【ベストスウィンガー2021番外編】今をときめくトッププロコーチが選んだ理想のスウィングの持ち主は?
週刊ゴルフダイジェストの年末恒例企画「ベストスウィンガー」。今回は読者投票とは別に、トップ選手を指導する2人のプロコーチにも、今年最も優れたスウィングの持ち主を挙げてもらった。
TEXT/Kenji Oba PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa、Hiroshi Yatabe
「体を上手に使ったスウィングは
アマチュアにこそマネしてほしい」
辻村明志
日大ゴルフ部出身。プロ転向後アジアンツアーを転戦。現在、上田桃子をはじめ、小祝さくら、吉田優利、松森彩夏、山村彩恵、新人プロの阿部未悠などを指導する
今回は「アマチュアでもマネすることができ、目指すべきスウィング」と、ボクなりにベストスウィングを定義してみました。その観点から最初に思い浮かんだ選手が南アフリカ出身の39歳、ルイ・ウエストハイゼンです。10年の全英オープン覇者ですが、とにかくスウィングがシンプルです。地面をしっかり踏みしめた重心の低さが特徴で、上下動は少なく、体の回転でボールを打つタイプの選手です。クラブの使い方が上手く、エネルギー効率が高いのもアマチュアには参考になりますし、マネしてほしいところです。
メジャー4勝を含む、日本ツアー16勝のテレサ・ルーも同様の理由でベストスウィンガーに選びました。テレサの秀逸な点は、腕とクラブが体の正面から外れないこと。そしてスウィングにまったく力みがなく、体もクラブも思う存分、しならせられることです。足裏で生まれたエネルギーがクラブヘッドまで効率よく伝わっているイメージです。それが34歳を過ぎても260Yを飛ばせる理由でもあります。飛距離はパワーではなく、“しなり”で生み出すもの。まさに柔よく剛を制すで、60歳、70歳のシニアこそが、目指すべきスウィングだと思います。
コリン・モリカワは、日本人に似た体型の持ち主。そのためマネしたくなる点が多いように思いますが、注目してほしいのは、ゆっくりとしたテークバックです。アマチュアは手上げになりがちですが、下半身リードでゆっくり上半身を回し、体の捻転で鋭く振り下ろすスウィングはまさにお手本です。優勝した全英オープンの翌週には、東京五輪でメダル争い。異なるコース環境にも瞬時に適応できるのは、ゆっくりとしたテークバックに秘密があるんです。
スウィングプレーンの美しさで考えると、岡山絵里も抜きん出ています。クラブが上がったときと、振り下ろすときのシャフトプレーンが寸分もなく同じ軌道を描いています。それを可能にしているのが、ブレない軸の太さであり、軸の強さでしょう。なかなかアマチュアがマネするのは難しいですが、彼女の連続写真を見るだけでも効果があると思います。
「現代的なシャローイングこそ
飛んで曲がらない」
奥嶋誠昭
ツアープロコーチとして稲見萌寧、高橋彩華、木下稜介を指導する。横浜のノビテックゴルフスタジオでGEARSを使ったアマチュアレッスンも行っている
ボク自身が理想とするスウィングで考えてみました。そうすると今どきのモダンなスウィングに目がいきます。米ツアーの選手でいえば、東京五輪で金メダルを獲得したザンダー・シャウフェレです。彼のスウィングは自分でもマネしたいと思えるくらい、素晴らしいです。ただ、マネするのはかなり難しいと思います。一見するとすごくシンプルに見えますが、ムダな動きをできる限りそぎ落としているので、実はとても難しいんです。アマチュアはいろいろ試行錯誤しすぎてスウィングが複雑になっています。古き良きスウィング、たとえば体重移動やフェースローテーションといった動きが染みついてしまっているんです。
現代的なスウィングのポイントは大きく2つあります。ひとつは今注目されているシャローイングです。もうひとつが左足に乗ること。米ツアーではほとんどの選手ができていますが、日本では右足の上で回ってしまう選手が多く、なかなか左に乗れないんです。
東京五輪で見たネリー・コルダも現代的なスウィングです。彼女はスウィングがきれいですし、動きにムダがないのがよくわかります。シャローに入れる、フェースは返さない、インパクトゾーンを長く、そして左足に乗る。これが、ボクがイメージするベストスウィングに不可欠な要素です。飛んで曲がらないという、相反するテクニックを実現できる、あるいは最新のクラブの性能を最大限に発揮できるスウィング、といえるでしょう。
プロテストに合格したばかりの03年生まれの現役高校生、川﨑春花も今どきのスウィングです。今年の3月に高校選手権で女子個人優勝を果たしていますし、注目してほしい選手のひとりです。
週刊ゴルフダイジェスト2021年12月21日号より