【世界基準を追いかけろ!】Vol.65「ベント」「バミューダ」「ポアナ」選手には得意な“芝”がある
目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回はPGAツアーで結果を出せる選手の強さについて話してくれた。
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
GD コーチの目線で、この一年間発見したものはありますか。
目澤 やっぱり芝ですよね。PGAツアーではコースによって主にバミューダ(※)、ベント、ポアナの3種類の芝が存在しますが、それぞれの芝に上手く対応できている選手が、やはり上位にいる印象です。特にショートゲームにその差が出ていて、例えば、2月のジェネシス招待はタイガーのホスト大会で、会場であるリビエラCCのグリーンはベントとポアナの混生なんです。このグリーンにみんな手こずりますが、タイガーはポアナでのアプローチがメチャクチャ上手いんです。
黒宮 でも、タイガーはポアナでのパッティングは苦手ですよね。
目澤 そこがポアナの難しいところですよね。そのジェネシスで今年優勝したマックス・ホーマは、ポアナのグリーンでのパッティングは本当に上手いんです。一方、ホーマとプレーオフで争ったトニー・フィナウはパッティングが上手くはないけれど、今年は入っていましたね。
黒宮 フィナウはショットメーカーですから、チャンスに付く回数が多いというのもありますよね。ジェネシスでは昨年もアダム・スコットが優勝していますし。
目澤 確かにリビエラでは、パッティングで悩んでいるような選手が成績いいこともありますね。その辺もポアナのグリーンの特異的な点かもしれません。ミュアフィールドビレッジのような綺麗なベントグリーンのコースでは、やっぱりJT(ジャスティン・トーマス)のようなショートゲーム巧者が強い印象です。そういった綺麗なベントの試合では、意外とショットメーカーが上位にきていなかったりします。
GD バミューダ芝の試合ではどういった傾向があるんでしょう。
目澤 ハワイのソニーオープン(ワイアラエCC)やセントリートーナメント(カパルアリゾート)のコースはバミューダ芝ですが、南ア出身のアーニー・エルスは上手かったですね。
GD 南アはバミューダが多いし、ポアナに強いマックス・ホーマはポアナが多いカリフォルニアの生まれです。やはり生まれ育った土地に自生する芝に慣れているということが大きいんですかね。
目澤 大きいですね。マーク・レイシュマン(豪州)のコーチによれば、オーストラリアは北部は綺麗なベント芝で、南部はバミューダやポアナ芝が多い、そして東部はニューヨーク周辺の芝質に似ていて、西部はカリフォルニア周辺の芝質に似ているとのこと。それを経験できるのが強みだと言っていました。アダム・スコットとジェイソン・デイは同じオーストラリアでも育った場所が違うので、当然、芝の向き不向きが出てくるということです。PGAツアーの選手も同じで、例えばツアーチャンピオンシップに出ていたスコッティ・シェフラーやホアキン・ニーマンのような上位30位以内の選手は、3種類の芝のどのコースでもソツなく対応できますが、それ以外の選手はコースによって得手、不得手があって、そこが順位の差に表れていると思いましたね。
(※)バミューダ芝は暑さに強く、年間を通して安定したグリーンの状態が保てる。葉はベントより硬いが短く刈り込めるのでベントよりも速さが出せる。ベント芝は常緑性の寒い気候に強い品種の芝。葉が細く柔らかいため、芝目ができにくく高速グリーンに仕上げるのに適しているし、スピンがかかりやすくボールを止めやすい。ポアナ芝は日本ではスズメの帷子(かたびら)といわれる種類の芝で、降水量の少ないカリフォルニア州に多い。葉は柔らかく成長が早いため、午後にはベントに比べ長くなったポアナとの芝の間に差が生じ、どちらに曲がるか分かりづらくなくなる
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年12月7日号より