Myゴルフダイジェスト

【世界基準を追いかけろ】Vol.45 笹生と畑岡に共通するのは強い海外志向とパッション

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回のテーマは日本の女子ゴルフのレベルについて。

前回のお話はこちら

GD 全米女子オープンで優勝した笹生優花(※1)に関して、その勝因を含めてどのような印象を持ちましたか。

目澤
 彼女はこれといった穴がない、オールラウンダーですよね。その中でもショットが素晴らしい。アメリカのコースのグリーンは、2段グリーンなども多く、ピンと同じ面に乗せてこないとスコアにならないですが、彼女はロングアイアンなど長い番手のクラブでもピンそばに持っていけるショット力をみせていました。メジャー特有の深いラフからもグリーンをとらえていましたけど、これまで日本人に足りないとされてきたパワーの面でも十分に世界に通用することを証明しました。ドライバーの飛距離も出ていたし、十分に世界基準です。また、要所要所でみせた緩みのないパッティングが、今回の彼女のプレーを助けていたと思います。最後の優勝を決めたミドルパットもしっかり打てていましたよね。

GD 今回、畑岡奈紗(※2)と笹生のプレーオフでしたが、これは日本ゴルフのレベルアップを意味するんでしょうか。それとも二人は突出した存在なのか、どちらでしょう。

目澤 確かに間違いなく日本のゴルフのレベルも上がってきていると思います。そこにきて、渋野プロや松山プロのメジャー優勝が刺激にもなり、「日本人でも世界のメジャーで勝てる」と精神的なハードルが下がったことはあったと思います。ただ、あの二人は、その中でもちょっと抜けているなという感じはありますよね。

GD どのあたりが?

目澤 畑岡プロの場合はアマチュアで日本女子オープンで優勝し、その後、早々に米女子ツアー行きを決めています。笹生プロも以前から積極的に海外へ出る姿勢を見せていました。二人のこのパッション(情熱)は、抜きん出ているものがあって、それが今回の結果に繋がったということでしょうね。自分自身、この半年、こちら(米国)に来て、見て、感じましたけど、アメリカの生活は時間の使い方とか生活にかかるストレスとか、本当に好きじゃないとやっていられない部分があります。松山プロは、そういうなかでこちらで生活をしながら成績を上げています。一緒にいて思いますが、彼の「好き」という気持ちの強さが、結果となって表れていると思っています。

GD 黒宮さんはどんな意見ですか?

黒宮 
僕も今回は、教えている小暮千広の帯同で初めてアメリカのツアーを現地で見てきましたが、日本人のプロのショット力はアメリカの選手に引けを取らないと思います。その点は十分に戦えると思いますし、特に女子ツアーの場合はそう思います。あとは目澤くんが言ったようにチャレンジする意思があるかどうかの問題が一番かなと思います。その意思さえしっかり持っていれば、戦うことはできるレベルにある選手は少なくない。もちろん相当頑張らないといけないとは思いますけれど。

(※1)笹生優花……2001年生まれ。日本人の父とフィリピン人の母の間にフィリピンで生まれる。6歳で日本に移住。9歳でフィリピンに戻る。ジュニア時代から世界で活躍。18年「アジア競技大会」にフィリピン代表として出場し、団体・個人で金メダルを獲得。19年オーガスタ女子アマ3位タイ。19年JLPGAプロテスト合格、20年ツアー2勝。2021年全米女子オープン優勝で米女子ツアーのメンバー資格を得る。(※2)畑岡奈紗……1999年茨城県生まれ。11歳でゴルフを始める。15年JGAナショナルチーム入り。16年日本女子オープンで優勝し、プロ転向。同年12月米女子ツアーのQTから出場権を獲得。以来米ツアーで3勝を挙げている


目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月13日号より