までにチャレンジ3勝をマークして、レギュラーツアー出場権を獲得。レギュラーでも安定したゴルフを見せ、獲得賞金約1860万円、ランク50位で初シードを獲得しました。

少ない試合数とはいえレギュラーのスタッツを見るとドライビングディスタンス6位(300.39Y)、パーキープ率2位(87.72%)、パーオン率8位(70.18%)、サンドセーブ率3位(60.00%)と、どれも賞金王争いをする選手並みの高い数字(12月1日現在)。一発屋ではないことの証明です。

驚かされるのはこの成績以上に、もっとやれそうと余力を感じさせる点。本人的にもシード権獲得で満足してはいないと思います。それが去年まで高校生だったと聞けば、なおさら驚かされます。


インタビューを聞いても、これだけ自分の言葉で話せる19歳が、日本にどれだけいるでしょうか。ホンワリとしたキャラクターもいい感じ。ガツガツしていても嫌な感じを与えない、いいバランスがあると思います。推薦出場したZOZOチャンピオンシップでは松山(英樹)くんに練習ラウンドを申し入れるなど、なんでも吸収しようという積極的な姿勢も好感がもてます。「リョウはほかにもいるのでややこしいな」という松山くんに、「じゃあツネでお願いします!」と返したそうです。その天真爛漫さは、先輩プロにも、ファンにも愛されるプロとして大切な要素でしょう。

アベマで3勝した後、レギュラーに出るかアベマに出るかで少し悩んだようです。3勝するとそのシーズンのレギュラーには出られますが、来季シード権は賞金王にしか与えられない。レギュラーに出ている間に賞金ランクで抜かれたら……と思いますよね。ただ、その迷いも一瞬だったようです。

有言実行ぶりもいい。ブリヂストンオープンの推薦出場が決まったときから「ROAD to ZOZO」と銘打ってトップ3を狙っていたようです。その後アベマで3勝を挙げ、それらが評価されてZOZOチャンピオンシップに推薦出場を果たしました。

彼を初めて中継で見たときの素晴らしい振りは衝撃的。アベマ2勝目のラウンドリポーターだった高橋竜彦プロも「あれは調子がよいからという問題ではなく、ちょっと別格」とコメントしていました。

久常くんがもし高校生でプロ転向せず、アメリカの大学に進んだら……と思うときがあります。強豪のオクラホマ州立大あたりでも、レギュラー獲得はもちろん、フレッシュマン(1年生)に贈られるフィル・ミケルソン賞を獲得するくらいの活躍をしたのではないか。そんな妄想ができるような選手です。

22歳までにPGAツアーに行く夢があり、25歳までに実績を残せるようにとアベマで初優勝したときに言っていましたが、もっと早くなるかもしれませんね。

「なんと言っても魅力は飛距離。『いい感じで振るな』が第一印象ですが、プロたち独特の表現であり褒め言葉“いい感じ”で打つ、がしっくりくるスウィング。すべての経験を栄養にして、日々、強くなっている印象です」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年12月21日号より