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【さとうの目】Vol.224 高山忠洋「天才的な球さばき。復活優勝に期待です」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は、病気を克服しシード復帰をほぼ確実にした高山忠洋プロ。

PHOTO/Tadashi Anezaki

18年7月に右目に中心性漿液性脈絡網膜症を発症。手術、治療に専念するためツアーから離脱した高山忠洋。聞きなれない病気ですが、本人によれば「右目だけ水に浸かっているような状態」で、最も視力に影響する黄斑という部分がむくみ、網膜剥離が起きる病気だそうです。

特別保障制度(公傷)の適用を受け、19年は1試合も出場せずに復帰は20年に。ところがコロナ禍でツアーが中断し、復帰は昨年9月、再開初戦のフジサンケイになりました。ここから21年のダイヤモンドカップまでが公傷適用期間。この間に一定額を稼げば、16年間守り続けたシード権を維持できるはずでしたが、結果は非情にも57万910円足りずにシード獲得ならず。今年の東建ホームメイトカップが選手のコロナ感染で、また3位タイの中日クラウンズが荒天で3日間に短縮、賞金が75%に減額されたのも不運でした。公傷適用最後のダイヤモンドカップは予選落ちでしたが、「実力不足」とだけ潔く語った姿が印象的でした


しかしその後、日本プロ9位、フジサンケイ8位など、推薦出場とマンデー突破で数少ないチャンスをものにして賞金ランクは45位(10月14日現在)。来季のシード権をほぼ手中にしたのです。

強豪、和歌山・星林高の野球部出身。卒業後、法仙坊GCの研修生となり、ゴルフを始めてわずか3年後の99年、21歳でプロ転向。3年後の02年には初シード、さらに3年後の05年には東建ホームメイトカップで初優勝と、3年周期でステップアップする順風満帆なゴルフ人生を歩んできました。

彼がデビューしたての頃、たしか日本プロで一緒に回ったと記憶しています。クラブを握って何カ月か後には60台を出し、数年でプロテストに受かったことにびっくり。キャリアが浅くてもプライベートですごいスコアで回る人はいますが、競技で結果を出すのは別次元ですごい。「天才だねぇ」と感嘆、本人に何度も言っています。

野球をやっていたせいでしょうか。確かに球さばきが上手く、特に風のなかでのショットは秀逸。東建ホームメイトカップで2度優勝し、沖縄でも勝ち、初出場の全英オープンでも健闘。風に強い選手という印象です。ボク自身が低い球を打つのが苦手だったので当時うらやましく思ってもいました。

ゴルフもさることながら、好印象なのがその人柄。ボクは結果に左右されてはイライラしてしまいがちですが、高山はどんな状況でも感情の浮き沈みのない選手です。

プレーヤーズ選手権byサトウ食品で、最終日を首位と2打差の2位タイで迎えました。このままいけばシード復活という展開でしたが、最終日に77を叩き34位タイに沈みます。しかし高山はこの時点でも感情を露わにせず、言い訳めいたことをひと言も発しませんでした。ツアー通算5勝で、11年には2勝し、べ・サンムンに次ぎ、賞金ランク2位になっています。今後、もう一花咲かせてくれるはず。応援したい選手です。

切り返しでの踏み込みが素晴らしい!

「トップでヒールアップして上半身はそのまま、上げた左かかとを地面に戻してグッと踏み込むところからダウンが始まる。得た力をそのまま押し込むように球に伝えて一気にフィニッシュまで振り抜きます」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月2日号より