プロより強い日本の至宝、中島啓太。マスターズ出場を決めた「アジアアマ」の7日間に密着
<アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権/ドバイクリークG&ヨットC/11月3日~6日>
アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権を制し、来年のマスターズ出場を決めた中島啓太。ドバイで行われた激闘の模様をレポート。
TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Yumiko Shigetomi、大会事務局提供
実力も考え方も成熟している
「中島啓太は日本の宝だ」と言われている。スウィングは以前から世界基準と評価されていたが、今回の密着でそれだけではない強さが見えた。
とくに目を引いたのがその落ち着き。パナソニックオープン優勝時もクールに淡々とプレーしていたが、今回は「勝ちたい」という思いの強さからかイライラする表情を見せる場面があった。それでも焦ってマネジメントを変えたりはせず、すぐに冷静になって集中力を取り戻していた。
「ラウンド中にもう1人の自分と戦っていて、“彼”をどうやったら倒せるかを考えてプレーしているんです。ミスしたからといってイラついて次のティーショットで池に入れたら “彼” が喜ぶ。だから絶対に入れないって考えてます」
自分に集中する術を持っているが、決して自己中心的ではない。周りがよく見えているし、将来像も見据えている。
「来年の秋以降にプロ転向したら、海外に拠点を置いてメジャーで勝てる選手になりたい。そして凱旋して日本のツアーにもときどき出場できればいいなと思っています」
【強さ1】ミスの幅が極めて小さい
天を仰いでいてもバーディチャンス
グリーンを狙ったセカンドショット直後に天を仰ぐからよほどのミスショットかと思いきや、ピン手前4メートルに乗っている。松山英樹と同じタイプでショット精度の高さがうかがえる。4日間で唯一のOBは汗で手が滑ったショットだけ
【強さ2】マネジメント力
翌日のピン位置を想像して夜にシミュレーション
3日目はドライバーでグリーン横まで運びバーディだった3番ホールで、最終日は3Iを持った。「昨日の夜に今日のピン位置はあの辺だろうって考えて、3Iで打つって決めてました」。残り100ヤードからバーディ奪取
【強さ3】準備
深い考えのもと必要なことだけに時間をかける
35度を超える暑さに参って他国の選手はハーフラウンドで退散する中、中島は練習日2日間とも18ホールをプレー。「疲れて集中力がなくなった状態で、あえて難しい18番ホールをプレーしておきたかったんです」
【強さ4】気配り
”自分の時間”は守りつつ周囲にも気を配れる
自分のプレーに高い集中力で入り込んではいるが、視野も広い。他の選手はサッサと次のホールへ向かう中でピンを戻す場面が多かった。周りの状況が見えているからこそ自分の立ち位置も把握できて、状況判断が的確にできる
【強さ5】自己管理
ラウンド前は軽いコンディショニング
「クラブを持つと体の内部に意識がいかないから、事前にクラブを持たないで動かしておきます」というルーティンも理にかなっている
【強さ6】英語力
インタビューもスピーチも通訳なしで立派にこなす
ナショナルチームのジョーンズコーチとのやり取りや、海外の試合で実践で学んできたという英語。物怖じしないで過ごせるのも強み
コース外で見せた素顔の中島啓太
(左上)「飛行機が空いていたので横になってしっかり寝られました」と移動の疲れはナシ。(右上)プールにつかりながら仲間と「男子トーク」に花が咲き、疲れを癒して英気を養う。(右中・左下)他の選手が練習している時間も街に連れ出されて撮影したりと大忙しだった。(右下)出場選手が全員参加するパーティにはビシッとスーツを着こなして登場
月刊ゴルフダイジェスト2022年1月号より