【わかったなんて言えません】Vol.55 比嘉一貴#2「“低い球”は誰でも打てるものだと思っていた」
「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲスト前回に続き、8月のセガサミーカップでツアー2勝目を挙げた比嘉一貴プロ。今回はプロも惚れ惚れする比嘉プロの「低い球」についてのお話です。
ホスト/時松隆光
1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”
ご指名/比嘉一貴
沖縄生まれ。ツアー2勝。本部高校、東北福祉大時代から活躍。17年プロ入り。158㎝と小柄ながらキレのあるショットが武器
時松 一貴は福岡(KBCオーガスタ)と北海道(セガサミーカップ)で優勝してるよね。
比嘉 はい。真ん中(本州)での優勝はないんですけど。
時松 一貴は沖縄出身だけど、苦手なコースとかある?
比嘉 洋芝とかですか。
時松 うん。僕はコーライグリーンが苦手。自分のパッティングは最初からわりと順回転なので、コーライだと出だしで芝に当たり負けしやすいと思うんだよね。
比嘉 僕は沖縄だから、あまり綺麗ではない感じの、重めのグリーンのほうがいいですね。
時松 やっぱりそうか。ところで優勝したセガサミーのときは風が吹いていたよね。
比嘉 はい。最終日はけっこう吹いてました。
時松 一貴は風が吹いたらだいたい強い。
比嘉 いやそんなことないです。風、好きじゃないですから。
時松 でも、ガツンといくタイプじゃなくて、低い球でラインを出してランがすごい、というショットのイメージがあるから、絶対、風には強いと思う。
比嘉 球を抑えるのは得意ですね。ただセガサミーのときは、下が軟らかかったので低い球を打つとすごい次が残るので、あまり効果的ではなかったです。あの試合はティーショットとパッティングがよかったんです。特に、パットがよく入りました。
時松 でもやっぱり、一貴の武器といえば低い球ということになると思う。
比嘉 いやぁ~、低い球は自分は好きじゃないんです。逆にビッグボールに憧れるというか、チャン・キムみたいに大きな球を打てる人はいいなと思います。でも僕もノーマルに打てば球は低くないんですよ。風が強いときだけ木より高さを上げないようにしようと思って打っています。ギャラリーとかはミスショットかと思っちゃうくらい低い球なんですけど(笑)、それができるので、一緒に回っている人に印象が残ると思うんです。
時松 そう思う。今日は風が強いなと思ってリーダーボードを見ると一貴は必ず上位にいるから(笑)。
比嘉 実は、沖縄にいるときは低い球は誰でも打てると思ったんですけど、大学で福祉大に行ったら「それってどうやって打つの」とけっこう聞かれて戸惑いました。自然に打っていたので、自分がどうやって打っているのかわからなかったんです。それで、自分なりにこんな感じかなって考えたやり方を教えたら、そのなかの2人がイップスに……僕のせいかなと思いました(笑)。
時松 そんなことないよ(笑)。
比嘉 でも、大学生レベルでも低い球って打てないんだと思い驚きましたね。
時松 沖縄にいたときのコーチは宮里優さんでしょ。
比嘉 はい。高校時代から見てもらっています。
時松 宮里さんはどういう教え方をするの?
比嘉 自分の持論を押し付けるタイプではなく、その人のよいところを生かすという教え方です。だから、スウィングを変えられたことってない。指摘されるのはアドレスとか、ほぼそのあたりのことです。たとえば、宮里3兄弟を見てわかるように、スウィングのテンポをゆっくり、ということは言われました。そして、クラブに仕事をさせるということ。そういう教えはすごくためになっています。
時松 今でも、見てもらうことはある?
比嘉 あります。でもできるだけ頼らないようにしています。自分の力でやって、本当にもう自分ではわからないというときに頼るという感じですかね。
時松 コーチは宮里さん以外には?
比嘉 今は、たまに井上透さんのスタジオに行っていますけど、スウィングどうこうを教わるというより、データを見てチェックをしてもらう感じですね。自分でもトラックマンを使っているんですけど、そこまで詳しくないので、データの見方などについて話を聞いたりしています。
時松 トラックマンで何か発見したことはある?
比嘉 低い球を打つときのデータが、普通のショットのときのデータと全然違うことに驚きました。同じように打っていたつもりだったけど、普通のショットと風のときのショットでは、入射角とかが全然違っていた。
時松 ティーアップの高さとか、球の位置とか。
比嘉 いや、それは変えていないです。それで自分なりに考えたら、重心を変えるだけなんですよ。低い球を打っているときは、重心を左に置いて打ちます。普通の球や高い球を打つときは右に体重を残して打ちます。それで打ち分けています。
時松 それはわかりやすい。重心を変えただけで、あの低い球が打てるんだ。これは、アマチュアの人にもよいアドバイスになると思います。
(つづく)
「低い球を打つときは重心を左に、普通の球や高い球を打つときは右に体重を残して打ちます」(比嘉)
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月9日号より