Myゴルフダイジェスト

【わかったなんて言えません】Vol.58 比嘉一貴#5「ミスを引きずらないためのセルフコントロール」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。比嘉一貴プロの最終回は、メンタル面のコントロールの仕方について。

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/比嘉一貴

沖縄生まれ。ツアー2勝。本部高校、東北福祉大時代から活躍。17年プロ入り。158㎝と小柄ながらキレのあるショットが武器

前回のお話はこちら

比嘉 最近、源蔵さん、めちゃくちゃ選手会長の挨拶とか上手くなりましたよね。何も見ずに話せるなんて、僕なんかマイク持ったらしゃべれないので、いつもすごいなと思って見ています。

時松 だって、前の晩にあれ言ってこれ言ってとめっちゃ考えるもん。お礼の言葉は絶対に忘れちゃいけないとかあるし。

比嘉 今年のセガサミーで優勝したときに、ウォーターシャワーを浴びて体が冷えて、緊張感もあってかスピーチ中に腰がつってしまって。それで途中で何を言うか忘れてしまいました。

時松 突然、忘れるんだよなあ。

比嘉 だから僕は、優勝スピーチが一番緊張するし自信がないことなんです。

時松 でも、セガサミーの後、優勝のポイントを聞かれて、「最後は自信があるかどうかです」と話してる記事を見たけど。

比嘉 確かに、あの試合中はドライバーがよい、パターがよい、だから不安がまったくなかった。それで最後まで自信を持ってできたということです。

時松 不安と自信は裏腹で、たとえば優勝争いをしているときに、左サイドがずっと池のホールでは、ショットに自信がないとフェアウェイの左サイドには打っていけない。入ったらどうしようと不安が出てくるから。

比嘉 セガサミーのときは、ティーインググラウンドに立ったとき、あそこに行きたくないなっていうのはなかったので、そういう部分では自信があったかもしれないです。

時松 僕は最近、自信もってやれていない部分があるからなあ。


比嘉 でも、源蔵さんはティーショットがちょっとくらい散らかっても、アプローチとパッティングが天才的に上手いから大丈夫じゃないですか。

時松 いやぁ、やってる本人はキツイ。ティーショットが悪いと「上がってナンボ」と思える余裕がない。「もっと近くに」とピンを無理に狙っていくから墓穴を掘るわけですよ。でも、本当に寄せワンに自信があったら、ラフからでもオーバーしてもイイやくらいの気持ちで打ってバーディが取れたりするよね。そういうのが、自信があるかないかの違いじゃないのかな。

比嘉 自分の場合は、調子が悪いときに苦手なホールのティーショットなどで、一番やっちゃいけないミスだけは避ける、というゴルフをしてしまう。調子がよかったら嫌なイメージがくる前に、何も考えないで打てるんだと思うんですけれど。

時松 そういうのは、置きにいってミスするみたいなことになりがちだよね。

比嘉 そうなんです。それがプレッシャーなのか自信がないのかわらないんですけれど。苦手なホールで、“ちゃんとミスをする”というのが僕の課題です。

時松 そういうときに、普段通りに振れる人が強いんだよね。

比嘉 (金谷)拓実とかですかね。拓実は僕が東北福祉大4年生のときの1年生で、ナショナルチームでも一緒だったんですけど、大事なときほど普段通りに打てるし、それでちゃんと成功するというイメージがあります。拓実だって緊張しないわけではないしプレッシャーも感じると思います。でもそこを自分で打開していく方法を知っているというか、セルフコントロールがすごく上手いんだと思いますね。

時松 でもゴルフって、相手がいる心理ゲームでもあるから難しい。一緒に回っている2人に先にバーディパットをズドン、ズドンと入れられて、次に打つ自分のパットが入れ頃外し頃だったりすると、やっぱ嫌だから。

比嘉 自分が一番短いのを打つというケースですよね。

時松 それで結局、一番ダメだったってこと、けっこうある。そういうときってどうする?

比嘉 僕は打つ前に、「ああ、これは入る流れだな」って思うようにします。で、入らなかったときは、「あ、カップの蓋が閉まったな」って思うんです。そうしたら引きずらないというか。

時松 なるほど。そう思えたら自分のストロークがスムーズになるかもしれない。やっぱりセルフコントロールが大事だな。

引きずらない魔法の言葉

「パットを外しても『蓋が閉まったんだな』って思えたら、次に引きずらないんです」(比嘉)

比嘉 スピーチの話に戻しますけど、宮本(勝昌)さんや(池田)勇太さんとか、歴代の選手会長は皆、上手いです。(石川)遼さんみたいに元々スラスラできる人もいるかもしれないけど、あれは慣れとかが大きいんですか。

時松 ゴルフと一緒ですよ。自信ってどこから生まれてくるのかといえば、不安に打ち克つしかないし、そのために必要なのは、経験や雰囲気に慣れること、そして場数を踏むことが大事なわけじゃないですか。

比嘉 やっぱり経験や慣れですか。

松 うん。でも僕はいまだに慣れないから、前日の夜めっちゃ大変だけどね。

週刊ゴルフダイジェスト12月7日号より