吉と出るか凶と出るか? プレジデンツカップで主将の重責と、結果が全ての残酷な現実
プレジデンツカップ2日目のフォーサム(1つのボールを2人が交互に打つ)では目下大会10連敗中のインターナショナルチームが5戦5勝と破竹の勢い。リーダーボードがチームカラーの黄色に染まり『ゴールドラッシュ』と評された。ジェフ・オギルビーキャプテンも「まさか5連勝とは!」とうれしい誤算に目を細めた。特に自らが選んだ選手(キャプテンピック)がほぼ全員ポイントを獲得したことにご満悦だった。
キャプテンの重要な役割の1つは自動選出の6名以外に誰を選出するかだ。今回の話題はブラント・スネデカー米キャプテンがキャリアの浅い新星ジャクソン・コイブンを大抜擢したこと。彼が選出されたことでこの2年努力を重ねポイントを獲得してきた選手が落選し涙をのんだ。

3年前のライダーカップでも同じようなことがあった。欧州チームのキャプテン、ルーク・ドナルドがメジャー大会に出場した経験すらない新人のラドビック・アバーグを選出したのだ。
そのとき欧州のライダーカップポイントランクでアバーグは60位。ワールドポイントでも58位の彼をキャプテンピックで選出したときマスコミは色めき立ち、異を唱える選手や関係者が続出した。
しかしアバーグは結果で周囲を黙らせた。4試合に出場し2勝2敗と2ポイントの獲得に留まったが土曜日(2日目)のフォーサムではビクトール・ホブランとのペアでスコッティ・シェフラー&ブルックス・ケプカの強豪ペアを9&7(7ホール残して9アップ)という信じられない大差で下しチームの圧勝(16.5対11.5ポイント)に貢献した。
のちにドナルド本人にアバーグを選択した理由を尋ねると「とにかくドライバーが上手い。あのティーショットがあればチーム戦で脅威になると思った」と語っていた。

今回のコイブンもライダーカップのポイントランクは48位。しかし8位のベン・グリフィン、10位のJ・J・スパーンを差し置いてスネでカーキャプテンはコイブンを選んだ。
ドナルド主将は何度も試合会場に足を運び、実際アバーグとプレーをして肌で感じたポテンシャルに賭け抜擢したのだが、スネデカーもコイブンと練習ラウンドでプレーしたときこう直感したのだという。
「私のキャリアを通して彼よりも上手かったことは一度もない」
それほど惚れ込んだ選手を選んだのだから初日ジャスティン・トーマスとのコンビで大会初戦を白星で飾ったコイブンを見たときはキャプテン冥利に尽きた。
アバーグをドナルドが抜擢した23年のライダーカップでは米チームにもドラマがあった。キャプテンのザック・ジョンソンはポイントランク上位のキーガン・ブラッドリーを外し、ランクは下だが普段から仲の良いジャスティン・トーマスを選出したのだ。
キャプテン推薦から漏れたことをジョンソンが電話でブラッドリーに告げる残酷なシーンはNetflixの『Full swing』でも放映された。
今回もJ・J・スパーンはスネデカーから落選の電話がかかってきたときのことを「本当にがっかりした」と本音を漏らした。
昨年の全米オープンでメジャー制覇を達成し、今年もそれなりの成績を収めてライダーカップのポイントランク10位に名を連ねていた。しかし、キャプテン推薦対象の最後の試合「ツアー選手権」で突如肩甲骨の激痛に見舞われ棄権を余儀なくされた。
落選後に出場したDPワールドツアーの旗艦大会「BMW PGA選手権」で彼はローリー・マキロイらを抑え優勝し、スネデカーに選ばなかったことを後悔させ(そう本人は思っている)、溜飲を下げた。

しかしものごとにはすべてタイミングがある。ツアー選手権のケガさえなければ選ばれていたかもしれない。ケガは彼にとって最悪のタイミングだった。
逆に運と巡り合わせがコイブンに味方した。大会初日にポイントを挙げアメリカが惨敗(全敗)した2日目には出場していなかった。3日目のペア戦と最終日のシングルスで1つでも勝てばスネデカーはキャプテンとして正しい選択をしたと評価されるだろう。結果がすべての世界なのだ。
「まだ残り3分の2のポイントが残っている。挽回はもちろん可能」と7対3ポイントの劣勢に立たされたキャプテン。コイブンの戦いがスネデカーの評価に直結する。キャプテンの責任は我々が想像する以上に重い。

文/川野美佳
米サンディエゴ州立大学留学を経て1990年代から「週刊ゴルフダイジェスト」「Choice」を中心に執筆を開始。主な翻訳書に『タイガー・ウッズ私のゴルフ論』(テレビ朝日)『タイガー・ウッズ:もうひとつのインサイドストーリー』(日本ヴォーグ社)『ブッチ・ハーモンの勝者のゴルフ: タイガー・ウッズを育てた名伯楽』(小池書院)など。ジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤー、トム・ワトソンなど海外のレジェンドゴルファーへのインタビューを多数行っている


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
書籍・コミック




















