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【さとうの目】Vol.209 ブライアン・ハーマン「右利き左打ちの小さなブルドッグ」

PHOTO/Tadashi Anezaki

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は、レフティのブライアン・ハーマン。

19年10月に日本で初開催されたZOZOチャンピオンシップ。主催者の前澤友作社長(当時)が、「プロアマで一緒に回りたい選手」として挙げたのが、今回紹介するブライアン・ハーマンです。背が低くレフティという共通点が、興味を抱き、好きになった理由なのだそうです。

ボクにも現地取材をした17年のマスターズでこんな思い出話が。ハーマンのプレーを見ていたとき、隣り合わせたパトロンから、「彼の身長知ってる?」と聞かれたのです。プロフィールを調べてあったボクは「ファイブ・セブン」(5フィート7インチ=約170㎝)と答えました。すると「もっと小さいだろう」と彼が大笑い。周囲が大きいせいもあるでしょうが、とにかく小さく見える選手です。

プレースタイルは小柄な選手特有の超ファイター。ジュニア時代からのエリートで、アメリカのジュニアでプレーヤーズ・オブ・ザ・イヤーを2年連続で受賞。これはミケルソンやタイガーに続く4人目の偉業です。その後、ジョージア大に進み、4年間で3度、オールアメリカンに選出されました。さらに05年には18歳でウォーカーカップの米代表に選ばれ、これは当時の史上最年少記録です。4年後の09年にも出場していますが、戦績は実に6勝1分け。1度も負けていない選手はそうはいません。学業も優秀だったそうです。

2度目のウォーカーカップ後にプロ転向。12年にシード権を獲得し、今年10年目を迎えました。ツアー勝利はわずか2勝で地味な選手に映りますが、まったくシードを落とす気配のない危なげのない戦いぶり。20シーズン連続でシード権を守るチャールズ・ハウエルのような丈夫で長持ちな選手になるのではと秘かに思っています。

勇猛で粘り強い人のことを「彼はブルドッグだ」という英語の表現があります。彼はまさにソレであり、卒業したジョージア大学のマスコットもブルドッグ。ウェルズファーゴ選手権で優勝したときはD・ジョンソンやJ・ラームらの大物を倒して勝ち、今年のマッチプレーでは松山英樹やP・カントレーがいるグループを勝ち抜き、大学の先輩B・ワトソンに4ダウンから逆転勝利した姿はまさに大物に噛み付いて離れないブルドッグのようでした。

ハーマンは、ミケルソンと同じで右利きの左打ち。日常生活やほかのスポーツは右利きなのにゴルフだけが左打ちです。19年の全英オープンで6位、初出場となった今年のマスターズで12位と健闘したスコットランドの24歳、ロバート・マッキンタイアも同じタイプ。野球の大谷翔平選手の二刀流のように、常識が常識でなくなる時代。右利き左打ちが近い将来トレンドになるかもしれません。

選手間の評価もとても高い選手のひとりです。もしライダーカップで選ばれれば、ハーマンのようなガッツこそ、USチームに貢献しそうな気がします。まずは今後の試合で、いつ3勝目を挙げるか。注目していきましょう!

コンパクトでキレ味鋭いスウィング

「飛距離は290ヤード前後で、体のサイズの割には飛ぶほう。ヒョイとクラブを上げる、コンパクトなキレのいいスウィング。体格が近い日本人には参考になるはずです。また、パターの名手でもあります」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月6日号より