【世界基準を追いかけろ】Vol.51 PGAツアーでは「トラックマン」と「GCクワッド」の併用が主流に
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回はPGAツアーでの弾道測定器の活用法について聞いた。
GD 最近のPGAツアーを見ていると、トラックマン(※1)やフライトスコープに加えて、GCクワッド(※2)を使うプロを多く見かけますね。
目澤 そうですね。今年の全米プロの会場のキアワアイランドは、横風がすごく強かったのはテレビで見ていた方も分かったと思います。17番ホールは右サイドが池で、左に30〜40ヤードくらい曲がるドローボールを打たないとストレートに狙っていけないんです。そうしたホールに備えてか、ブライソン(デシャンボー)は、「フライトスコープで横風に対してのデータをよく見てるよ」って言っていました。
GD トラックマンもしくはフライトスコープと、GCクワッドの2台を併用するプロが多いですか?
目澤 多いと思います。GCクワッドは、その人のキャリーやスピンなどの初期データが出ますから、持ち運びが楽ということもあるので、練習に携行することが多くなりますよね。一方でトラックマンなどは風や気圧・気温などの条件に応じたデータを取れるので、レーダーでフルトラッキングしているトラックマンのデータと、GCクワッドのカメラで追いかけた初期条件の部分を両方合わせて距離感を作っているんです。
GD 具体的に教えてください。
目澤 例えば、GCクワッドで初期条件のキャリーが300ヤード飛んでいたとして、その時、トラックマンでは280ヤードしか飛んでいなかったら、その20ヤード落としている要因はどこから来ているのかを探ります。それが、たとえば20ヤード分のアゲンストだったりするわけです。またどの方向からの風の影響だったのかということも分かるので、ブライソンのように「こういう風だったらどれくらいのカーブをかけていかないと真っすぐいかない」といったことを頭に入れることができます。
GD 今はそれが当たり前になってきているということですね。
目澤 そうですね。松山プロもGCクワッドを導入しました。初期条件のデータを把握しておいて、それが変化したときの要因を自分と話し合って距離感を作りたいと言っていました。
黒宮 僕もGCクワッドをベースにして、外的要因を加味したものをフライトスコープなりトラックマンで拾っていく方法が良いと思います。クラブを替えるときも、室内でGCクワッドで純粋なデータを取っておいて、外的要因をフライトスコープとかトラックマンで検証するのはいいですよね。
GD 実際の活用法や効果は?
目澤 松山プロはショートアイアンのスピン量は気にして見ていると思いますね。あとキャディの早藤くんが、練習ラウンド中の自分と松山プロのデータのやり取りを聞いていて、天候などの諸条件とプロのその日のスウィングの調子を見て、番手選択のアドバイスをより適確にできるようになったみたいです。
GD 黒宮さんは、全米女子オープン以後、小暮千広さんには英才教育すると言っていましたが。
黒宮 もちろん、彼女には僕がGCクワッドで取った彼女のデータを送りました。
(※1)トラックマンやフライトスコープ……共にミサイル追尾の『ドップラーレーダー技術』をもとに、クラブヘッドの動きとボールの動きを実測。クラブスピード、ヘッド軌道、フェースアングル、入射角などのクラブデータと、ボール初速、バックスピン量、打ち出し角、キャリー・トータル飛距離などを計測できる。(※2)GCクワッド……内蔵の高性能カメラ4台でボールとヘッドを撮影しコンピュータが解析処理する。本体を正面に置いて撮影して計測するため精緻なフェースデータが取れる。本体に直接データが表示されるので、スマホやタブレットが必要ない
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年8月24・31日合併号より