「コースで死にたい」80歳現役プロキャディの夢。かつては青木功、尾崎直道のバッグも
PGAツアーの下部コーンフェリーツアーに80歳の現役キャディがいる。「コースで死にたい」という名物キャディの生きざまとは?
ヘンリー・ジェームズ、通称「JJ」は、来季レギュラーツアー昇格が濃厚なベン・コールズのキャディ。4月に80歳になった彼の半生は他に類を見ない。40代前半はロサンゼルスのナイトクラブでマネジャーをしていたが「かりそめの世界ではない現実の世界で働きたい」と、キャディに転職。以来35年以上バッグを担いできた。
「自分がどうやって死ぬかわからない。でも私は死ぬまでキャディでいたい。1メートルのパットがコトンとカップの底を打つようにコースで息を引き取りたい」とJJ。
毎週15キロ以上あるバッグを担ぎ、クラブを拭き、風向きやラインを読み、時にはカウンセラーにもなる。2年半前には心臓のバイパス手術を受けたが、3カ月後には復帰し、これまで歩いた距離は25万マイル(40万キロ)を超えた。
不屈の闘志? はたまた鉄人キャディ? 雇い主のコールズは首を振る。「彼は自分がやっていることにただただ喜びを感じているのです」
数え切れない選手のバッグを担いできたが、そのなかには青木功や尾崎直道がいる。「米シニアツアーでジョー(尾崎)のキャディをしたことはよく覚えている。予選ギリギリで通過して、迎えた3日目だったかな。2番から7番まで6連続バーディ。で、8番で彼が私を呼んでラインを読めというんだ。『6連続バーディなのに?』って聞いたら、わかった、自分で読むとジョー(笑)。結果3位に入ったよ」
キャディは天職。だが「キャディに素晴らしさも何もない。素晴らしいのは選手。だってタイガーは誰が担いだって82勝挙げたはずだよ。私はただのジャーニーマン。ツアー暮らしが性に合っているだけさ」とJJ。
死ぬ前にやりたいことは「もう1度、全米オープンで担ぐこと」。「これまで10回経験したけれど、厳しいセッティングで本格的なゴルフが見られる最高の舞台。全米が大好きなんだ」
どうかJJの願いが叶いますように。
週刊ゴルフダイジェスト2021年9月21日号より