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【世界基準を追いかけろ!】Vol.38 選手の個性を生かす“カメレオン”タイプのコーチたち

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回は、ジョーダン・スピースのコーチ、マコーミックを始めとした、選手の個性を生かす“カメレオン”タイプのコーチについてのお話。

前回のお話

GD 選手の個性を生かす“カメレオン”タイプのコーチは、どんな人がいますか。

目澤 クロード・ハーモンⅢ(※1)は、キム・シウーやDJ(ダスティン・ジョンソン)といった全然違うゴルフスタイルの2人に対し、それぞれが持つ個性に合わせて教えている感じですよね。練習場で話している姿も穏やかで、選手の意見をよく聞いている雰囲気があります。父親のブッチ・ハーモンの手法を踏襲しつつ、新しい手法も取り入れてアップデートしている感じがします。

GD インスタなどを見ていても、そういう感じを受けますね。

目澤 あと、ショーン・フォーリー(※2)はけっこう言ってることとやってることが変化していて、それが良いのか悪いのかは別としても、アップデートしていこうという姿勢が見えるので、見ていて面白いなと思います。クリス・コモ(※3)もブライソン(デシャンボー)のコーチングでプレーヤーズ選手権に来ていましたが、静かに見守っていました。ジェイソン(デイ)はクリス・コモに習って、すごくスウィングが変わりました。スタンスがだいぶ狭くなって別人みたいになりました。バイオメカニクスに基づいた、腰痛の緩和も含めたスウィングのチョイスかなと思います。そこはタイガーの影響もあるんじゃないですかね。

GD 同じように腰を痛め、コモに習ってスタンスを狭くしたと。

目澤 そうですね。

GD 今、名前を挙げたようなコーチは常時、ツアー会場に来ているような人たちですが、ほかにどういう人が目に付きましたか。

目澤 ジョーダン・スピースを教えるキャメロン・マコーミック(※4)は練習場でよく見かけます。

GD マコーミックは、どういうタイプのコーチですか。

目澤 ジョーダンと長く付き合っているところを見ても、人間関系のベースを大事にしているんじゃないですかね。ほかに教えているダニエル・バーガーもそうですが、アダム(スコット)みたいな教科書的なスウィングをしているわけじゃないので、その人の個性を分かって教えないと、あの結果は出ないですね。女子のユ・ソヨンをコーチしているところからも、多種多様な手法で選手の個性を生かすコーチングをやっているんだと思います。



GD 間近でこういったコーチたちを見て、目澤さんが感じたのはどんなことですか。

目澤 それぞれのコーチが持つ良い理論や指導法はたくさんあって、それを選手と一緒になって日々こなしている印象を受けます。ブライソンも、リビエラの前に2~3試合予選落ちをして、そこから何かをつかんでベイヒルで優勝したわけですし。

GD ジョーダン・スピースも4年ぶりの復活優勝の裏にはマコーミックとのスウィング改造といった取り組みもありました。

目澤 その取り組みがパフォーマンスとなり、試合で日の目を見るのですが、それまでの“泥水をすするような努力のプロセス”はなかなか伝わらない。みんな、インスタなどを見て簡単に選手の真似をしようとしますが、彼らは相当な努力をしてあのスウィングを手に入れているわけですから、そこは分かってほしいですね。

(※1)クロード・ハーモンⅢ……父親はタイガーの元コーチのブッチ・ハーモン。祖父のクロード・ハーモンは48年のマスターズチャンピオン。(※2)ショーン・フォーリー……2010年にタイガー・ウッズのコーチに就任。左足に体重を掛けながらのスウィングを推奨する理論を展開。(※3)クリス・コモ……2014~17年までタイガーのコーチを務める。レッドベターの理論から始まり、ヤン・フー・クォン教授の下でバイオメカニクスに基づいたスウィングを学ぶ。(※4)キャメロン・マコーミック……ジョーダン・スピースが12歳の時からの師弟関係。ダニエル・バーガーは、19年からマコーミックに師事してからゴルフ全般の見方が変わったという

目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年5月25日号より